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ガールズ!ナイトデューティー  作者: 高城 蓉理
番外編 ファイナルディスタンス
57/111

不器用な彼女

遠藤桜(ファミレス副店長)

× 

織原究 (ファミレスバイト)

のバディな日常





深夜勤務がなくなって早数週間。

桜の勤めるファミレスでは店頭でのテイクアウトとウーバーイーツの宅配サービスを中心に、規模を縮小して営業をしていた。


リスクを減らすためにシフトはチーム制が組まれた。普段からデフォルメ状態の桜と織原はまとめてD班に配属され、交代制でチームごとに3日間連続で勤務するスタイルで粛々と営業を続けていた。




「……おはようございますっ、って遠藤さん? 」


「げっ、織原!?ちょっと来るの早くない? 」


数日振りに再会した織原は白のトレーナーにデニムにクロックスといった出で立ちで、普段の勤務時よりも更にラフな服装での登場だった。勿論咎める気もないのだが、有事にも関わらずいつも通り過ぎて逆に安心さえも感じてしまう。


「バスが土日ダイヤになってたから、余裕もってと思って……  」


「そっか、ごめんごめん、今開けるね 」


「はい…… 」


桜は若干へっぴり腰になりながら、店の裏口の鍵穴と格闘していた。24時間営業店の宿命で、今までセキュリティシステムを使用した戸締まりは殆どしたことがなかったのだ。 本人は無自覚だが今日も細身のパンツ姿がピシャリと決まっているのに、こんな体制を披露してしまえばせっかくのスタイルの良さも台無しだ。



「んっ?これで、合ってるハズなんだけど…… 」


桜は難しい表情を浮かべながらスマホに送られてきたメールを頼りに、一人ガチャガチャと作業を続けた。変なところを触ったら警備会社が来てしまいそうだけど、作業は単純でもなかった。


「あの……遠藤さん?違ったらすみません、多分上の鍵を回してから、セキュリティー解除。そんで静脈認証です 」


「えっ…… あの…… 」


「昔の勤め先と同じセキュリティシステムみたいなんで 」


桜の様子を見かねたのか、織原は距離を保ちながらもアドバイスを送った。普段ならば直ぐにでも助け船を出すのだが、ご時世的に無駄に近づくことは躊躇われる。

桜は織原の助言もあり何とか鍵の解除には成功したが、最後の難関でまた躓いてしまった。



「うーん、静脈が認証しない…… 私、静脈ないのかな? 」


桜は自分の手をセンサーに近づけると、いろいろな角度に手をこねくり回した。だが桜の努力も虚しく一向に機械の反応はなく、エラーの電子音だけがなり続けた。


「遠藤さん、静脈認証にはコツがあって、こう少し機械から手を浮かせて、第一関節をこの部分に乗せる感じで…… 」


「……うーん 」


背中に嫌な汗が流れるのがわかるくらいには桜は焦り始めていた。

一連の動作は三分以内に完了させなければ、通報がいってしまう。ただ焦れば焦るほど手元は覚束なくなる。



「遠藤さん…… ちょっと、失礼します 」


「えっ…… 」


桜が気づいたときには、その手は織原に捕まれていた。

接触を避けるために袖を引っ張ったトレーナー越しに、織原は桜の手首をセンサーに誘導する。そしてグイっと機械に押し当てると、あっさりと静脈をセンサーに反応させた。



「あり……がとう……」


「後で手、ちゃんと消毒しておいてください 」


「……うん、ありがとう。織原も手、ちゃんと洗って 」





一瞬、何が起きたのかわからなかった。

心臓がバクバクしていた。トレーナー越しにグイっと捕まれたその手の感触は、とても力強かった。


「あの……織原……? 」


「……何ですか? 」


「申し訳ないんですけど、今日の戸締まりのときも助言してもらえると有難いとゆうか、何とゆうか…… 」


「最初からそのつもりでした 」


「へっ……? 」



織原は一言そう発すると、裏口からあっさりと店内へと入っていった。


最初からそのつもりって……

私ってそんなにドン臭い感じに思われてたってわけ?

桜は思わず小さくため息をついたが、すぐに織原の後に続いた。





さて今日は久し振りに仕事に励まなくては。

桜は少しだけ首を回すと、相変わらず似合わない勝負服への着替えを急いだ。
















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