11 伊波のトラウマ
夕方、4時くらい。
「……ゆうが男ってなんだよ!!女子校に男が入学するとかあり得ないだろ!裸見られたし。あんなに可愛い子が女の子のはずがないってホントに女の子じゃなかったのかよ……あぁ、もう何も信じられない……」
学園の寮とは反対方向に走っていった伊波は、以前ゆうと2人で来たゲームセンターにいた。そんなことを呟きながらしているからなのか、いつもの格ゲーにも集中できていない。
「あ!ちょっ。ハメ技かよ……はぁ、また負けた……」
ボタンを適当に叩いたりスティックを適当に動かしたりしている伊波の後ろから近づいてくる影があった。
「ねぇ。もしかしてキミ今1人?ならさ、俺たちと楽しい事して遊ぼうぜ」
「あぁ?」と伊波が後ろを振り向くとどこかで見たことがある顔たち。
「……あ、この前逃げた娘だ。怪我の具合はどうですかぁ?」
「この前遊べなかったぶん。今日はいっぱい遊ぼうぜ。良いとこに連れていってあげるからさ。この前逃げたお礼もしてあげなきゃいけないし」
そう言って、伊波の腕をつかんだのは、以前ゆうをナンパした高校生たちのリーダー(仮)である。リーダー(仮)は伊波を引っ張って、ゲームセンターの裏まで連れていこうとしている。
「おい、離せ!私に触るな!」
伊波は必死に抵抗するが腕力で男子高校生に勝てるはずもない。
「暴れるなって。すぐに楽しいところに連れてって遊んでやるからさ。おとなしくしとけって!」
1人が伊波にそう言うと伊波は怯えたような顔をして、無抵抗のまま連れていかれてしまった。
「……で、何をして遊ぶのか教えてくれるかな。内容によってはただじゃ済まさないからね」と調子を取り戻した伊波は吠えた。
だが、男子高校生に完全に周りを囲まれており、逃げ道が無く、おとなしく帰してくれそうにない。
それどころか伊波の言葉を聞いて、笑いながら近づいてきた。
「まあまあ、ちょっと俺らの思い出作りに協力してもらうだけだから、そんな身構えないで」と高校生A。
「君は、1人で寂しい時間を誰かと一緒に過ごせる。僕たちは思い出作りができる。どう?君と僕たちとでWIN‐WINな関係でしょ♪」と高校生B
「は?」
伊波は、なに言ってんだこいつ……と言いたそうな目でBを見ている。
「どこがWIN‐WINだよ。私は寂しくないし、今は1人で居たいの。だから帰って良い?」
「はぁ……」
リーダー(仮)がため息をつきながら伊波に近づいてきた。手には刃渡り10㎝くらいのナイフを持っている。
「ま、断っても断らなくても最初からコイツで脅すつもりだったし、お前に選択肢は最初から無いから」
ナイフを振り回しながら近づいてくるリーダー(仮)、伊波の顔は恐怖で少し歪んでいる。
「とりあえず服を脱げ。あぁ、安心しろここには誰も来ない、だから他の人に見られることはない」
「……い、いやだ……」と声を震わせながらリーダー(仮)から離れようとしている伊波。
しかし、気がつけば半径1mくらいにまで伊波の周りの円は小さくなっていた。
「逃げ場は無いよ~。ほら、早く制服脱ぎなって、なんなら俺たちが脱がせてあげましょうかお嬢さん」
「や、やめて……来ないで!!」
涙目になっており、普段の伊波からは想像もできない様子だった。リーダー(仮)にではなく別の何かに怯えているようだ。
「急にどうしたんだ?」とリーダー(仮)は不思議そうな顔をして伊波を見ている。
突然、男子高校生の1人が何かを思い出したような顔をした。
「そういえば、去年か一昨年にここら辺で誘拐事件があって。誘拐された子は保護されたんですけど誘拐されてる間にされたことがトラウマになってるらしいって新聞で見ました」
続けて別の高校生が言う。
「そうそう、確か名前は……あすかちゃん(仮)だったっけ」
「で、コイツがそのあすかちゃん(仮)なのか?おい!」
伊波に目を向けるリーダー(仮)、ナイフを突きつけられている伊波は首をゆっくり縦に振った。
「だから、こんなに怯えてるのか……都合良いな……じゃあ、早く服を脱いでもらえる?痛い思いも嫌な思いもしたくないでしょ?」
伊波に笑顔で命令するリーダー(仮)、伊波はおとなしく脱ごうとボタンに手をかけた。
男子高校生たちはスマホを構えて撮影しようとしている。
「撮らないでください……」
「俺たちの思い出作りに必要なの。いいから、何か言ってから脱いでよ」
「……い、今から全部脱ぎまs…」
「お前たち!何をしている!」
そんな声とともに光が近づいてくる。
近づいてくると姿がはっきりと見えてきた。光の正体は懐中時計を持った警察官であった。
「ちっ!警察かよ!おい、お前ら逃げるぞ!」
警察官を見た瞬間逃げ出す男子高校生たち、逃げ道を知っているのかすぐにいなくなってしまった。
しばらくして、やっと落ち着いた伊波に警察官は声をかけた。
「もう大丈夫?何があったか詳しく教えてもらえるかな?」
「……どうして……?」
伊波の口から出てきたのは疑問だった。
「どうしてここに来たのかって?君の知り合いって人が交番まで教えに来てくれたんだよ。ほら、あの人」
「やぁ、伊波さん大丈夫だった?」
警察官が指差した方向にいたのは……千夏だった。




