起きたら君を忘れているだろうか
眠れぬ夜は君のため
おとぎ話を紡ごうか
優しいやさしい音色で
鮮やかな夢の世界へ
月明かりの陰に君を見つけた。
真っ黒な体に澄んだ瞳。何かを見つめているようで何も映していないその瞳に、吸い込まれるように、触れた。頬は冷たくて、でも生きている温もりがたしかに感じられた。
そっと手を離すと、君は首を傾げて可笑しそうに笑った。
その声にハッとして、謝ろうと垂れた頭を、君がクシャッと撫でる。
それから二人は、夜道を歩く。
時折振り返る君に、置いていかれないように、近づき過ぎないように、光と陰の間を泳ぐ。
もう随分と時間が経ったようだ。
空は白みはじめ、夜が朝を迎えに行く。
君との時間も、もう終わりだ。
帰って行く夜と君にさよならをして、明日の朝が来る前に、少しだけ眠ろう。