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 やることも決まったことで具体的にどうするかをあーだこーだと話し合い、外のゾンビ相手にひとつ実験してみて、よしこれでいくかと準備をする。必要なものを取ってきて荷物まとめて、なんだかんだと結構時間がかかってしまった。軽く腹ごしらえをする。吉野君がチャーハンを作ってくれた。朝食を作ったときに米を炊いておいたのだと。吉野君スゲーな。電気が使えるうちにおにぎりでも作るつもりだったという。吉野君家事レベル高いねー。

「母が仕事で外に出て、自分がウチの中のことやってたもんで」

 いつのまにか力仕事は俺で、そのサポートが吉野君というコンビになってた。

 ちと遅くなったが日のあるウチにやってしまうか。さて、行きますか。

「上手くいきますかね」

「わかんないねー」

「上手くいくといいですねー」

「そうだねー」

 リュックを背負いバッグを二つ両肩にたすき掛けにして肩にハシゴをかけて準備完了。

「よくそれで動けますねー。あの学校まで距離ありますよ」

「このぐらいなら、なんとかなるけど。途中に休憩挟みながらということで」


 なんの問題も無く学校に到着、俺らぜんぜんゾンビに相手にされないんだからそりゃ楽勝だわな。学校の校門が見える交差点の角に荷物を下ろす。ここなら学校の中から俺らは見えないだろう。校門があって校庭があってその向こうに校舎。校庭と一階はゾンビがうろうろ、かなりの数がいる。ただ歩き回ってるだけなんだが、どいつもこいつも上を見上げている。三階に人がいるのが解ってんのかねこいつら。


 さーて、ここから確認作業そのいち。双眼鏡で中の人間の様子を観察。窓の外、地上のゾンビを虚ろな目で見ているおじさんがいる。疲れてんなー。双眼鏡を吉野君に渡して見てもらう。どう?

「この距離でみても、まだうがーとはなりませんね」

 俺もそう。俺らが襲ってはダメだろうってことで。なのでどちらか片方がうがーとなったら無事なほうが押さえる予定で。

「二人揃ってうがーとなったら?」

「知らん。そのときは成り行きまかせで」

「アバウトですねー」

「ま、そうならないように俺が先に行く」


 確認作業そのに。これから校舎の中に乗り込むんだが、ゾンビをどうするか。俺らはゾンビに襲われないけど、校舎の中の人達がゾンビに襲われない俺達を見てどう思うか。答え、ゾンビの仲間。なのでゾンビを回避して逃げて来たふうを装うことで普通人のふりをすることに決定。これをどう演出するか、という問題は忍者暗殺ゲームと工作員潜入ゲームをやり込んだ吉野君のアイデアで。実験も成功してたし。吉野君がノートパソコンを出して起動、バッテリーは充分、ではミッションスタート。


 なるべく音を出さないようにそろそろゆっくり歩く。ハシゴをぶつけないように気をつけて。俺は吉野君の持ってた荷物も抱えて、校門の方に、吉野君は必要な道具だけ持って身軽にしといて、学校を囲う塀の角に向かって。塀のお陰で校門までは無事到着、音を立てないように静かにハシゴを下ろす。校門から覗くとゾンビはまだこちらに気付いてない。よしよし。吉野君はしゃがみこんで準備中。ノートパソコンにスピーカーを繋いでセット完了。その場にノートパソコンを置いて、そろそろとこちらに歩いてくる。そしてスピーカーからはかなりの音量で音楽が流れだす。


♪めん!おぶ!みりおんだらまうす!


 ゾンビが一斉に歌が聞こえる方を向く。そのまま歩きだす、よーしよし。実験したときもゾンビは音のする方に移動した。人の声が入った歌の方が、歌無しの音楽よりも反応がよかった。校舎の方も音楽に気がついたようで窓に近づく人が増えた。


♪あらーみんぐ!ちゃーみんぐ!


 ゾンビは校庭の一角へと集まり始めた。ファンの集う野外コンサート、ゾンビ共音楽に飢えてたらしい。両手を上げてうぉーうぉー、あの歌の良さが解るとはなかなかセンスがよろしい。コンサートのわりには、誰もサイリウムもタオルも手に持ってないんだが。吉野君と二人でハシゴを挟んで持ち上げて、ゾンビがいなくなった校庭を走る。二階の窓の開いてるところはと、あれか。校舎に到着、ハシゴをかけて吉野君におさえてもらって俺が先に登る。


 ここにいるのは人間、うがーとなりそうになったらハシゴから飛び下りて引き返す予定。正直、ゾンビに相対するよりよっぽど不安で緊張する。中の人が怯えてこのままハシゴを外に倒す心配もある。最初に顔を見せたヤツの反応によっては、バッグだけ投げ込んで帰ればいい。中の奴等が追い込まれたストレスで頭おかしくなってなければ、少しは話し合いができるかも?

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