困惑は泥沼へ
あれから光希との関係もギクシャクしながらも学園生活は秋を迎え、体育大会が始まる。
「桜、一緒に汗を流さないか?」
「・・セクハラです、訴えますよ?」
いつもの様に明フラグをバキバキに畳み、桜も自分の競技に専念する。
桜が出る種目は午前中に四百メートル走、午後からクラス対抗リレーとなっている。
元々運動神経の良い桜は午前の部ではかなりの活躍だった。
そして昼休み・・
「桜凄かったね〜、陸上部より速かったんじゃない?」
「それだけが桜の取り柄だもんね〜」
「うるさい、人を脳筋みたいに言うな」
友達も賞賛してくれる中、あの男がやってきた。
「流石は俺の桜だ、一緒にランチでも」
「購買行くから結構です」
清々しい汗をかいた後に止めてほしいかぎりである。
・・
結局、明は購買まで着いて来てパンを選ぶ私に色々と迷惑なアドバイスやらオススメのパンなどを一人で話していた。
そこに生徒会で忙しいはずの光希がやってくる。
「桜、話があるんだ」
「もう戻らないとだからまた今度ね」
「たのむ!聞いてくれ!」
「いやよ!」
何か聞きたくない事を言われる気がして無理に話を終らせ踵を返そうとしたその時。
「俺、桜の事が好きなんだ!
付き合ってほしい!」
光希は真っ直ぐに告白した。
迷いも戸惑いもない堂々としたそれは、元々顔の良いのも相まってドラマのワンシーンの様だった。
しかし桜は困った、嫌いではない
むしろ好いてさえいる。
でも最悪の人生を過ごしあまつさえ
自身のエゴでやり直している自分なんかに光希を幸せになんてできるのだろうか、否、できる訳がない。
私には勿体無い・・
そう、嵐子の様な才気あふれる容姿端麗な娘を選ぶべきなのだ。
だが真っ直ぐに見つめる光希は簡単には諦めない、こんな目をしている時はいつだってそうだった。
だからしかたない、やり直した人生だけど私は自分の幸せより光希に幸せになってもらいたい。
だから言った・・
言ってはいけない事を・・
嘘を・・
「私、明と付き合ってるの。
ごめんなさい。」
「そうなのか?」
光希は傍にいた明を見た。
「あ、あぁ。あたりまえだ」
やはり明は乗ってくる、だと思った
明が私を狙っているなら今がチャンスだと思うはず、それはいい・・
後で間違いだとでも言えばいい。
仮に付き合ったとしてもすぐに振ればいいだろうと・・
光希はしょんぼりと力を無くしたように去って行った。
次の日、光希は学校を休んだ。
そして、桜が光希に告白された事や
桜と明が付き合っていたという噂はすぐに広まった、それが事件の引き金になろうとは誰も知らなかった。