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ゆめのはなし
そこには、六つの芽が生えている。
いずれも形は異なるが、同じように小さく、踏めば潰れてしまいそうな花の芽たちはそれぞれ主張していた。
見つけてくれたきみに頼みたいことがある。
わたしたちは、うつくしい花を咲かせたい。
そのために水を与え、自分たちを愛でてほしいのだ。
そう囁くように小さな芽を精一杯揺らしている。
返事をしようと、口を開いたところでふと気づく。自分の後ろに誰かが立っている。
だけど、誰か、というのは分からなかった。振り返る前に、けたたましい目覚まし時計のベルが私を夢心地から現実へと引き戻したからだ。
「なんて、花だったかな」
夢は、目覚めたあとにも残っている。机上に乗ったエプロンと母から渡された地図によって、ようやく意識がはっきりしてきた。母の代わりに、行かなければならない。