08 : 欠かせないおしゃべり
仏壇の花の水を変え、昨日上げていたご飯を新しいものに変える。
座布団を踏まないようににじり寄って正座をすると、一つ深呼吸をする。蝋燭に火を灯し、線香にそれを移す。煙を吐き出す線香を香炉に刺すと、慎重に手を合わせた。
「お姉ちゃんおはよう。今日は天気がいいです。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日の朝は玉ねぎの味噌汁です。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日は珍しく雪が降ってます。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日の朝はかぼちゃの味噌汁です。美味しくないです。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日のニュースの女子アナはちょっとお化粧が濃いです。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日の朝はいつもより冷えます。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日はアルフォンスが美味しくコーヒーを淹れれました。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日の授業は嫌いな学科からです。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日は“かぼす”のベストアルバムの発売日です。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日のメコズキッチンも美味しそうでした。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日はだるくて学校に行きたくないです。私は元気です」
「お姉ちゃんおはよう。今日はお姉ちゃんの好きだった漫画のリメイク版の発売日です。私は元気です」
お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん。
私は今日も、元気です。




