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4ー26 幻装

 今回はほぼ説明回となります。


 今回で結の能力が明らかになりますっ!!


 イーターの大群とのバトルパートは明日となります。




 結と奏は横に並び、イーターの群れに向かっていた。


「思っていたよりもだいぶ数が多くないか?」


「……そうですね。数千、いえ五桁はいますね。一万弱といったところでしょうか」


 結と奏はイーターの群れに向かいながら、相手の戦力を分析していた。


「一体一体は大したことないですが、数が厄介ですね」


「あれがイーターか」


「そういえば、結は現物のイーターを見るのは初めてでしたね」


「知識としては習ったけどな。見た目はてんでばらばら。……いや、全部実際にいる生き物っていう共通点はあるのか」


 一万弱にも及ぶ、イーターの大群には、蟹型だったり、蛇型だったり、熊型だったり、亀型だったりと、様々なタイプがいるようだった。


「イーターって団体行動をするわけじゃなかったんじゃなかったっけ?」


「そのはずですが、とりあえずその件は後回しです。早くリリーやルカを安心させてあげましよう」


「そうだな。どうする?ばらけるか?」


「……そうですね。結は右側を、私は左側をやります」


 奏の言葉に「了解」っと返すと、二人は同時に反対側に飛んだ。












「さてと、どうするかな」


 結はイーターの大群の正面で立ち止まると、この数の相手にどうするかを考えていた。


(一対多はやったことあるけど。流石にこれは桁が違うしな)


 六花衆はメンバー六人による、連携を最も得意としている。その六花衆との模擬戦をしているため、一対多の戦いは一応慣れてはいるのだが、相手は約一万弱の大群だ。


 結の受け持ちは半分の約五○○○だとしても、六人とは比べ物にならない。


(とはいえ、一体一体は六花衆よりも遥かに格下。連携もないだろう。そこまで気にしなくても良いか)


「さて、やるかっ!」


 結は大声で気合いを入れると、両手を胸の前でクロスし、両手首に着けている法具を起動した。


『幻装、始まりの(アルファ)トンファー』


 前に奏が戦闘欲を溜まらせ、菜々となった時に、結が菜々と戦う時に初めて使ったトンファーを結は取り出すと、長い部分が肘の来るようにトンファーを構えた。


 結が作り出した結オリジナルの幻操術。それが『幻装』だ。


 幻操術を使う際に、幻操師は法具に式を刻み、式を刻まれた法具に幻力を注ぐことによって幻操術を発動しているのだが、実のところそれは効率が悪いのだ。


 昔から物理世界で目撃されたことのある、超能力者などと呼ばれている者たちは、式を必要とせずに、己の無意識領域内にある、超現象を起こすための領域。幻理領域だけで超現象を起こしている。


 そもそも、科学で解明することのできない不思議エネルギーである幻力を、科学的に法具の中に一時的とはいえ保存するのはあまりにも難しいことなのだ。


 結果そこには大幅なロスが存在している。


 術の起動から発動まで、式に幻力を注ぐという過程が無い分、超能力者のほうがスピードは早く、幻力のロスもないため、燃費も良く術を起動することができたのだ。


 しかし、その代わりにその能力の開発は難しく、超能力者はその数があまりにも少ない。


 いたとしても、超能力一人につき、使用可能な能力は一つが限度だ。


 幻操師は元々、核兵器の代わりとなる力を手に入れるために育成されてきたのだ。


 ガス欠までは幻操師よりも遥かに遅いとはいえ、まず、数が用意出来ずに、細かいコントロールもできずに、汎用性が無い。


 それでは予想外のことが起こる、実際の戦場では役に立たないのだ。


 幻操師とは、幻操師一人の活動可能時間を犠牲にし、その代わりに術者の数を増やし、汎用性を上げるために育成されたと言っても良い。


 幻操師の開発は古くから行われていたが、第二次世界大戦を機に、その開発には拍車が掛かっていた。


 幻操師はその存在は暗黙のルールによって極秘にされていたため、実際に歴史には残っていないが、幻操師たちが戦場を駆け回っていたらしく、高い結果を出していたらしい。


 幻操師はその国の戦力として育成されていたのだ。


 しかし、幻操師の意味合いはその後大きく変わることになる。


 それが、イーターの出現だ。


 イーターは昔から妖怪やお化けなどと呼ばれてその姿を目撃されていたのだが、幻操師が活躍をしていくなか、その目撃情報が一気に膨れ上がっていたのだ。


 戦争による戦死者の負の怨念によってその数を増やしたのだと思われるのだが、幻操師はそのイーターの討伐に駆り出されるようになったのだ。


 そして、第二次世界大戦が終わった後は、イーターを狩るものとして幻操師は存在するようになっていた。


 どうやら、幻操師の存在は後一世紀後も経てば、一般に公開するらしい。


 そうすれば幻操師による犯罪も増えてしまうだろう。そういう犯罪を捕らえるためには、より強い幻操師が必要となる。


 だから今のうちに強く正義感のある幻操師を育てようと、ガーデンが存在しているのだ。


 話が逸れてしまったが、話を元に戻そう。


 幻操師は一つの術を発動させるために、本来必要な量の数十倍の幻力を消費してしまっているのだ。


 もし、このロスを限りなくゼロにすることが出来れば、今まで幻力が少ないと言われていた人たちも実質今の十倍の幻力を持つことになるのだ。


 しかし、その方法は今だに分かっていない。


 なぜなら、幻操師は術の使用に絶対に法具を必要とするのだ。


 そして術の使用に法具を媒体とするとどうしてもロスが生まれてしまう。効率と大量生産は両立することが出来ない。


 これが幻操師の常識だった(・・・)。


 しかし、結はその常識を覆したのだ。


 結の幻操師としての能力は至って平凡。


 結がいつも自分に言っているような、劣等生でも無ければ、奏やT•G(トレジャーガーデン)一組の皆のように優等生でもない。


 しかし、実際結の実力はT•G(トレジャーガーデン)一組で奏に次ぐ二位だ。


 なぜ、平凡な結が天才である六花衆たちの上になることが出来たのか。


 それは努力か?


 それは違う。


 確かに結は努力を絶やさなかった。暇な時間は全て修行するなどと徹底していた。


 しかし、結が努力した時間はまだ半年だ。


 六花衆は才能があり、T•G(トレジャーガーデン)に入学してからすでに一年以上も努力をしてきていたのだ。


 もし、半年の努力だけで六花衆を超えたのであれば、結は平凡ではない。結こそ天才だ。


 ならば理由はなんだ?


 使っている法具か?


 その答えは正解(Yes)であり不正解(No)だ。


 六花衆はスカイクラウドという名のやり手の幻工師だ。


 結はその六花衆から法具の作り方を教わっている。


 幻工師としての常識を持たない結は、幻工師では思いつかないようなアイデアを思いつくことがあるのだが、それアイデアは結だけではなく、他の皆にも生かされている。


 つまり、仮に結が六花衆を超える幻工師になったとしても、それによって実力が上がるのは結だけではなく皆になのだ。


 ならば、理由はなんだろうか?


 法具という答えは正解(Yes)であり不正解(No)。


 今のは不正解(No)である答えだ。


 ならば正解(Yes)とはなんだ?


 確かに発明とは一人がすれば皆に行き渡る者だ。


 しかし、どんなに凄い発明だとしても、その使用者が限られているとしたらどうだろうか?


 もっといえば、それを使いこなすことが出来るのがたったの一人だとしたらどうだろうか?


 結はまさにそれだった。


 結は法具を媒体とした上でロスを失くす術を開発したのだ。


 それが『幻装』だ。


 幻操師の奥義『心装』。


 『心装』は元々、幻力よりも遥かに扱いが難しい心力をどうにかコントロールしようとして作られた技術だ。


 その心力を操る技術である『心装』を、逆に言えば心力よりも遥かに扱いが簡単である、幻力で応用すればどうだろうか?


 結果は、不可能だった。


 心力とはそれ単体の力が非常に高いため、ただ法具に纏わせるだけで十分の効力を発揮したのだが、単体での力が低い幻力では、ただ法具に纏わせるだけでは、ただ法具の耐久度を強化したり、刀剣であればその切れ味を上げることしか出来なかったのだ。


 しかし、結はある方法によってそれを解決したのだ。


 それは、法具に幻力を纏わせるのではなく。


 幻力そのもので法具を形作るというものだ。


 結が使える幻操術は法具に刻まれている『記憶』と『再生』、賢一と奏が教え込んだ『六月法(りげつほう)』の三つだけだ。


 結がいつも両手首に着けているいる法具には、法具としての機能だけでなく、法具を形作るための材料を溜めておく袋の役割も果てしているのだ。


 六花衆の技術によって原子レベルに細かい素材を予め準備し、その素材全てに予め幻力を纏わせておく。


 結は『記憶』に刻まれている設計図を元に、『再生』によってその素材たちを使い、法具を作り出すのだ。


 素材と素材は幻力によって固く連結しているため、ただ幻力を纏わせるだけよりも遥かに幻力の割合が高い法具を作り出すことに成功したのだ。


 『記憶』に記憶させるさせるためには予め形を別のものとして作り、それを左手首の法具に触れされることによって、そのものを分解してそのデータを設計図として記憶するのだ。


 結の『記憶』には既に百を超える設計図が記憶されているのだが、それを再び法具として形作る、つまり『再生』させるためには、右手首の法具を左手首の法具に触れされることによって行う。


 しかし、これにも当然問題はある。


 それはこの技術を使うためには『記憶』と『再生』、二人の幻操術の使用が大原則なのだ。


 そしてわ何故かはわからないが、どんな幻操術でも見ただけで完璧に扱ってしまうあの奏でさえも使うことができなかったのだ。


 零王のこともあり、奏の考えによって結には『心装』の存在が知らされていないのだが、奏は結の『記憶』と『再生』を結自身の固有術なのではないかと推理していた。


 十中八九結も奏たち同様幻の逸材(ファントム)だ。


 しかし、結の才能は幻の逸材(ファントム)としてはあまりにも低い。


 これは結の才能は結の中にいる零王という存在が関係していると思っているのだが、それと同時にこの二つの幻操術こそ結の才能ではないかと思っていた。


 大原則である二つの幻操術を使えるのが結だけであるため、この技術を使用出来るのは結だけだ。


 しかし、問題はもう一つある。


 常に素材に幻力を纏わせたり、幻力によって素材を繋ぎ合わせたりたりと、この技術は言ってしまえば常に大量の幻力を消費し続けるものなのだ。


 その使用量は結の幻力全てだ。


 幻力の供給をしている限り、結には法具を作り出したとしてもそれを使うための幻力が全く残らないのだ。


 どんなにロスを少なくしたとしても、使えないのでは本末転倒だ。


 幻力の量は生まれつきだ。


 解決策は無いと思われていた。


 しかし、結はこの難題さえもクリアしていた。


 その解決策もまた結の固有術『記憶』と『再生』だった。


 平時は己自身の幻力で賄うのだが、この技術を使用した瞬間に消費した幻力を『記憶』するのだ。


 そして、その『記憶』した幻力を常に『再生』し続けることによって、最初以外の幻力供給を必要としなくしたのだ。


 これはつまり幻力の永久機関なのだ。


 しかし、そんなに上手い話に裏が無い訳ではない。


 技術の使用後は『記憶』と『再生』による幻力の永久機関が必要幻力を賄ってくれるのだが、使用前はそうとはいかない。


 幻操師は幻操術を使用する際、一瞬だけだか顕在幻力が増すのだ。


 もちろんそれは結も例外ではない。


 結はこの一瞬増した顕在幻力を使うことによって幻力の永久機関を起動している。


 つまり、平時ではそもそも起動が出来ないのだ。


 やろうと思えば出来ないこともないのだが、それは現実的ではない。


 何故なら幻力の永久機関もまだ完璧ではないからだ。


 ほぼ永久機関と言っても良いのだか『記憶』から『再生』する時にどうしても若干のロスが存在してしまうのだ。


 最初に『記憶』したものを連続して『再生』するのではなく、『記憶』『再生』『記憶』『再生』っと繰り返してしまうために、ロスによってそのうち幻力が必要量に達さなくなってしまうのだ。


 一度、永久機関が止まってしまえば、もう一度起動させるためには結自身の幻力をフル回復させるしかない。


 だから平時から永久機関を起動して、ここぞという時に止まってしまったら起動することが出来なくなってしまうのだ。


 だから永久機関を使用出来ない平時では、結自身の幻力を消費するのだ。


 結果、平時の結の幻力使用可能量は極端に少なくなってしまったのだ。


 起動前は幻力による無意識強化もない完全な弱者。


 起動後は常にフル状態で居られる完全な強者となる。


 それが結なのだ。


 評価やお気に入り登録、アドバイスや感想などお待ちしております。


 次の更新は明日の午前12時です。

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