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4ー16 希望


 翌日。

 十分な休息をとった結と奏の二人は、賢一の言う幻穴(ファンホール)から最も近い街に向かっていた。


「これが幻理世界……」


「そういえば、結はT•G(トレジャーガーデン)の外に出るのは始めてですね」


T•G(トレジャーガーデン)に入る前の記憶は無いしな」


 結がT•G(トレジャーガーデン)に来てから半年。この半年間、結はずっとT•G(トレジャーガーデン)の内部で訓練をしていたため、外に出るのは今日が初めてなのだ。


「なんというか……うん。新鮮だな」


「今までは地下にいたわけですし、そう感じるのも仕方がないですね」


 T•G(トレジャーガーデン)はその存在を公にしていない。


 つまり、その本部がどこにあるのかできるだけわからないようにする必要があったのだ。


 地上ではT•G(トレジャーガーデン)の生徒たちの修行に際に起こる騒音で、周りの人々に気が付かれてしまう可能性があったため、T•G(トレジャーガーデン)は地下深くに作られていたのだ。


「そういえば、T•G(トレジャーガーデン)の中庭には空があったような気がするんだが?」


「あぁ、あれですか。あれは空ではないですよ」


「じゃあなんだ??」


「あれは天井に描かれた絵ですよ」


「……絵?」


「私たち人間にとって、日光というものはとても大切なんですよ?日光に当たることで、体内時計が正常に動くようになりますし、それに脳を目覚めさせることが出来ますから」


「だから地下に空を作ったってことか?」


「はい」


 結の疑問に、奏は満面の笑みで答えていた。


(そういえば、前と比べると断然表情が変化するようになったよな。最初はほぼずっと無表情だったし、無表情の奏も可愛かったけど、やっぱり女の子は笑顔が一番だよな)


 最初よりも、奏が自分によく笑顔を見せるようになったと思った結は、隣を歩く奏の横顔を見つめていた。


「どうかしましたか?」


 そんな結に気が付いたのか、奏は結に振り向くと、また満面の笑みを浮かべていた。


「いや……あっ、例え天井に本物そっくりの空を描いたとしても、結局はただの天井と同じじゃないか?日光なんて無いと思うけど?」


 あなたの横顔に見惚れていましただなんて、恥ずかしくて素直に言えない結は、その場を誤魔化すために、ちょうど思った疑問をぶつけていた。


「七曜の光については知っていますよね?」


「あぁ。俺も幻操師の端くれだしな。当然知ってるさ」


 幻操師の持つ幻力はその性質によって大きく分けて七つに分類されている。


 その七つのことをまとめて七曜の光と呼ぶのだ。


 七曜とはつまり曜日、幻力の性質はそれぞれ曜日をなぞった名称をつけられている。


 七曜の光の中でも、極めて珍しく、大きな力を誇っている『日曜の光』


 七つに分けたといっても、まだ完全に解明された訳ではないため、その他に分類される『月曜』


 赤色に輝き、込めたものを強化する性質のある『火曜』


 青色に輝き、込めたものを弱化させる性質を持った『水曜』


 緑色に輝き、込めたものを鋭くする性質を持っている『木曜』


 黄色に輝き、込めたものを速くする性質を持っている『金曜』


 紫色に輝き、込めたものを硬くする性質を持っている『土曜』


 の七種類だ。


「七曜の光の中で、ダントツに強力で、天才の性質と呼ばれる日曜の光を利用した術で、擬似的な太陽を作っていますので、日光も存在していますよ」


「……本当に凄いな。日曜の幻操師は」


「ちなみに作ったのは何を隠そう、T•G(トレジャーガーデン)の創立者、夜月賢一さんですよ」


「……奏って賢一さんより強いんだよな?」


「そうですけど、それがどうかしましたか?」


「奏の性質ってなんだ?」


「私ですか?私はーー」


(俺の性質は月曜。七曜の中でも最弱と呼ばれている性質だ。性質によって得意とする属性がだいたい決まるが、奏がよく使う属性は氷と雷。性質はなんだ?)


 性質によって最も得意とする属性もだいたい決まる。


 なぜだいたいかというと、時には枠に当てはまらない例外がいるからだ。


 火曜は火属性を得意とし。


 水曜は水属性を得意とし。


 木曜は風属性を得意とし。


 金曜は雷属性を得意とし。


 土曜は土属性を得意とし。


 日曜は日曜だけの特別な属性、炎属性を得意とし。


 月曜は月属性と呼ばれる、特殊な属性を得意としている。


(氷属性は水属性の上位版。つまり、よく使う属性から考えれば、奏の性質は水曜か金曜だと思うが)


「ーー月曜ですよ」


「……え?」


 真の天才である奏の性質が、劣等生の性質と呼ばれる月曜?


 そんなことあるわけがない。しかし、奏がこんな嘘をつく必要が感じられない。つまり、本当のこと。


 結は一瞬でそこまで考えると、あまりの衝撃のあまり、足を止めてしまっていた。


 奏は結よりも数歩先に歩いた後、立ち止まり、後ろで立ち止まっている結に振り返っていた。


「私の性質は月曜。俗に言う、劣等生の性質です」


「そんなこと、あるわけ」


「なら証拠を見せます」


 奏はそう言うと、掌を上に向けて、結に手を向けていた。


 奏が手に幻力を込めると、奏の掌から純白の光が溢れていた。


「純白の幻力。本当に月曜なのか?」


 奏が掌から放出させていたのは、式を通して幻操術に変換されていない純粋な幻力だった。


 幻力には性質に沿って色がある。


 白。


 それが、月曜の光の色だ。


「これで信じてくれましたか?」


「あ、あぁ」


 天才の、奏の性質は月曜。結はまだ戸惑っていたが、少しずつ、その驚愕の事実を受け入れ始めていた。


「月曜の光はまだまだ未解明の性質ですよ。今のところは残念ながら他の性質と比べるとその性能は明らかに劣ってしまっているため、劣等生の性質と呼ばれていますが。蓋を開けてみればこの通りです。自分で言うのもなんですが、世界でトップクラスの幻操師である賢一さんよりも強い私の性質は月曜。つまり、月曜だからと言って、諦めてはいけませんよ?月曜は言うならば未知の性質なのですから」


 結は賢一と修行した時に、自分には幻操師として特別な才能が無いことを悟ってしまっていた。


 そして、唯一の頼み綱とも言える性質は月曜。劣等生の月曜だった。


 結は絶望した。


 強化の特性を持っている火曜の光や弱化の特性を持っている水曜の光など、月曜以外の性質なら、アイデア次第で格上を負かすことも可能だ。


 しかし、結果は劣等生の性質。


 それからだった。


 結が自分のことを劣等生と蔑むようになったのは。


 奏は結に自分というなの希望を見せることによって、結の持っている自分は劣等生というイメージを少しでも崩そうとしたのだ。


 自分は劣等生という、強いイメージが消えれば、劣等生の対として最強として存在している零王の存在が消えるかもしれない。


 奏はそれだけ零王を危険視していたのだった。


「ほら。行きますよ結」


 奏は今だに呆然と立ち竦んでいる結の手を取ると、結に微笑み掛けながら先へと進み始めていた。








 幻穴(ファンホール)が発見された場所から最寄りの街を目指していた結と奏でだったが、道を半分もいかないうちに、空は真っ暗になってしまっていた。


「はぁー。仕方がありませんね。今日はここで野宿をしましょう」


 奏は道から少し外れた場所に結を連れて行くと、歩道から見えないことを確認すると、地面にサッと手を翳していた。


 奏が手を翳すと、一瞬でその場所に氷で出来た家が出現していた。


「なぁ、奏」


「どうしましたか?」


「これって野宿って言うのか?」


「言わないかもしれませんね」


 そこに建っているのは、正真正銘の家だ。テントならまだしも、さすがにここまでやってしまっては、これは野宿とは言えないのではないか。


 二人はそんな割とどうでもいいことを気にしていた。


 奏が「さぁ、入りましょう」っと結を誘うが、そこで結は停止の言葉を口にしていた。


「これ氷だよな?」


「見ての通り、私の作った氷の家ですが。……なかなか良い出来だと思っていたのですが、気に入りませんか?」


「いや、そういうわけじゃないんだ」


 奏が作ったのは結と合わせてもたったの二人ということで、比較的小さい家にしていた。


 家というよりかは、マンションの二人部屋を作った感じだ。


 使うのは結と奏の二人だ、ならば広さ的には二人部屋なので十分なはず。


 外見にも文句は無いらしいため、一体なにが問題なのかと奏は首を傾げていた。


「だって氷だろ?寒くないか?」


 奏はなるほどと思っていた。


 確かに氷の家、童話などで見るだけなら夢いっぱいの素晴らしいものかもしれないが、実際に住むとなると話は別だ。


 氷の床、氷の壁、氷のベット。


 明らかに寒い。


「そのことについては問題ありませんよ?」


「なんで?」


「私の氷は少し特殊でして、見た目は確かに氷なのですが、温度は氷じゃありません」


「は?」


「つまりですね。見た目は氷でも、温度は私の思うがままなんです。温度の変化はそれなりに幻力を使いますので、基本的には大幅な変換はしませんが、やろうと思えば、絶対零度から太陽の温度まで自在ですよ?」


 奏は、「騙されたと思って触ってみてください」っと結の手を氷の家にくっつけていた。


「……冷たくないな」


「でしょ?」


 結が氷の家の壁に触ってみると、確かにその温度は見た目とは異なっていた。冷たくなければ、逆に温かい訳でもない。つまり、常温だった。


「疑問も解決したのですから、早く部屋で休みましょ?」


「……分かった」


 結を納得させた奏は、再び結の手を取ると、手を引いて部屋の中に入っていった。

 評価やお気に入り登録、アドバイスや感想などよろしくお願いします。


 次の更新予定は明日の午後9時です。

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