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4ー11 一組生十会


 物理世界と対を成している世界、それが幻理世界だ。


 物理世界にはまだ幻操師として目覚めていないだけで、高い適性を持っていることもが多く存在している。


 高い適性を持っているということは、つまり潜在能力が高いということだ。


 潜在能力は年齢と共に上がっていくのだが、潜在能力がある一線を超えると毒になる。正確に言うと溜まりに溜まった力が暴走してしまい、内部から自分自身を傷付けてしまうのだ。


 潜在能力の上昇率は、最初の潜在能力に比例しているのだが、この上昇率が高いと暴走の規模も変わる、そして規模が大きいと暴走してしまった本人だけではなく、周りの者にまで影響を与えるかねないのだ。


 それを回避するために、無意識であることをする。それが肉体と精神の分離だ。


 そして分離した精神(いや意識と呼ぶべきか)の一部は幻操術が一つの理として組み込まれている、もう一つの世界、幻理世界に飛ばされるのだ。


 潜在能力が高まり過ぎたらそれを何かしらの形で発散させればいいのだ。


 ストレスが溜まり過ぎて、病気になったりおかしくなったりするのを防ぐために、ストレス発散をするのと同じだ。


 精神の力に肉体が押し潰されないようにするため、一時的に精神の一部を肉体から分離させ、この幻理世界に飛ばすことによって、溜まり過ぎていた力を放出するのだ。


 そして、この分離した精神の一部は記憶の一部がハッキリしない状態で幻理世界の何処かに現れるのだが、賢一はそう言った子供を見つけて保護しているのだ。


 ならば何故そういった子供たちを保護しているT•G(トレジャーガーデン)の存在を隠しているのか。その理由は簡単だ、狙われる可能性があるからだ。


 何故狙われるのか、その理由はT•G(トレジャーガーデン)に来る子供たちの約半分は幻操師としての適性が高くて幻理世界に来てしまった子たちだからだ。


 高い適性があるとは、つまり幻操師として才能に溢れているということだ。そしてその子たちは子供、何かしらの方法で洗脳するのはあまりにも容易いだろう。


 子供であるが故に思うがままに洗脳し易く、なおかつ高い才能を持っている。これでも少しでも戦力を欲している各ガーデンからすれば喉から手が出るほどに望む人材なのだ。


 幻操師の才能はほぼイコールで精神力と関わるのだが、並の才能では幻理世界に飛ばされることなどないのだが、少ないとは言えそれだけの条件を満たす子もいるのだ。


 幻理世界に飛んでくる子供たちにはある共通点それは、幼い少女だということだ。


 小学校の高学年で良く言われることだが、そのぐらいの年齢になると男の子よりも女の子の精神がはるかに成長するのだ。結果、幻操師として高い適性を持った子供はほぼ百%が女の子なのだ。


 だがら幻操師としての実力で別れるT•G(トレジャーガーデン)のクラス分けでは一組がみんなは女の子なのだ。


 奏もほぼ百%の確率で才能があって幻理世界に飛んできた一人だ。


 年齢的に考えて奏な幻理世界で過ごした時間は少ないだろう。幻理世界に来る前の記憶がハッキリせず、幻理世界に来てからはぼぼずっとT•G(トレジャーガーデン)の一組で過ごしていた奏の知っている男性というのは二組の何人かと、賢一、そして結だけなのだ。


 そんな環境のこともあり、そして何よりも奏自身が恋愛関係に果てしなく疎いことを知っているため、結はすぐに冷静さを取り戻していた。


「はぁー。あんまり勘違いさせるような言い方はしないほうがいいぞ?勘違いして襲ってくる奴もいるかもしれないからな」


 結の忠告に、奏はやはり頭を傾げ頭の上にたくさんのクエスチョンマークを浮かべていた。


 結は「まあ、奏なら返り討ちだろうけどな」とつぶやくと、ため息をついていた。


「結が何を言っているのかはわかりませんが、私が結のことを特別だと思っているのは本当ですよ?」


「……そっか。ありがとな」


(まあ、どうせ弟?みたいな感覚だろうな)


 結は奏に優しく微笑みかけると、まるで妹にするかのように優しく奏の頭を撫でていた。


「くすぐったいですよ」


 奏はクスクスと笑い、微笑みながらそう言うが、嫌がっている様子は全くなかった。


 それどころか、一旦立ち止まると、もっとしろとでも言いたげに目を瞑っていた。


 暫く奏の頭を撫でていると、奏は満足したのか「ありがとう」っとつぶやくと、また二人で一緒に部屋に向かっていた。


「それでは私はこれで」


「また明日な」


「はい」


 部屋の前にたどり着いた奏は最後に満面の笑みを結に見せると、部屋の中に消えていった。


(さて、菜々と戦って幾つかの欠点も見つけたことだし、改造するか)


 結は自室に戻ると、菜々との戦いで見つけた欠点を補うべく、また法具の改造を始めていた。







「おはよう」


 次の日、朝起きた結は、さっそく奏や六花衆が集まっている部屋、一組生十会室に来ていた。


 この生十会は奏が賢一から聞いた話を元に今の一組を作った時に一緒に作ったものだ。


 メンバーはまだ十人いるわけではなく。新しく参加している結。会長を勤めている奏。他にも六花衆の美雪、小雪、雪乃、雪羽を含めた、七人だけだ。


「おはようだにゃぁー」


「おはようバユウ」


「おはようごさいます結さん」


「おっやっと来たのか。失礼、おはよう」


 小雪、雪乃、美雪、雪乃の順番で挨拶されると、結は入り口から最も遠い場所に座っている奏に向かった。


「おはよう奏」


「おはようごさいます結」


 結は奏と挨拶を交わすと奏の隣、副会長の席に座った。


「昨晩はしっかりと眠れましたか?」


「ん?あぁ、悪いうるさかったか?」


「いえ。作業の音は特に気になりませんでしたが、結はあの後ちゃんと眠ったのか不安でしたので」


「俺は大丈夫だよ」


 昨晩、結が法具を改造していることに気がついていた奏は、結が作業の後にちゃんと休んだのか不安になっていた。


 奏は不安を含んだ目で結を見つめていると、結は安心させるように奏の頭を優しく撫でていた。


「こらっ!姫になにしてるのよっ!」


 結が奏の頭を撫でていると、突然雪乃がバンッと机を叩きながら立ち上がり、ヒステリック気味に叫んでいた。


 雪乃は素早い動きで結の頭なでなでをやめさせると、奏を両手で守るかのように抱き締めながら結を睨んでいた。


「まさかとは思うけど、奏の行動を勘違いしてやらかしたなんてことは無いわよね?」


「……ないよ」


「なによっ今の間はっ!」


 雪乃は結の微妙な返事に、さらに強く奏を抱き締めると、ガルルルルと今にも噛みつきそうな狼になっていた。


 雪乃が言う通り、奏の言葉に勘違いして一瞬浮かれてしまったものの、すぐに冷静に戻ったため結は悪くない。


「ゆ、雪乃、苦しいです」


「へ?あっごめんなさい」


 雪乃は奏にそう言われて、シュンといじけながらも結に対して鋭く睨みつけていた。


「雪乃、冷静になってください。結さんがそんなことをすると、本当に思っていらっしゃるのですか?」


「うぅっ。で、でも結だって男の子だもんっ!狼だもん!」


「どちらかと言えば今の雪乃のほうが狼っぽいにゃ」


「なぁっ!」


 小雪は思わすといったふうにつぶやくと、そのつぶやきをばっちり聞いてしまっていた雪乃は顔を真っ赤にしていた。


「小雪っ!あんたねっ!」


「はぁー。雪羽、お願いします」


「了解だよ」


 顔を真っ赤にして怒り出した雪乃を見て、奏は珍しく困った表情でため息をつくと、こういう時に頼りになる人物に頼んでいた。


「雪乃、少しこっちに来てくれないかい?」


「えっ。な、何かな?」


 雪羽は手でちょいちょいっと雪乃を手招きすると、以前にもこのようなことがあったらしく、若干顔色を悪くしながら雪羽の言いなり通りにしていた。


「それでは、少し出てくるのだよ」


「いってきます」


 雪羽は何処か楽しそうに、対して雪乃は絶望したかのように弱々しい声でそう言うと、二人一緒に部屋を出て行った。


 雪羽も六花衆の一人だ。


 赤い和服に身を包み、同じく赤い眼鏡を掛けた、黒髪ロングの美少女だ。


 語尾に良く「ーのだよ」がつくのが特徴の美しい少女だ。


 六花衆の中では美雪同様知的で理性的な子だ。そしてなにより細かい操作が得意で手が器用だ。


 キーボードを打たせたらそのスピードはその道のプロがビックリしてしまうほどだ。


「さて、早速二人席を外してしまいましたがどうしましょうか?」


「どうするもなにも、特にすること無いしいいだろ?」


「そうだにゃ。にゃにゃ(私)たちはいつも通りゴロゴロしてれば良いと思うにゃ」


 生十会とは言え、すでに奏の手によってこのT•G(トレジャーガーデン)は素晴らしい統制がとられているのだ。正直言ってやることなんて無いに等しい。


「それなら特訓するというのはどうでしょうか?」


「昨日、菜々様と戦ったばかりなのにゃっ!!だから今日は休みにするべきだにゃっ!!」


「まあ、元々T•G(ここ)は正式なガーデンじゃないから依頼も無いし暇なんだよな」


「美雪の言う通り、することと言えば特訓ぐらいですね」


 最後に奏がそう言うと、それぞれうーんと考え込んでいた。


 その時。突然、扉が開かれていた。そこには。


「たたた大変よっ!!」


 焦った表情の雪乃の姿があった。

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 明日の更新は午後九時を予定しています。

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