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3ー24 戦いの先に現れる者

「終わったか」


 気絶した麒麟を念のため縛ると、結はこの戦いが終わったことを実感することが出来ていた。


(いや、まだ双花を助け出した訳じゃなかったな。麒麟は……放置していても問題ないだろ。俺もそろそろ探しに行くか)


 結は一度、床に寝ている麒麟に視線を落とすと、軽く頬をつっつき、気絶しているのを確認すると、麒麟をそこに放置して、双花を探しに行こうとした。


「結っ!!」「結ー」


「ん?」


 結は双花を探しに行こうと、一歩、歩き出すとその瞬間、聞き覚えのある声が届いていた。


「火燐っ春姫っ……それにーー」


 声が聞こえてきた方に視線を向けると、そこにはここに来る途中で別れてしまった仲間、火燐と春姫の二人がいた。


 ……いや、二人だけじゃない。


 二人の影に隠れるようにしてもう一人いるようだ。


 火燐と春姫はそれぞれ、クスクスと笑いを堪えようとしているが、思わず漏らしてしまいながら、二人して横にずれると、そこにいたのはーー


「ーー双花?」


「はい。心配をかけてしまって申し訳ありません。夜月双花ただいま戻りました」


 今回の潜入の目的である、囚われの姫こと、夜月双花の姿があった。


「ふふふ、どうだ双花様は私たちが見つけたのだ。結ではなく、私たちがなっ」


「火燐は無視してなの。見ての通り双花様は助けたの。それでーー」


「私たちは助太刀に来たのだが、その必要は無かったようだな。……ん?どうした春姫?」


 火燐にセリフを横取りされた春姫は、「ちょっと来てなの」っと言いつつ、火燐の腕を引っ張り、結たちのいる場所から少し離れると、少し怒った目で火燐を見つめながら説教をしていた。


「麒麟様はどうなりましたか?」


「心配するな。死んじゃいない、今は心装を壊された反動で気絶してるだけだ」


「……そうですか」


「そういえば、六花と陽菜がいないようだが知らないか?」


「確かそのお二人なら、火燐と春姫とは別ルートで私を探してくれていると聞きましたが?」


 結は「そうか、分かった」っと返すと、突然真剣な表情で双花に言った。


「……少しいいか?」


 結は「二人には聞かれたくない」っと続けて、双花と二人で未だに説教をしている火燐と春姫から離れると、麒麟から聞いたことを双花に話した。


「そんなことあるわけが……A•Gがですか?」


「そうだ。それに麒麟の妹を殺したと言う白い仮面の者……おそらくアイツ(・・・)と同一人物だ」


 結は憎らしげに拳を力強く握り締めながら、そう言った。そんな結を双花は、悲しそうな目で見つめていた。


「あの時の事と言い、今回の事と言い、どちらも背後にはアイツの気配がする」


「……そうですね。麒麟とH•Gの守護者たちはこちらで尋問することにします」


「頼む」


「そうだっ!!」


 結は麒麟たちH•Gのことを双花に託すと、突然火燐が何かを思い出したかのように大声をあげていた。


「火燐どうかしたのですか?」


「双花様っ!!今すぐR•Gに戻りましょうっ!!」


「火燐、とりあえず落ち着け。春姫は説明できるか?」


 火燐たちは、麒麟の寝ている場所を通り過ぎて、走って結たちの場所まで駆け寄ると、突然そんなことを言い出した。結は興奮している火燐よりも、冷静にしている春姫から話が聞ければいいと思い、春姫に問い掛けると春姫は「できるの」っと答えた後、火燐の言おうとしていることを話した。


 火燐が言おうとしていたのは、春姫と二人で双花を探していた時に気が付いたことだ。H•G内にH•Gの生徒がマスターである麒麟とその守護者である、白虎、玄武、青龍、朱雀の合計五人しかいないことについて、残りのメンバーはF•GやR•Gに奇襲をしているのではないかということだ。


「確かにそれは心配ですね。六花と陽菜と合流したら、すぐに戻りましょう」


 結たちは満場一致でそう決めると、この無駄に広いコロシアムの中で、複数ある出入り口の中から結がここに来た時に使って出入り口を選び、いざそこから来た道を引き返そうとしていると、それは起こった。


「なっ!!」


 突然、出入り口の周囲がキラキラと光り輝くと、次の瞬間、出入り口が崩れ落ちるかのように、瓦礫となって出入り口を塞いでしまっていた。


 その後も崩れるような音が連続で響き、見回すと、コロシアムの四方に設置されていた出入り口の全てが、ここと同じように崩れ落ちて、その道を塞いでしまっていた。


 それと同時に、コロシアム全体が薄暗い暗闇に呑み込まれていた。


「な、なにが起こっているのだっ!!」


 困惑した火燐がそう叫ぶが、ここにいるメンバーは誰一人として答えることが出来なかった。


 困惑しきっている四人の元に拍手の音が鳴り響いた。


「そぉーの心配はぁー、あーりま、せんよぉー」


 早く六花たちと合流し、R•Gに帰ろうとする結たちの元に、突然ふざけた口調の声が届いていた。


 結たちは、すぐに声の発信源へと振り向くと、そこにはーー


「お前は……」


 全身黒づくめの黒いロングコート(・・・・・・・・)と白い仮面を被った(・・・・・・・・・)何者かが立っていた。


「そ、その心配はないとはどういう意味だっ!!」


「いいぇー?麒麟がぁー余計な事をしたのでぇー、麒麟が送ったぁー総勢五万の軍勢はぁー、わったくしがー処理しておっきましたぁー」


「なっ!!」


 五万という、とんでもない量の軍勢をたった一人でどうにかしたと言っている仮面の者の言葉に、驚きつつも、どこか納得してしまうような、強者のオーラが仮面の者から溢れていた。


「いーやっ、まぁったく。おっもってぇーいーません、でしたよぉ?」


 麒麟のそばに立っている仮面の者は、エコーの掛かった、男か女かもわからない作り物のような声でそう言うと、つま先で気絶して無抵抗となっている気絶の頭を蹴っ飛ばしていた(・・・・・・・・)


「がはっ……ゴホッ……ゴホッ……」


「おっきてくれましたかぁー?」


 どうやら仮面の者は、麒麟の頭に刺激を与えて、気絶していた麒麟を強制的に目覚めさせたようで、ゴホゴホと咳き込んでいる麒麟の上半身を無理やり起こすと、横でしゃがみ込んで麒麟の髪を鷲掴みにしていた。


 どうやら麒麟は目覚めたと言っても、体に力が全く入らないらしく、無抵抗でいた。


「あっなたがぁー、負けるとはぁーおっもていませぇーんでしたよぉー?」


「……お前は……あ、あの時の……なんで、……ここに?」


「なっぜ、わったくしがぁーここーにいるかですかぁー?そんなーの決っまっているじゃーないですかー?いっままであなたに情報を流して差し上げたのはぁー、こっのわたくーしなのですよぉー?」


「な、んだと……」


 麒麟は突然現れた妹の仇に、体は動かないが責めてもと思い、睨みつけていると、仮面の者はそんなことを言った。


(麒麟は奴から情報を貰っていたことを知らなかった?……つまり仲介役がいたということか。情報源がこいつだとすると、こいつはなぜこうも『ジャンクション』について詳しいんだ?)


「気付いていっませんでしたかぁー?あっなたはぁー、こっのわたくしにぃーの、手っのひらでぇー、おーどってたに過ぎないのですよぉー?」


「……く……そぉ」


 自分が、あろうことかずっと探し求めていた、妹の仇のいいように利用されていたと知った麒麟は、悔しそうに涙を零していた。


 仮面の者はずっとケラケラと小馬鹿にするように笑続けていた。


「まさか……私が……あんたの計画に、利用されるなんて……」


「いいえぇー?あっなたの敗北はぁー、想定がーいの出来事ですよぉー?」


「く、……よく言うね。これも……お前の……いや、お前たちの計画通り、なんだろ?」


 麒麟は力無くそう言うと、仮面の者に向かって弱々しく殺気をぶつけていた。


「おー怖い、こっわーいですねぇー」


 仮面の者は「こっわーいのでぇーもう一度、寝って貰いましょうーかぁー?」っと続けると、麒麟の首に手刀を落とし、再び麒麟の意識を削り取り、気絶させていた。


「さぁーて、さてぇー?こっこからがぁー、ほぉーんだいでぇーす。おっ久しぶりですねぇー?結さーん?」


 仮面の者は、突然そう言いながら、仮面の者の突然の登場で唖然としてしまっている結に、視線を向けていた。


 仮面の者の被っている仮面の中、目に当たる部分がふと、光り輝いた気がした。


「あぁー、わっすれていましたぁー。わったくしの名前はぁーそうですねぇー。ノースタルっとでも名乗っておきましょぉーか」


 ノースタルと名乗った仮面の者は、ゴホンとわざとらしく咳をすると、首をちょこんと傾げると、楽しそうにケラケラ笑いながら話し始めた。


(あいつは……あいつは……)


「結っ、聞いてはいけませんっ!!」


 焦った表情で結に叫ぶ双花の声は、結に届くことはなかった。


「アノ子はゲンキー?」


 アノ子を殺した、張本人。


 結の頭の中には、今まで靄がかかっていて、うまく思い出せなかったことが、まるで氷が溶けていくかのように、思い出されていた。


 ノースタルのケラケラとした楽しそうな笑い声が響いていた。

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