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3ー11 一人目の刺客


 とうとう城の前まで辿り着いた、結たち。

 当然というべきか、城の前には大きな門が構えていた。とはいえ、見る限りでは門番やそういった者の姿は見えなかった。


「さて、どうしますか?」


「門番がいないとは言え、この門を力づくで開けるのは不可能だろう。私としてはやはり正面突破したいところなのだが、正直難しいな」


()りー」


「え?」


 六花がこの門をどうするか、皆に問い掛けると、火燐は正面突破は難しいという結論で締めようとするが、そこに結が一言謝罪の言葉を口にしていた。


 突然いつもよりもどこか冷たく、鋭い声で話した結に驚いた皆は、思わずといった具合に結へ振り向くと、そこにはとても、とても冷たい目をした結がいた。


「もう、我慢出来ない」


「なっ!!」


 結は小さく呟いた瞬間、門が、城への道を遮る巨大な大門が、木っ端微塵に吹き飛んでいた。


 結たちだけじゃない、少ないが近くにいた通行人たちもまた、その門を驚愕という言葉が相応しい顔で見つめていると、次に目がいったのは、それを起こした犯人。


「……もう、我慢しない。全て、邪魔するものには風穴開けてあげる」


 純白の二丁拳銃を構えた、結の姿だった。


「はぁー、言いたいことは……まぁそりゃたくさんありますが、やってしまったものは仕方がありません。早く行きますよ」


「……それもそうだな」


「後でお説教ですの」


「……調教」


「……ごめん」


 結が派手にやらかしたせいで、城の中から大騒ぎしている声が聞こえた、いや城の中だけじゃない、城の外むしろ門の外にいた人々も大騒ぎんしていた。


 とはいえ六花が言ったように、やってしまったものは仕方が無い。

 五人はこのまま城内部に突入することにしていた。


 結局正面突破することになった一同が城内に侵入すると、まずそこにあるのは果てが見えぬほどの、長い廊下だった。


「なんだこの長い廊下は」


「終わりが見えないの」


「それにしても豪勢な装飾の数々ですね」


 廊下の装飾は黄金を基本として、あまりにも豪勢なものだった。これではまるでどこかの王が住まう王宮のようだ。


「ニシシシシ、うちらの庭に心を奪われたのかな?」


「お前は」


 結たちの前に現れたのは、双花を攫うために麒麟が現れた時、麒麟の呼び掛けによって麒麟の左側に現れた、白を基調に金色の刺繍が施された着物を着た少女だった。


「ニシシシシ、H•Gマスター麒麟様を守る四方の守護者の一人。うちの名前は西の白虎だよ」


 白虎はそう自己紹介をすると、にっと笑顔を作っていた。


 白虎はあの時と同じく、白い着物を着ているた一つだけ違いがあった。それは白虎の手元、白虎の両手には、それぞれ指の方に向かって五本の鉤爪が伸びているクローを装着していた。


「それにしても、陽菜の言うとおりになったな」


「そうなの。一人ずつ刺客として送られてくる。ドンピシャなの」


「ニシシシシ、なにをぶつぶつ言ってるんだい?ここでうちと戦う奴一人置いて残りはさっさと次に進みなっ」


 状況はなんと、陽菜が言った通りになっていた。一対一の真剣勝負。

 それは結たちにとっても都合がいいものだ。このまま相手の言うとおりにしておこう。


 とはいえ、警戒は勿論怠ることはしないが。


 そしてなにより今重要なのは一体誰にここを任せるかだ。恐らく戦いが終わった後の勝者がそのまま遊んでいるとは思えない。

 少なくとも、結側が勝った場合、勝ち残った誰かは先に行った仲間たちを追う予定だ。


 逆にこちらが敗北してしまった場合、敵に挟み撃ちになる可能性がある。それではあまりにも不利になってしまう。だからこちらが負けるのは絶対に避けなければならないだろう。


 つまり、誰を残すかが重要になってくる。


「時間が勿体ない、俺が行く」


「ダメなの」


 ここで時間を浪費してしまうのは最善ではない、だから結が残ろうとするがそれを拒否する声があった。


「結たちは先に行ってほしいの」


「春姫……」


 声を挙げたのは、R•Gの守護者の一人、河嶋春姫だった。


 春姫はいつものホワワンっとした雰囲気ではなく、とても強く鋭い、正に守護者の名に相応しい戦士の目をしていた。


「春姫、大丈夫なのか?」


「火燐、少しは信頼してほしいの」


「しかし……」


 春姫は「それに」っと言うと、懐から指揮棒型の法具を取り出し、相手を、白虎を強く睨んだ。


「そろそろ、我慢できないの」


 春姫は先手必勝とばかりに、指揮棒を振るう白虎を中心に水柱を作り出していた。


「早く行くのっ!!マスターを助けてなのっ!!」


「っ!!くっ、みんなっ行くぞっ!!」


 よろしくなの、春姫は小さく呟くと、結たちを見送っていた。


 水柱に閉じ込められている白虎の横を、結たちが通り抜けるのを確認すると、春姫は自分の敵に意識を集中させていた。


 そして、白虎に意識を集中した瞬間、白虎がクローを振るうと同時にまるで、いつでもできましたよっとでも言いたげな様に水柱を吹き飛ばされていた。


「ニシシシシ、君がうちの相手だね?」


「っ!?」


 白虎はそう言いながら、すでに跡となってしまった水柱から出てくると、両手を胸の前でクロスさせるように構えるとまた、ニッと笑っていた。


「それじゃ楽しもっかっ!!」


 白虎を楽しそうに笑うと、その場で四つん這いになると、まるで獣のように四足歩行で春姫に向かって一直線に走っていた。


「速いのっ!!」


 白虎はまるで、野生の虎を思わせる圧倒的なスピードで進むと、春姫の背後に迫っていた。


 春姫は背後を取られたことに気が付くと即座に振り向きながら手に持った指揮棒を振るっていた。


「ニシシシシ、水の幻操師だね」


 白虎は足元から現れた水柱をクローで切り裂く(・・・・)と楽しそうな顔で春姫の事を観察していた。


 白虎から見て、春姫の戦い方はまさに魔法使い。


 火燐のような幻力によって強化された自分の身体能力をメインに戦うのではなく、まるで魔法使いのように、自分はそこから動かずに幻操術をメインに使った戦術によって対象を撃破するスタイルだ。


 火燐と春姫。

 近距離を得意とする火燐と遠距離を得意とする春姫。そしてこの二人の息の合ったコンビネーションは守護者としてまさに理想の姿と言ってもいいかもしれない。


「あなたが使う幻操術は、風ですか?」


「ニシシシシ、気が付かれるとは思ってなかったよ」


 幻力で強化されているとは言っても、基本的に幻力で強化されるのは衝撃に対する耐性や純粋な身体能力だが、白虎の速力はその強化だけでは説明出来ないほどの速度をほこっていた。


 その白虎の異常な移動速度、その秘密は白虎の使っている幻操術にあった。


 白虎の使っている属性は風、四足歩行で一歩一歩進むたびに、その足の裏で風を発生させ、その風によってターボを掛けていたのだ。


 そして四足歩行でいるため風の恩恵を受けるのは足だけではなく手も、つまり単純計算で二倍のターボを掛けていたのだ。


「どちらかと言えば頭脳派なの」


 春姫はニコリと笑うと、一回では到底捕らえることは出来ないと、今まで取ったデータから判断した春姫は、今度は一回ではなく、数回指揮棒を振るっていた。


「ニシシシシ、数うちゃ当たるって?無理無理、当たらなーいよっ!!」


 地中から大量に水柱を発生させる春姫だったが、白虎のスピードがあまりにも速く、その全てを躱されてしまっていた。


「ニシシシシ、なに余裕そうにしてんのさっ!!」


 春姫の攻撃は全て、白虎には容易く避けられてしまっているのにも関わらず、全く焦った様子を見せない春姫に怒りを感じている白虎だったが、春姫は左手をそっと挙げそんな白虎に指を指すと、ニコリと微笑んでいた。


「気が付いていないの?」


「なにが……ニシッ!?」


 春姫の言葉を聞き、一瞬なんのことだがわからないでいた白虎だったが、次の瞬間、その歩みを止めてしまっていた。


 知っているだろうか?

 拳銃というものは、動いているものに当てるのはとても難しく、的確に相手に当てようとするのであればそれは凄まじい技量を必要としている。


 しかしそれは幻操術であっても同じ事が言えるのだ。


 幻操術は元々、兵器の代わりに作られたものだと言っても過言ではない。幻操師が個人で使う様な幻操術は、兵器で例えるとまさに拳銃なのだ。


 幻操師にとっての拳銃である幻操術。その幻操術も拳銃と同じように自分の目で、目視によって対象を捉えそして幻力を法具に注ぐという行為によってトリガーを引くのだ。


 つまり幻操術だろうが、動いているものに当てるとは非常に難しい、それも相手が白虎のようなスピードに自信があるような相手の場合、春姫のような自らは動かずに、幻操術によって相手を射撃する者にとってあまりにも相性が悪いのだ。


 春姫はその事に気が付いていた。

 だからこそ春姫はあえてそれを利用することにしていた。

 つまり相手には自分の有利を錯覚(・・)させることによって自分の思い描くシナリオ通りに動かす、まるで指揮棒によってその場をその戦況を支配するかのように。


 そしてたった今、白虎はその動きを止めてしまっていた。


 もちろん白虎自身、動き続けていたほうが相手にとってやり辛いということは十分過ぎるくらい理解している。

 なんせ春姫が自分にとって相性の良い相手だとわかった後は標的にされにくくするためにずっと走り回っていたのだから。


 結果、怒涛の連撃を全て躱すことができていたのだが、ここで白虎にとって想定外の事が起こっていた。


 白虎はそれを今こうして、春姫に言われるまで全く気が付く事ができないでいたのだ。


 自分が誘導されていた(・・・・・・・)だなんてことに。


 現在白虎がいる地点、その周辺にはすでに、春姫が水柱を連発していた時に紛れて発動していた、地雷式幻操術『水地爆点(すいちばくてん)』が仕掛けられていたのだ。


「バイバイなの」


「ニシッ!!」


 そして、春姫は白虎にそう宣告すると同時に、周り一帯に地雷が仕掛けらてしまい身動きができないでいる白虎の足元に、無慈悲にも特大の幻操術を発動させていた。


水天柱爆(すいてんちゅうばく)


 『水柱』よりも巨大な水柱が白虎の足元から発生し、白虎の全身を覆うと凄まじい水蒸気爆発を起こしていた。


 そして爆発によって周りに設置されていた地雷たちも誘爆し、結果、巨大な爆発の連鎖が白虎に襲い掛かっていた。















『心装』

 

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