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追憶のエピローグ

 ブックマーク、感想、評価ありがとうございます!


 七実と九実は走っていた。


「せいっ」


 パーティ会場のいたるところに敵兵、カッコ雑兵的な奴らカッコトジがいるのだが、通り過ぎる時に一撃で刈っている。


 容赦だなんてものはどこかに落としてしまったらしい。


 殺意に塗れた刃が雑兵を襲った!


 ディスプレイにはそんな単語がズラーと並んでいるだろう。


「はいっもう一体天界にご案内っ!」

「うぎゃぁー!!」


 激しく赤い噴水と成り果てる雑兵。


 これにて雑兵刈りゲームは終わりだ。


「さーてと、近くにいる敵兵は全部刈れたかな?」

「うん。刈れたと思う」


 高速移動を止め、キョロキョロとしながらも第七感覚を使って敵を捜索する七実。大丈夫だ。もういない。


「それにしてしても雑魚ばっかだね」

「それは仕方がないと思う。雑兵は所詮雑兵」

「それはそうだけどさー、雑兵でもちまっと強いのが居ても良くない?」

「強かったら雑兵なんてやってない。弱いから雑兵扱い」

「まあ、そうかもだけど……」


 ゆっくりと歩きながら二人は気軽に話していた。


 もはやここは敵陣地と呼んでも差し支えがない状態なのだが、緊張感? そんなものはない。


 人間が相手ではほぼ敵なしで最強と呼んでも違和感がまったくないような二人なのだ。

 互いを倒せるのはおそらく互いだけ。それだけ他の連中とはレベルが、次元が違う。


「ねえ九実」

「何?」

「なんかおかしくない?」

「……何が?」

「音がなくなった」


 さっきまでは敵兵どもの息遣いが良く聞こえていたというのに、それらが突然全て同時に消えていた。


「……この感じ……どこかで」


 この現象。九実には見覚えがあった。だが、それが一体どこでだったのか、誰と対峙した時だったのかがまったく思い出せなかった。


 その時。二人がそれに気付いたのは同時だった。


「「誰っ?」」


 いつの間にかそこにいた何か。

 形は人のそれだ。

 しかし、それの全身は黒い何かに包まれており、肌らしきものは一切露出していなかった。


 二人が見る事が出来たのはただ一つ。


 銀色に光り輝く右眼だった。


「……っ! あなたは……」


 その眼を見て、九実の頭の中に映像が巡る。それは過去に見た写真たち。九実の過去だ。


「九実? もしかして知り合い?」

「…………そう」

「へぇ」


 随分と間があるのは気になるが、嘘を言っているというのはないだろう。


 そんなことはどうでも良い。今重要なのは、あの九実が震えているという事実だ。


「ほう。まさかこのような場所で其方と会うとはの。流石のワシにも想像出来んかったの」


 禍々しく、不気味な姿とは裏腹に、聞こえてくる声は随分と可愛らしい少女の声だった。


 話し方が独特なのは良しとして、七実はふと気になる事があった。


「……ねえ。あんた誰?」

「む? ……ほう。こちらは本物のようじゃな。……いや、偽物……否、人形とでも言うべきか」

「何を言ってーー」

「七実。ダメ」


 口調を強めようとした七実を九実が止めた。その声に混ざる焦りを感じ取り、七実は眉を顰めた。


(なんで九実はこんなに怯えてるの? こいつ、明らかに弱いのに(・・・・))


 七実がこいつから受けた印象はそれだった。


 確かに纏っている雰囲気というかオーラは独特で、摑みどころがない。


 だが、まるで抜け殻のようだった。


(……だけど、あの眼……眼式に似てるけど、何かが違う……だけど、あの瞳からも何も感じない……どういう事?)


 たとえあの光が心装眼式によるものではないにしろ、光を宿すレベルの高純度幻力のはずなのだ。


 何も感じないわけがない。


(あたしの感覚を狂わされてるのか?)


 暗く、声以外に一切の音がなくなってしまったこの空間。

 犯人がこいつだとすれば、この空間がこちらの感覚を誤魔化しているのかもしれない。


 だけど、こっちは最強クラスが二人。向こうは一人。仮に戦いになったとしても負けるわけがない。


「無駄じゃよ小娘。其方ではワシ一人に勝つ事すら出来んよ」

「……なんだって?」


 まるで心を読んできたかのようなタイミング。


 警戒から七実の目が細まった。


「ただの実でしかない其方では満開の花として咲き誇るこのワシには勝てんと言っておるのじゃよ」

「そんなのやってみなきゃわかんないよ?」

「七実! だめ!」


 氷で剣を作り出し、構える七実。


 静止の叫びをあげる九実だが、それよりも早く七実は走り出した。


「やれやれ。わからん小娘じゃな」

「ハッ!」


 瞬きの間もなく目の前に現れた七実はため息と共に下を向いている少女に上段から刀を振り下ろす、


 が。


「……えっ?」


 少女がスッとあげた二本の指によって受け止められていた。


 片手版の真剣白刃取り。


 それを、見もしないでやられた。


 本来であれば避ける事すら難しいスピードだ。


 七実と同等に近い実力を持つ九実だとしても避けるかガードが精一杯だろう。


 それを……。


「何を動揺しておる。まさか勘違いしておるわけではあるまい? 己が最強だなんと」

「ーーっ!」


 顔を上に向ける少女。

 七実と目が合った。


 瞬間。全身に黒い何かが走る。


(これって……恐怖?)


 生まれて初めて感じた感情に七実は。


「……あはっ」


 笑っていた。


「あはははははははっ! いいよ! いいよ! もっと、もっと感じさせてよ!!」


 ぐっと腕に力を込める七実。二人を中心に床が沈んでいく。


「七実!」

「邪魔しないで!」


 入ろうとすると九実に七実は叫ぶ。


 こんな楽しい感覚を得られるだなんて。七実の心は強く高揚していた。


「……随分と危険かつ面白い小娘じゃな」


 七実の刀はまったく動かない。

 途中で引いてみたのだが、それでもまったく、ピクリともしなかった。


「これで意味がないとすれば、そろそろ攻めるしかないかの」

「ーーっ! 七実! 逃げて!」


 焦った九実の声が聞こえる。


 へぇ、あんた大声が出せるんだ。そんな呑気な事を七実が思っていた瞬間、全身に何かがのしかかる。


(これって、殺気?)


 それはあまりにも濃く、殺気なんかではなく、もっと具体的な何かを押し付けられているかのような。


 深海に生身で潜っているかのような重圧を全身に感じていた。


(これが、こいつの力……ははっ。かなわないな)


 自嘲気味に心の中でつぶやく七実。

 視界の端。

 空いている左手をこちらに向けるのが見えた。


 少女の手のひらに今まで見た事のないようなレベルの幻力が集まっていた。


(あっ……これ……死んだ)


 そして、光が放たれた。


「七実っ!!」

 次回更新日は未定です。ごめんなさい!

 決定次第活動報告にてご連絡するので、よろしければ作者のお気に入り登録や作品のブックマークをよろしくお願いします。

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