2ー17 火氷と月
双花は美しくもどこか挑発的に言うとその言葉に思わずムッとしてしまった結は全身に覆った力の出力を上げると二丁拳銃を使った火速を発動すると再び双花の真上へと移動すると回転弾倉を回転させ新たな弾をセットした。)
結は跳躍弾を対象者つまり双花には当てずにその周囲に連続して撃つとその弾達がそれぞれを弾き間まるで牢獄のように双花の周囲を覆った。
「また弾牢ですか?これはもう効かないとわかっている筈なのですが……っ!?」
双花は前に弾牢を破壊した時の様に弾の軌道を確認している途中であることに気が付いていた。
「……届きませんね」
双花のできるだけ近くで作られた一回目の弾牢と違い今回の弾牢は双花の刀の届かない距離で飛び回っていた。
「ですがこれでは私の自由を奪うことは不可能ですよ?」
弾牢は元々対象者の周りに弾丸を牢獄のように展開することによって相手の行動範囲を極端に狭めるものだ。しかし今回の弾牢は双花を中心にして直径十メートルにも及ぶ距離で展開されていた。これでは双花はその内部で自由に動けてしまい弾牢の意味をなしていない。
「……良い。それはただの下準備」
結は再び違う弾丸をセットすると跳躍弾ではないその弾で弾牢を行うかのように双花の周囲に乱射した。
(まずは跳躍弾で発動範囲を設定。そしてこの空烈弾で威力調整をするそして……)
空烈弾、一言で言えば空気の弾丸だ。周囲の空気を吸収及び圧縮した弾を撃ち出し対象者にヒットすると同時に空気が拡散し衝撃を伝える弾だ。
ここで問題だ。火とはそこに生まれるためになにを必要とする?
答えは酸素……つまり空気だ。
空烈弾とはヒットと同時に周囲に今まで圧縮されていた空気をばらまくものだ。
ここでもう一つ質問をしようか。小さな火に多量の空気を与えたらどうなるだろうか?
それは
「っ!?」
爆発となる。
跳躍弾の弾け合いを利用して対象者の周囲で無数の火花を発生させる。そしてその範囲に空烈弾を使って多量の空気を注ぎ込むことによってそれは大爆発を起こし対象者双花を巻き込んで凄まじい破壊の力を無慈悲にばら撒いていた。
「…ふぅ」
結は爆発の範囲外に着地すると疲れたのか小さな溜め息をついた。
油断なく爆発によって起こった砂煙の中を眺めているとその中で動く影を発見した。
「……自重?なにそれ」
結はまたもや違う弾丸をセットとする自重など知らないとばかりに砂煙の中に見える影に向かって多量の弾丸を撃ち込んだ。
今結が撃ったのは高速弾という弾丸だ。弾内部に火薬が仕込まれておりその火薬を使い連続的に小さな爆発を弾丸の後方に発生させることによって弾速を不規則に上昇させる早撃ちのための弾丸だ。
「うわー、ゆっちってばえげつないことするなー。完全に容赦無しって感じだね」
その様子を見ていた桜は苦笑いしつつも容赦なくもどこかこれじゃやられないだろ?とでも言いたげな信頼を双花に対して感じているのであろうとことを感じていた。
「……かたや一ガーデンのマスター、もう一人はFランクの劣等生……はぁー全くゆっちの過去はどうなっているのやら」
桜のつぶやきはコロシアム全体に鳴り響く大歓声によって誰の耳に届くこともなくかき消されてしまっていた。
「……」
高速弾を撃ち終わった結は念のため火速弾を使い距離をとり銃を下ろしながら様子を見ていると突如として綺麗な歌声が聞こえ始めていた。
「……これは確か」
「ほう双花め。とうとう全力になるのか。ふふ、面白いな」
その歌声を聞いて思い当たる節があるのか反応する結だったがそのころ観客席にいた火燐はまるで自分の妹が成長したかのような嬉しそうに微笑んでいた。
「むむ、火燐?マスターのことを呼び捨てするのは良くないの」
「ふっ、そう言うな春姫。双花だっていつももっと気安く接してくれと言っているではないか」
「それはそれ、これはこれなの」
「しかし……」
「しかしじゃないの」
口論している火燐と春姫を置いて結と双花の試合は続いていた。
「あれは流石に危なかったですよ?」
歌を歌いながら砂煙の中から出てきたのはなんと無傷の双花だった。双花は二種類の弾を使った爆発も、高速弾を使った早撃ちさえもその全てを見切り捌いていたのだった。
これこそマスターと呼ばれる者の実力なのだ。
「……やっぱりだめ?」
「まるでだめとは言いませんが私を仕留めるにはまだまだだめ……ですね」
「……ならこれはどう?」
結は弾を火速弾に切り替えると左手に持つ拳銃の標準を双花に合わせた。
結は標準を合わせた銃だけでなく二丁両方に多量の幻力を込めると標準を合わせた方の拳銃の銃口から突如として白い光球が形成され始めていた。
「……確かそれは弾月……でしたか?」
「……そう。この術の名前は弾月。通常ジャンクションでは二丁を合わせることによってやっと発動できる技。でもフルジャンクショしている今なら拳銃一丁あれば一つ作れる」
そう言いながら結は下ろしていたもう片方の拳銃も標準を双花に合わせると銃口の先に一瞬でもう片方と同じまるで小さな月のような白い光球を形成させていた。
「……弾月はこの銃の力をほとんど使ってない。つまりこの術を発動させるのに弾丸はいらない」
結は無表情のまま淡々と話すと片方の拳銃を自分の真横に銃口を合わせていた。
『火速』
「っ!?」
弾を必要としない。つまり弾月の発動準備を終了した状態で六種の弾丸を使い分けることができるということだ。
結はあらかじめセットしていた火速弾を使い双花の視界からいなくなると一瞬で双花の真上に移動していた。
「上っ!?」
結が弾月を放つのと双花がその事に気が付くのはほぼ同時だった。
双花はその超人的な反射神経で気が付くのがほぼ発射と同時だった弾月による光球を両の手に握る刀で切り裂くと真上にいる結に反撃を行おうとするが
「っ!?いないどこ?」
結は双花が目前に迫っていた弾月に意識が集中しているのを利用してその背後に移動すると双花の背中銃口を押し付けた状態で弾月を発動した。
中型イーターでさえ一撃で葬ってしまうその攻撃をゼロ距離でまともな防御も出来ずに当たってしまった双花は一瞬でコロシアムの端まで吹き飛ばされてしまっていた。
「……どう?」
「……流石に効きましたね。全身がとてつもなく痛いです」
片目を瞑って全身ボロボロの状態で立ち上がった双花は辛そうにしながらもその目には勝負を捨てたような輝きはこれっぽっちも見せていなかった。
「弾月と言ったか?凄まじい威力だな」
「マスターがあそこまでボロボロになるのなんて初めて見たの」
「……大丈夫なのか?」
「マスターならきっと大丈夫なの」
双花は観客席で自分の心配をしている火燐と春姫をそっと横目で確認するとはぁーっと溜め息をついていた。
「自分の守護者に心配をかけてしまうとは情けないですね」
双花はやれやれと言わんばかりに首を横に振ると刀を握り直しコロシアムの端にいるためその壁を思いっきり蹴って結まで一直線に飛ぶと一つの術を発動した。
『混操、火氷双刃』
双花の持つ二振りの刀は双花の発動した術によってよらよらと大気が揺れるほどの高温を持った火と周りの空気に含まれている水分が水となって降り注ぐほどの低温を持った氷をそれぞれに纏っていた。
双花は空中で纏った火を吹き出し回転しながら結に迫ると己の間合いに入った瞬間にその回転により発生した遠心力を利用し凄まじい一撃を繰り出した。
結は体制を低くすることによって避けると距離の詰まっている双花に向けて再び弾月を撃った。
「二度目は当たりませんっ!!」
一度当たってしまい身に沁みてその威力を体感している双花は体を逸らすことによって避けるとバックステップをして距離をとり体制と無理な姿勢でよけたせいで乱れてしまっていた息を整えていた。
「その威力で連射できるとは思っていませんでした」
「……あの頃からできた」
「……そういえばそうでしたね……」
結の言葉を聞き懐かしそうにしている双花をどこか悲しい目で見ている結は体制を低くしてまるでクラウチングスタートの体制になると両手両足の力と火速弾による推進力を使い高速移動を開始した。
カウンターのしやすい直進的な移動ではなく移動速度を上げたり下げたりして変化を加えたり急激に曲がったりすることによってそれを防いでいた。
「私も想定以上にダメージを受けてしまいもう長く戦えそうにないですし、結もすでに体の方に掛かっている負荷がまずいレベルまで達しているのではないですか?」
「……そうかもしれない」
「それなら次の一撃で終わり……というのはどうでしょうか?」
「……最近そのセリフばっかり聞いてる気がする」
結の返事を聞くと双花は苦笑いしつつも残った力の全てを火と氷に変換して二刀に纏わせた。
その様子を見て結は中型イーターを仕留めた時のように二丁拳銃を構えるとその間に力を込めた。
『混操、火氷双天刃』
『六月法=弾月』
双花の構えた二刀は前に纏っていたよりも遥かに凄まじく荒々しい火と氷を纏った。
結は二丁拳銃の間に連射していた時よりも大きな月のように白い光球を形成していた。
そして術の発動と同時に双花は二刀をXをなぞるように振り下ろすと二刀が纏っていた火と氷が混ざり合ったX状の斬撃が結に向かって飛んでいった。
対して結は作り上げた小さな月を全力で双花に向かって撃った。
「眩しっ!?」
二つがぶつかり合った瞬間、思わず声を出してしまった桜だけじゃない。会場にいた全ての観客が目を瞑ってしまうほどの激しい閃光が起こっていた。
「……これって……」
観客達が思わず静かにしてしまうなか閃光が消え去り誰かが呟いた先に映っていたのは互いに地に伏せる双花と結の姿があった。
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