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2ー16 マスターの力

 「ちょっと双花様っ!?なにをおっしゃっているのか分かっていらしてるのですか!?」


 双花の問題発言を聞き桜が取り乱しながら双花に詰め寄る中結は双花の言葉の意味を考えていた。


 桜に詰め寄られながらもなにを言っているのか分からないと言った風に首をちょこんと傾げている双花の姿を見て結は自分の考えが間違っていないことを確信していた。


「双花、そういう誤解を招く様な言い方は辞めろと言ったはずだが?」


「へ?」


 口を開きっぱなしにして困惑している桜に対して結は溜め息を一つつくと少し怒った口調で双花に言った。


「つまり俺の身体が治ったら戦えということだな?」


「はい?それ以外に何があるというのですか?」


「え?え?」


 桜は自分が凄まじく恥ずかしい勘違いをしていることに気が付いたようで部屋の隅っこで顔を真っ赤にしながら項垂れていた。


「今の俺じゃ双花とはいい勝負もできないと思うが?」


「それでも私は結としたいのです。ダメですか?」


 双花は突然涙目になりながら上目遣いになり結にお願いをするが結は一瞬慌てたような表情になったがすぐにいつもの表情に戻り「話は身体が治った後な」と言うとニコッと微笑みかけていた。


「あっ……」


「ん?」


「い、いえ。それでは傷が治り次第また伺いますね」


 双花は慌てた風に言うと部屋から立ち去る際に「雨宮さん、授業は出ても出なくてもいいですし依頼は無事完了ということになりますので授業に出るなりゆっくりするなりどうぞお好きにお過ごしください」と早口で言うとさっさと立ち去っていった。


「……顔赤かったね」


「暑かったんじゃないか?」


「はぁー」


 本来なら自分が同情するなど失礼に値するかもしれないと思いつつも女の色恋沙汰に関しては関係ないよねっとなにかに言い訳をしつつ心の中で双花に同情している桜だった。











 結の身体が治るのに予想以上掛かってしまい双花のやりたい宣言から既に二日が経っていた。

 鏡は無事F•Gのマスターに手紙を渡すことができたらしくその返事の手紙を持ってきて双花に渡した後に結の見舞いに来たりもしていたが会長にすぐ戻るように言われていたらしく一日滞在しただけでさっさとF•Gに帰ってしまっていた。


「あぁーめんどくさい」


「あはは、諦めなよ」


 テンションが下がりまくっている結の頭を撫でで励ましている桜の姿があった。


 なぜ結がこんなにも落ち込んでいるかと言うと双花との試合を結局やることに決定してしまったからだ。

 もちろん最初は拒否をしていたのだが双花が泣きながら結に頼み込んだ結果結が折れてしまい二人は見事R•G全生徒の前で模擬戦をすることになってしまっていたのだった。


 ちなみにその模擬戦の日程がいつなのかと言うと……


「それではこれよりR•Gマスター夜月双花様とF•G中等部二年生十会役員音無結様のエキシビションマッチを開始します」


 今なんです。


 結と双花は距離にして二十メートル離れたところに向かい合って立っていた。


 ちなみに結はF•Gから招待された人間として男の格好で出場している。服装としてはF•G内でいつも着ているブレザータイプの制服を纏い両手首にはいつも着けているブレスレットタイプの法具を着けていた。


 対して双花はいつものドレス姿ではなく結と二人会う時に着る二つ葉の刺繍のついた水色の和服を纏っていた。そしてその腰には法具だと思われる二振りの刀がさされていた。


 二人がいるのはR•G第一訓練所、内装を一言で言えばコロシアムのような場所だ。そのコロシアムの中心に結と双花の二人が立っているのだ。


「さて、開始の合図はされたのですしそろそろ行きますよ?」


 双花は愛らしい笑顔のまま目だけを真剣にすると腰から二本の刀を抜刀した。


「早くなってくださいね?」


 双花は言い終わると同時に地面を蹴ると結に向かってジグザグとした動きで迫っていった。


「たぁっ!!」


 双花は振り上げた二刀を結に向かって上段から振り下ろす刹那の間、結はその左手の拳と右手の掌を合わせ親指同士を繋げた。


『フルジャンクション=カナ』


 双花の刀が結に当たる瞬間結を中心にして激しい砂埃が発生した。


「これは一体なんですか!?」


 いや双花は聞いていた。砂埃が起こる瞬間小さな爆発音をそれはまるで拳銃の発砲音のような。


 砂埃の中に着地することになってしまった双花はその場で回転するかのように二刀を振るうとその衝撃によって砂埃を吹き飛ばすことに成功していた。


 そしてその砂埃の中から出てきたのは双花ただ一人だった。


「……流石ですね、これがフルジャンクションのいえあなたの力ですか」


 双花が振り返った先に映ったのはコロシアムの端っこに座り込んでいる長く綺麗な赤髪と真っ赤に染まった目を持つ少女……いや結の姿だった。


「……うん、これがウチの力、火の力だよ」


 結は立ち上がりながらそう言うと自然体のまま不用心に双花へと向かって歩いた。


 双花もパッと見では構えているように見えないほど自然体に近い構えをとり警戒しているとまた小さな爆発音が聞こえた。


 意識を逸らしてはいなかった。双花の意識は結に集中していた。しかし実際はどうだ?気が付けば目の前から結の姿が


 消えていた。


「え?」


 カチャリ


「……隙だらけ。気が抜けてる?」


 双花の背後からその心臓に銃口を向けて突き付ける結の姿があった。


 結は背中から銃をどけるとまた小さな爆発音を起こし双花の目前へと移動した。


 結のまるで余裕に満ちているこのような行動にコロシアム全体から大きな歓声が巻き起こっていた。


 歓声の中にはその慢心した態度に悪態をつく声も混ざっていたがその姿に感嘆の意を唱える声もまた混ざっていた。


「はぁー、たいしたパフォーマンスですね」


「……ずっと戦いから身を引いていた。だからウチが無理やりあの頃にに引き戻してあげる」


「あの頃にですか……」


 双花は静かに目を閉じると過去の事を思い出していた。結、双花、そしてアノ子の三人で鍛錬した日々を。


「わかりました。これからが私の全力です行きますよ?」


 目を再び開いたその輝きはさっきまでよりもより一層光り輝いていた。


 結と双花、二人の本当の戦いが始まった。












 二人の攻防はまさにSランクを超えた超人同士の戦いだった。


 結は二丁拳銃を使い火速で双花を中心にして平面的な円状……ではなく立体的なドーム状に高速移動を繰り返しつつ交互に衝撃弾を双花を狙って撃ち込んでいた。


 双花はその膨大な量になる銃弾の全てを時には体を逸らしてよけたり両手でそれぞれ握っている二本の刀を使い銃弾を斬るという超人技を繰り出したりしてその全てを捌いていた。


「結、いくらやっても無駄弾ですよ」


 双花はまだまだ余裕があることを見せつけるかのように弾丸を切り裂く刀を二本から一本にして片手で全てを捌き切っていると結もまた無駄だと判断し攻略方法を変更することにしていた。


(まあ元からフルジャンクションだから威力が上がっているとは言え火速弾と衝撃弾だけでどうにかなるなんて思ってないけどな)


 結は飛び回るのをやめて地面に降り立つと回転弾倉を回し新たな銃弾をセットするとその二丁拳銃を双花に向けて引き金を引いた。


(弾を跳躍弾に変えてからの)


 弾牢。

 幻操術ではなく純粋な銃術による技。跳躍弾つまり壁などの障害物に当たった際に埋め込めれたりせずに跳ね返りやすい弾を使い弾丸と弾丸同士で複雑にぶつかり合わせまるで牢獄かのように対象の周りで跳躍させ続ける神技だ。


「なるほど……ですか」


 双花は自分の周囲に飛び回る弾丸の軌道を一通り全て眺め終わるとその軌道上に刀を置いた。


「その技はあまりにも複雑で繊細すぎます。だからこうして軌道上の弾を一発でも切り裂いて無効化することによってこの牢獄そのものが維持できなくなってしまう」


 軌道上に置かれた刀によって弾牢を作っていた弾が切り裂かれ無効化されたことによって抜群のバランス感覚で立っている積み木の塔のパーツを引っこ抜いてしまうかのように牢獄は崩れ去ってしまっていた。


(弾牢も効かないか……まっだろうけど)


「さぁ、次はどうしますか?」


 双花は立ち止まりながらまるで自分からはなにもしないからあなたの技を全てぶつけてきなさいとでも言いたげな挑戦的とも言える笑顔を見せていた。


「……それなら」


 結は再び火速弾を使って空中に飛び上がると双花の真上まで移動し新たに装填した弾を連続して撃ち込んだ。


(この弾は散烈弾。つまりそのひとつひとつが小さな爆弾とも言える玉を撃ち出す散弾。これなら避ける事は不可能。あまりの玉の数に全てを捌き切るのもまた不可能。さあどうするっ)


「散弾……でしょう?それなら」


 双花は二刀を腰に当ててまるで二刀流による抜刀術のような構えを取るとその刀身からそれぞれ多量の火と水が吹き出し始めていた。


『双花流、火水双舞(かすいそうぶ)


 双花は空中に向かってそのまま両手でそれぞれ抜刀術をするかのように振るうとそれぞれの刀身に纏わされていた火と水が螺旋を描くように混ざり合っていき結の撃った全ての弾を消し飛ばしていた。


 火と水の螺旋は弾丸を吹き飛ばすだけでは終わらずにそのまま空中にいた結に向かっていっていた。結は火速を使いそれを避けると双花から充分の距離を取った場所に降り立っていた。


「まだまだ終わりではないですよね?せっかく久し振りのデートなのですから思いっきり楽しみましょう?」


 双花はあまりにも美しい顔で微笑んでいた。


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