表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/358

8ー9 非常時感知タイプ


「さて、それじゃまずは近い方からだな」

「……近い方? どっち?」


 曖昧なことを言う楓に陽菜は若干の批難を込めて訴えた。声はすこし変わっているのだが、表情はいつもの無表情だが。


「会長たちの方だよ。それにしても、あの分身は本当に大丈夫なのか?」


 楓だけじゃなく、陽菜までもここにいる理由なのだが、最初は陽菜が二人に分身し、分身の方を変化させることによって、いないはずの楓がいるように見せかけるはずだったのだが、まさかの、


「……私も行く」


 という、陽菜の言葉によって、陽菜もついてくることになった。

 ちなみに、今【F•G(ファースト・ガーデン)南方幻城院なんとうげんじょういん】には本人合わせて合計三人になった陽菜の一人が楓の姿に変化し、分身の二人が本体の代理をしている。


「……大丈夫。アヤメの『分身』と違って、私は『分身』発動中でも無力になることはない」

「それじゃ、増えれば増えるだけ戦力アップってことか?」

「……そこまで便利じゃない。分身たちはまともに術を使えない。幻力のコントロール力が本体よりもだいぶ劣るから。それに、持っている法具までは増やせない。法具が無ければ幻操師は身体能力が一般人よりも高いだけで、ただの人。それに、本体にもそれなりのデメリットがある」

「デメリット? どんな?」

「……それは、ふわぁー」


 突然大きな欠伸をした陽菜に楓は目を大きく見開いていた。

 陽菜が人前で欠伸するのなんて初めて見たため、驚いたのだが、楓は何かに納得したように手を叩いた。


「なるほどね。それがデメリット?」

「……そう。分身の数が増えれば増えるだけ、眠たくなる」

「それは……厄介だね」


 幻操師といえで、心から生まれる力、幻力を集中無しで操ることは出来ない。

 幻操術とは、その大半が意識しなければ発動しないことなのだ。

 たまに、無意識で周囲に被害を出してしまうような()たちもいるようだが、それは本当に一握りであって、無意識で術を使うことなんて普通は出来ない。


 睡魔に襲われている中、幻操術を正しく正確に発動するのは難しいだろう。


「じゃあ、今の陽菜は術無しか?」


 楓は後ろに顔だけ向けて問い掛けると、陽菜はその問いに首を横に振った。


「……大丈夫、問題ない」

「眠い中、幻力コントロール出来るのか?」

「……出来る。がんばった」


 そう言って胸の前でぐっと両拳を強く握る陽菜は可愛らしかった。


「凄いな」

「……凄くない。そもそも楓だっていつも眠たそう。それなのに強い」

「ん? あたしか? あたしの場合はそうだな。平時は常に眠い代わりに、緊急時は目が完全に覚めるんだよな」

「……便利?」

「まー、便利っちゃ便利だか、いつも眠たいのは正直勘弁だな」

「……将来大変そう」

「ん? なんでた?」

「……好きな人といる時も眠たくなるでしょ?」

「……陽菜って、時々キャラがわからなくなるよな」

「……それはお互い様」


 セリフが自分のキャラに合っていないことが自分でもわかっていたらしく、陽菜はマフラーに深く顔を埋めた。そこからちらりと覗く耳は、ほんのりと赤く染まっていた。


「さて、そろそろもっかい感知してみるかな」

「……ん? 楓は常時感知タイプじゃないの?」


 常時感知タイプとは、そのままの意味で、目を瞑ったりと集中しなければ感知出来ない者とは違い、ノーモーション、ノータイムで常に感知出来る者たちのことだ。

 そもそも感知タイプが少ない中、常時感知タイプはさらに数が少ない。


「あたしが常時感知タイプだって一度でも言ったか?」

「……言ってないけど、楓ならなんとなく規格外だと思ったから」

「……陽菜? 若干日本語おかしいぞ?」

「……気のせい」

「あっそっ」


 楓は顔を正面に戻すと、両目ではなく、片目を閉じた。


 片目を閉じると、閉じたことで何も見えなくなった方に、まるでレーダーのようなものが映った。

 開いたままの目で現実を見たまま、閉じた目で感知した情報を見る。

 片目しか開いていないため、遠近感がおかしくなるものの、それは他の五感で補うことによって、常時感知タイプではないものの、感知している時は無防備という弱点を克服していた。

 そもそも大きさから距離なんて簡単に逆算できる楓に取っては片目なんて問題ない。


「……やっぱり楓は想像を超える規格外だった」


 楓が今やっているであろうことに気付いた陽菜は、ある意味常時感知タイプよりも規格外なことをしている楓に、内心ため息をついた。

 お気に入り登録や評価など、よろしくお願いします。

 これからも天使達の策略交差点をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ