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8ー8 騙された……



 六花が感じたらしい気配を追うこと約数時間。二人は気配の持ち主らしき者たちが入っていったであろう建物を発見していた。


「これって……」

「はい。明らかにこの世界のマスターが作ったとは思えませんね」


 二人が発見したのは和風の大きな屋敷だった。

 大きいとはいえ、それは普通の一軒家と比べればであり、麒麟のところにある城と比べれば小さい。

 それでも、どこぞのお金持ちが持っている、別荘ぐらいはあるだろう。


「この世界のマスター。まあ、つまり、夜月賢一学院長は洋風を好んでるし、和風のこの屋敷は十中八九……」

「そうですね。十中八九、新真理(リトゥルース)又は失われた光(ロストブレイズ)の者が作った建物ですね」

「……これ、作るのに何年掛かると思う?」

「さあ? 建築には疎いですし、そもそも幻操術のあるこちらの世界ではそれに合う属性の持ち主さえいれば、建物なんて数秒ですよ?」

「……それもそうね」


 会長は昔。六花と初めて一緒にクエストに出掛けた時のことを思い出していた。

 あの時のクエストは、既に二人ともSランクに相応しい力を持っていたのだが、それ相応の結果、成果を出していないため、Aランクのままだった頃だ。

 早くSランクになりたいという会長の希望で、学院長賢一から難易度の高いクエストを出された。

 内容はいつもみんながいたガーデン中央都市の壁外にある森。様々な種類のイーターが潜んでいるらしいそこに向かい、指定された範囲内にいるイーターを全て狩れというクエストだった。


 無闇に森を壊してはいけないというルールもあったため、イーターを探しては撃破というのを繰り返していのだが、指定された範囲がなかなかに広く、一日では終わらなかった。

 森の中なら雨も凌げるし、二人で行くのだからと夜は交代で眠り、野宿だと思っていたのだが、


「野宿? あぁ。そんな心配はいらないですよ?」


 という、六花のありがたい言葉を貰った後、森の中にあった少し開けた場所まで移動した後、六花が開けた場所に向かって手を翳すと、そこには見事な家が建っていた。

 もちろん、氷の家だ。


「……あなた、器用なのね」

「昔。上司にこんな使い方も出来ると教えて貰いまして、便利なので少々練習しました」


 と、そんな会話をしたのを覚えている。


「さて、これからどうしますか会長?」

「そうね……。さすがに正面からってのは不味いわよね?」

「そうですね。相手側に結が捕まっていると想定した場合、そんなことをすれば結が人質になる可能性があります。そうなれば結の生存は絶望的になりますね」

「……そうね。よくドラマとかでは人質がいらなくなったら開放することあるけど、この場合は結が敵戦力にならないようにってその場でトドメを刺す可能性も高いわね」

「……十中八九そうなるでしょうね」

「厄介ね」


 会長は手を顎につけて、視線をやや右下に向けて考え込んでいた。


「とりあえず、正面以外に入れる場所がないか探すわよ」

「了解しました」


 顔を上げた会長は六花にそう言うと、指でそれぞれ逆に向かうことを示し、会長は右回り、六花は左回りに屋敷の周囲を探ることになった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「なんか、馬鹿らしくなってきた」


 そう言ってため息をつく楓は、絶賛【F•G(ファースト・ガーデン)南方幻城院なんとうげんじょういん】の周囲に広がっている草原を凄まじいスピードで走っていた。


「……面白かった」


 そんな楓を後ろから追う形で、陽菜の姿もあった。

 口元はマフラーのせいで見えないものの、若干マフラーが動いていたので、その下ではニヤリとしたのだろう。


 どうして陽菜がアヤメのことを覚えているのか楓が問いただした時、陽菜は意味深な笑みを浮かべていた。

 その時、楓はもしかして、陽菜は裏切り者(・・・・・・・)なのではないかと思い、警戒した。

 しかし、実際には違かったのだ。

 ただ単純に記憶がなくなっていなかった。

 つまり、楓本人や六花、結のように、最初から記憶が無くなったりしていなかっただけなのだ。

 どうして記憶をあることを教えてくれなかったのか聞いたのだが、その答えは、


「……他に記憶がある人いるなんて知らなかった」


 らしい。


 ついさっきも、ニヤリと笑ったのはただなんとなくで、陽菜なりに楓()遊んでいたらしい。

 陽菜ちゃんは意外と腹黒だったようだ。


「……楓はみんなの場所わかるの?」

「まあな。あたしの感知力は規格外だからな」

「……それ、感知力だけじゃないと思う」

「……あはは」


 陽菜のつぶやきに楓は苦笑いを浮かべていた。

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