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7ー43 第五の接続、そして……


「サモン……ジャンクション?」

「そうじゃ」


 結は零から新しいジャンクションとやらの説明を受けていた。

 正直どうして今までは出てきてくれなかったんだという思いもあるにはあるのだが、そんな他力本願(?)じゃ良くないと思い、口にはしない結だった。


「過ぎたことは良いではないか」


 ……そっか。こっちの心の声は相手にだだ漏れなんだっけ……。


「まあよい。ついでじゃ。少々遅くはなってしまったが今お前様が扱える五つのジャンクションについて説明しようかのぉ」


 ……少々?


 若干批難の意を込めた結の視線に零は、どこ吹く風のやら、まったく気にしていないようだった。


「消費幻力が少ない順で良いかの。

 己自身に天使の力だけを接続する

力接続(セミジャンクション)』。

 力だけでなく人格まで接続する

人格接続(ジャンクション)』。

 人格に留まらず、姿までも接続する

幻体接続(フルジャンクション)』。

 複数の天使を同時に接続する

分割接続(ハーフジャンクション)』。

 そして、天使の体に接続し操る

召喚接続(サモンジャンクション)』」

「……おい。ちょくちょく気になる単語があるんだが?」

「む? そうかのぉ?」

「そんな風に可愛らしく首を傾げても誤魔化せないぞ」

「……ちっ」

「舌打ち!?」

「まったく。お前様は一体なにが気になると言うのじゃ?」

「残念ながら初っ端だぞ?」

「……むぅ。言うてみぃ」


 零はいかにも機嫌を損ねましたと言わんばかりに頬を膨らませながら頬杖をつく姿はぶっちゃけた話可愛いかったりする。


「……まず、天使の力ってなんだ?」

「……そこからとは予想外じゃの。わかりやすく言うのであれば今までお前様が幻人格と呼んでいた者たちのことじゃよ」

「……そ、そうか」


 なんだか引っかかる気もするのだが、零のことだ。あえてこんな風に言ったということは真実まではまだ語るつもりはないということだろうか。

 腕を組んで考え込むように目を瞑っていたは結が薄目を開けて零の顔をチラリと見ると零は未だに不機嫌そうな雰囲気を出しつつも小さく頷いた。


「……じゃあ次だ」


 次と言った瞬間に零がいかにもまだあるのかっと言わんばかりの表情を浮かべたのだが遠慮をするつもりは毛頭ない。


「天使の体に接続し操るってどういうことだ?」

「……まあ、当然の疑問じゃの。

 答えは至極簡単じゃよ。第四ジャンクションまではあくまでお前様の体をメインにして力を接続し、使っておる。対して第五ジャンクション『召喚接続(サモンジャンクション)』はお前様の体をメインにするのではなく、召喚した別の体にお前様の意識をジャンクション、つまり接続しておるのじゃよ」

「……『幻体接続(フルジャンクション)』はどうなるんだ?」

「『幻体接続(フルジャンクション)』も例外じゃありゃせんよ。

 『フル』はあくまで再構築したお前様の体をメインにしておるからの。天使の体を召喚しているわけじゃありゃせん」

「…………」


 ダメだ。理解出来ん。

 これは俺が悪いのか?


「ニハッ。それは仕方あるまい。一度の説明で理解出来る者が居ればその者の将来が楽しみじゃな」

「……はぁー。反復しろってことな?」

「じゃな。お前様には後でワシがみっちりと教えてやるからの。安心せい」


 ……なんだろう。この言葉に出来ない不安感は……。


「……失敬じゃのぉ」


 あっやべ。


「あっそうだ。『フル』と『サモン』の使い分け方を教えてくれないか?」

「むっ……。話を逸らしたの」

「言葉にはしていない。つまり話題にはしていないんだ。だから無罪だ」

「……はぁー。まあ良い。まったく、お前様と会ってからはため息が多いのぉ」

「幸せ逃げるらしいぞ?」

「……誰のせいじゃと思ってあるのじゃ」


 そう言って零はジト目を向けた。

 もう一度ため息をついた零はやれやれと首を振った後に話を再開した。


「そういえば。お前様は『フル』を発動したつもりが『サモン』を発動しておったの」

「……その通りだ」


 そこまでわかるのか。


「ふむ。あの子らとしてはお前様のことを助けるつもりじゃったのじゃか、裏目に出てしまったようじゃな」


 ……あの子ら?


「……こっちの話じゃよ」


 ……なるほど。つまり、今は詮索するなってことだな。


「お前様の願いはワシが叶えよう。あの子らにはワシから言っておく。『サモン』を発動したい時に限りそう願いながら合掌するのじゃ。そうすれば出て来ぬように手配しておくからの」


 話すとか、手配するとか。

 ……まるでそこに誰かがいるみたいに……。


「まあいいや。とりあえず今まで通り『フル』を使いたいなら『フル』と念じながらやりゃいいんだろ?」

「まあそうじゃの。『サモン』と念じなければよいぞ」

「了解。いろいろありがとな」

「当然のことじゃよお前様や。ワシとお前様を戦闘力で言うのであれば月とすっぽんの如くでワシが上じゃか。所有権、権利という意味ではお前様の方が上じゃからの。ワシはたとえ嫌だとしてもお前様の命令に従う他ないのじゃ」

「命令って……しないよ。そんなの」

「ニハッ。一体いつまでそう言っておられるのじゃろうな。今はまだ中学生じゃから大丈夫かもしれぬが、今後お前様が身も心も成長した後、こんなにも愛くるしい容姿をしておるワシを前に命令をせぬなんぞ保証は出来まい」

「……おい。それはつまりあれか? 俺がお前にそういう命令をするかもしれないってことか?」


 確かに零は可愛いい。確かに可愛いのだが……。


「言っておくが、幼女に興味ないぞ?」


 ロリコンではないのだ。断じて。

 確固たる決意を見せる結を見て、というより、その心を覗き見た零は、結の決意を知って楽しそうに笑った。


「ニハハッ。無駄じゃ無駄じゃ。お前様がいくら否定しようとその性癖は変わりはせんよ」

「……わかった。百歩譲って俺がロリコンだとする。いや、本当はロリコンじゃないぞ? あくまでこれは百歩譲っての場合だ」

「わかっておる。わかっておる。そのように何度も言葉にしなくともわかっておる」

「うっ……。その対応は癪だが、まあいいだろう。仮に俺がロリコンっぽいところがあったとしてもそれはガチのやつではなく、そうだな……例えるなら親が我が子に向ける感情のそれに近いな」

「……はぁー。お前様や。親が己の娘に対してそのような感情を抱いてはいけないとワシは思うのじゃが……」

「ちっがぁぁぁぁぁぁうっ!! そっちじゃねえ!! なんで今の会話でそういう流れになるんだよ!?」

「……む。じゃって、お前様はロリコンじゃろう?」

「だからそこからおかしいんだよ! まず前提を改めろ!!」


 零はまるで何言ってるんだこいつ、とでも言いたげな表情を向けていた。

 痛い。何が痛いかって?

 ……心だよ。


「ニハハッ。まあまあ。そうムキになるでない。それではまるでガチのように見えるぞ? ……ハッ! ま、まさかお前様はが、ガチじゃったのか!?」

「この野郎っ! なんだその小学生のノリはよ! 俺は普通だって言ってるだろ!」


 まったく……。話が進まない。


「ああ。そうじゃ。そろそろ頃合いかのぉ」

「頃合い? なんの話だ?」


 ふと空を見上げた零は目を細めるとそんなことをつぶやいた。

 さっきまでふざけているようだったのにもかかわらず、突然真剣な表情へと変わった零に結は不吉を感じた。


「お前様の身体に直接教え込もうと思うてのぉ」

「教える? 何をだ?」

「ニハハッ。そう怯えるでない。ただワシが直接お前様を調教するだけじゃよ」

「怯えるわ!! さりげなくやばいこと言ってんじゃねえぞ!?」

「はて? なんのことかわからんのぉー」

「あぁぁぁあっ!! お前と喋ってるとキャラが変わる!!」

「……そうじゃの」


 小さく微笑んだ零はふと立ち上がると結に背中を向けて歩いた。


「お前様や。ついてくるのじゃ」

「お、おいっ」


 零を追いかけるようにして立ち上がった結は一瞬後ろを振り返って結にそう言った後、待つこともせずに再び歩き始めた零の背中を追った。

 


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