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2ー13 お姉様?

 双花はごほんとわざとらしく咳払いをするともう一つの話とやらを切り出した。


「F•Gから教えて頂いた情報についてのこちらの検討が終了しましたのでお伝えしようかと思いまして。まず二回に及ぶガーデン内部のイーターの発生は人為的なものが働いているというのが我々の考えです」


 人為的なもの。

 つまりガーデンに入る事が出来るもの、幻操師がなにかしらの手段を使いイーターを召喚したということだ。


「ガーデンの中心部にはイーターの発生及び侵入を防ぐ結界があることは知っているだろ?」


 火燐の言う通りガーデンで学んでいるシード達に無駄な心配をかけないように中心部には結界が張られているがこれはそれぞれのガーデンのマスターが張っているものであり並みのイーターでは突破することができない。あの時発生したのは確実にその結界を突破するだけの力は持っていなかった。それが今回のことが人為的なものであると断定した理由らしい。

 生十会でも同じような会話をしていたため結達はその話に強い現実性を感じていた。


「それに発生したイーターの中には人型がいたと聞いたの」


 人型イーターはSランク幻操師と同等の力があるそれを個人で従えるのは正直な話無理がある。Rランクのマスターレベルならばそれも可能だがそれだけの実力があるのであればわざわざ人型イーターを従えずに無数のイーターを従えれば十分だ。

 もし戦争を起こそうとしているのなら無数のイーターで弱い者達を足止めし強い者は自分の手で直接やればいいからだ。


 そしてもし人型イーターを従えようとするのであれば最も現実的なのは


「組織レベルで動いてると思うべきなの」


「それって……」


「はい、これはあなた方F•Gだけではありません私達R•Gをも巻き込んだ、いえセブン&ナイツ全てを巻き込むほどの大事件になるかもしれません」


 人型イーターを従えているのであれば少なくともSランクの幻操師が数人いるだろう。それに人型があれだけとは思えないつまり相手にはSランクが少なくとも十数人はいると思ったほうがいいだろう。


 それに同じSランクとはいえ相性というものがある。それ以下のランクであれは相性が悪くてもどうにかすることが出来ることも多々あるがSランク同士の戦いではこの相性というものが凄まじく関係してくる。


 しかもこれは相手が少なくてという仮定だ。実際にはそれ以上の戦力があると思ってもいい。なにより今まで人型イーターを従える組織の話なんて聞いたことがない。


 それだけうまく情報を隠蔽していたのに今回は表沙汰に行動している。つまり戦力が整ったと思ってもいいだろう。つまり相手側は少なくてもF•Gと対等に戦える戦力を揃えたということだ。


「うわー、なんか話がすごい事になってる」


 双花の話を聞いて事の重大さに気が付いた桜はこの件に関して思いっきり当事者になっているからなのか落ち込んでしまっていた。


(桜は人型と実際に戦ってるからな)


 桜のことを心配そうにしている結に気が付いた桜は小さく「もう同じ失敗はしないから大丈夫」と呟くといつもの元気に満ちた笑顔になっていた。


「今私達が必要とするのは万が一敵に攻められてしまった場合対処できるように準備を整えることが重要です。ですので土屋さんはこのことをすぐにF•Gマスターにお伝えください」


 双花は一通の手紙を取り出して鏡に差し出すと今すぐいってくださいという双花の言葉を聞き、一礼すると即座にF•Gに向かって移動を開始していた。


「お二人にはR•Gの準備、つまりR•Gの生徒達の他園に対する認識を改めさせる作業を引き続き頼みたいのですが、事は急を要します。それにどうやらお二人ともアリスさんを含め二年一組の皆に認められたようですので次のステップに移っていただきます」


「次のステップ?」


 双花の言葉に対して思わず聞き返してしまった結に対して双花達三人は満面の笑みになると予想外のことを言った。


「はい、私達と模擬戦をしましょう」


「「はっ!?」」












 双花の爆弾発言の後詳しい話を聞いた結と桜は二人して大きく溜め息をついていた。


 どうやら模擬戦は最初から考えていたことらしくまずは仮入学によって一クラス単位で認められるように努力してもらいその後皆の前で模擬戦を行い全体に認めてもらう。これが双花の計画だ。


 しかも潜入するのはR•G全体でも数人しかいないSランクがいるクラスだ。その影響力は計り知れない。

 たった一日で二人とも認めてもらえたことに関しては予想外のことだったらしいがそれでもそれを利用しない手はないとの事で明日双花達との模擬戦をすることに決まってしまっていた。


「模擬戦って……それに相手が守護者とか誰か嘘だと言ってよぉー」


 双花の守護者の一人、春姫と模擬戦をすることになった桜は明日まで休息を取るようにと言われ自分の部屋に戻らずに結の部屋に来るとずっとうなだれていた。


「諦めろって……同情はするけど」


 桜にとってガーデンマスターとその守護者達は一緒にいるだけでも緊張してしまうような存在なのにその守護者の一人と模擬戦をしろと言われて慌ててしまっていた。


「ゆっちは火燐様が相手だよね?」


 もちろん桜だけでなく模擬戦には結も参加する。そしてその対戦相手もまた守護者の一人火燐だった。


「……あれ?ゆっちが女の子と戦うの見るの始めてだね」


 生十会の皆と会ってから戦ったのは最初の剛木、蟹型イーター、大蛇イーター、人型イーター。確かに今だにF•G(あそこ)に来てから女子と戦ったことはなかったが結はあははと苦笑いすると


「F•Gに来る前は良く戦ってたよ。化け物みたい強い奴らとさ」


「F•Gに来る前?」


 予想外の返事に思わず目を見開いて聞き返す桜に対して結は小さく笑いながら「まあな」っと誤魔化しながら立ち上がりR•Gの制服を二人分手に取ると「ほらっ学校行くぞっ」っと桜の分の制服を渡してちゃちゃっと自分は着替えると桜の「ちょっ待ってよぉー」と言う声と着替えているらしい衣擦れの音を聞きながらの部屋を出た。


 部屋の前で待ちながら両手を合わせR•Gの生徒、音無結花としての自分に意識を塗り替えていると着替え終わったらしい桜に置いて行ったことに対する愚痴を聞きながらもう一緒に居ても良いと考え二人で共に二年一組の教室へと向かった。


「おはようございますですわ」


「お、おはよう」「おはようございます……」


 教室に入るとそこには自然な笑顔のまま入り口のすぐ目の前で仁王立ちをしているアリスの姿があった。


 アリスの挨拶に(おはようございますですわって無理がないか?)と思いつつ桜は少し動揺しながら返事をし結に至っては完全にポーカーフェイスで静かにそして丁寧に挨拶をした。


「音無さん、少し話いいかしら?」


「……はい、わかりました」


「雨宮さん、少しお借りしますわ」


 いつも周りにいる取り巻き達がいないことに少し驚いたがアリスに指名されきっと前みたいな脅しではない事をアピールしているのだろうと思いつつ渋々承諾すると桜に小さく別れの言葉を残し二人教室から出ていった。


「ここで良いですわね」


 アリスに連れて来られたのはR•Gのあちこちに設置されている休憩場のような場所だった。

 他にも数人の生徒がお喋りなどをするために屯っていたがアリス達のただよらぬ気配を感じてなのかさっさと退場してしまっていた。


 最初は治安の悪い学校などで見られる「おいっちょっと面貸せよ」みたいな状況だと思っていた結だったが取り巻き達がいないことやアリスから今まで向けられていた敵対心や嫌悪感などを感じなくなっていたのでなんだろうと思っているとアリスに座るように指示されていた。


 テーブルを挟んで向かい合った状態で座るとアリスは罰が悪そうな表情になりいつもの凛とした態度とはうって変わって胸の前で両手をもじもじと動かすと綺麗な目を瞑って小さく「大丈夫ですわ」と呟くとカッと目を見開き堂々とした態度……では無く若干涙目になりつつ口を開いた。


「き、昨日の非礼を詫びますわっ!!」


「へ?」


 アリスの口から出た言葉は結の予想を裏切った謝罪の言葉だった。


「昨日、あなたと戦って目が覚めましたわ。私はなんて慢心していたのでしょう」


「えーと?」


 どうやらアリスは昨日の戦いで結の実力を過大評価してしまったらしく自分では手も出せないほどの大きな力を持っているのに自分の数々の侮辱に耐えていた心の強い立派な人間だと思い込んでしまったらしい。


「私は音無さん、いいえお姉様のことを心より尊敬いたしますわっ!!」


(お姉様っ!?)


 アリスのお姉様と言う言葉に動揺が隠せずあははと苦笑いしてしまう結だったがアリスのその純粋な眼差しを受けてなにも言うことが出来なくなってしまった。


(どちらかというとお兄様になるのか?)


 心の中でそんな事を気にする結だった。














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