7ー15 相川始
今回は短くなってしまいました。
ごめんなさい。
「まぁ、始の性格が悪いのは昔からよ。結、あなたならどうする?」
「そうだな。禁止されてるのは相手選手を攻撃するような術だけだからな。『カナ』のスピードで無理やり突破する」
「カナ? 確か拳銃を使ってる状態よね?」
「そうだ」
『ジャンクション=カナ』の時だけに具現化できる法具、『女神の二丁拳銃』を使った火速ならば、Aランクの始は無理だとしても【S•G】出身の他二名ならどうにかなる。
どうせ相手がこのまま同じ戦法でいくのであれば、幻力のチャージで動けなくなっている始以外からボールを奪い、点を入れるなんて容易だろう。
(相手にボールを持たせない戦法。逆に言えば、相手にボールを持たせることを怖がっているとも考えられるしな。つまり、始が攻撃に集中してるせいで、防御が弱点だ)
「そう。それなら攻撃は結に任せた方がいいかしら?」
「いや、せっかく三人とも火速が使えるだし、始以外の攻撃なら後手で防げるだろ? てことで、三人で攻撃だな」
「んー、それもそうね。桜もそれでいい?」
「おけおけー。ゆっちの作戦なら無条件降伏だね」
無条件降伏って、いろいろおかしいだろう。っと結がつっこもうと思ったが、どうせなんとなくだろうし、口にするほどのことでもないため、心だけにとどめていた。
試合は進んだ。その間、最初に危惧していたような、アヤメたちの奇襲は無く、至極平和な時間が過ぎていた。
しかし、結はそれが嵐の前の静けさのようにしか思えず、体に緊張が走っていた。
Aブロックでは始たち【S•G】が勝ち進み、Bブロック及びCブロックでは、無事に結たちのチームと、美雪たちのチーム、共に勝利を収めた。
そのため、決勝は仮称、始チーム、結チーム、美雪チームの、三つ巴となる。
結チームの三人は、選手控え室の一画にある、椅子に座り、自分たちの出番を今か今かと待っていた。
「思っていた通りの展開ね」
「だな。六花たちがやられた時点で、Aブロックは始たちが勝つと思っていたし、俺たちも無事に勝てた」
「美雪たちは負けるとこ想像出来ないもんねぇー」
桜はあははっと、苦笑を浮かべつつ言った。
「次は始たちとの試合だが、結局作戦らしい作戦は無しでいいのか?」
「付け焼き刃の作戦なんて始相手にはどうせ無意味よ」
「でも、驚かせることぐらいできるんじゃない?」
「二人とも、始が驚く姿想像できるの?」
「「…………ないな(ね)」」
いつもメガネを掛けてて、常に仏頂面を装備している男。始のイメージはそんな感じだ。
何かあって、普通なら驚く場面でも、くいっとメガネをあげる仕草だけして、表情は一切変わらない。
「なぁ。今思ったんだが、生十会ってクールキャラ多くないか?」
「んー、六花に、陽菜っちに、始っち、あっ……それに美雪っちもそうだね」
「こう、改めて言葉にされると多く感じるわね」
「なんでだろねぇー?」
「……好みじゃないか?」
「誰の?」
「……いや、誰かの?」
自分で言っておきながら、首をかしげる結に二人は、呆れ顔を浮かべていた。
「さて、そろそろだな」
「えぇ。勝つわよ」
「もちろんだねっ」
結たちは時間になり、アナウンスが流れたことで立ち上がると、真剣な表情でステージへの扉を開けた。
決勝リーグ第一試合は、Aブロック代表とBブロック代表の試合だ。
Aブロック代表、始たち【S•G】。
Bブロック代表、結たち【F•G】の二校による試合は、この大会において多くの注目を集めていた。
それもそのばす、本来であれば決勝リーグに出場するだなんて誰もが思っていなかった【S•G】と、【F•G】から【F•G】まで、計四校の中で、エリートガーデンとされている【F•G】、それも生十会の会長である神崎美希がメンバーとして入っているチームの試合なのだ。
一見すると反則に近い卑怯まがいのことをしているのだが、ゲームの終わりに見せる圧倒的な一撃によって、一種のギャップ効果によって注目を浴びた始たちに、いったい本物の優等生である神崎美希はどうするのかと、話題になっているのだ。
両チームがステージへ出てくると、同時に激しい歓声が会場一帯に響き始めた。
結はあまりの音量に顔を顰めているが、桜はぴょんぴょんと小さく飛び跳ねて、歓声をあげるみんなに手を振ったりと、ニコニコ楽しそうにしていた。
会長は背筋を伸ばし無い胸を張って、いつものように極々普通でいるように見えるが、その顔は嬉しそうに口元をあげている。
「久しぶりだな。会長」
「久しぶりね。始」
「手加減しないわよ?」
「当然だ。手加減したら怒りのあまりの手元が滑って会長に術を撃ってしまうかもしれないな」
「あらあら。随分と実力を落としたのね?」
「ふっ。言っておけ」
「お互い楽しみましょう?」
「そうだな。たが会長? ……勝つのは俺たちだ」
試合開始前の行う挨拶のために、コート中央へ集まると、挨拶として会長と始が互いに挑発し合っていた。
始は最後にメガネをくいっとあげると、後ろを向いて去って行った。
会長たちもまた、少し遅れて後ろを向くと、それぞれ自分の配置へと向かった。
そして、開始の合図が鳴った。




