2ー11 悔しさを力に
会場から全ての音が消滅していた。そこにいる誰もがその状況を正しく理解することができなかった。
幻操師にとってランクとはそのものの実力を指し示している。そしてランクは幻力使用可能量というものが大きく関わり今戦っていた二人にはそれだけを見てもSとF例えるなら小さな拳銃と戦車に乗せるような巨大な大砲のような本来なら覆るはずもない差があった。
その常識が今、目の前で粉々に打ち砕かれていた。
「……えっ……う、そ……」
「アリス様が……負け……た?」
このクラスのトップはSランクのアリスという少女だった。
このR•Gに在籍する生徒は皆自分に誇りを持っていた。R•Gこそ真のガーデン、私たちこそ最高のシード。そう思い他園の者を見下してきた。
他園にもすごい人がいることは知っていた。だから桜の実力を見て皆素直にそれをすごいと思い賞賛していた。だが今目の前にいるのは誰だ?
出会ってまだたったの一日、それしかたっていないがその子の才能の少なさは誰の目から見ても余りにも明らかだった。
しかし結果を見ればどうだ?
自分達の中でも一際目立った実力を持つアリスが負けた。
それは彼女たちにとって信じがたい……しかし、真実であった。
「先生」
「……あっ、えーとそうですね、この勝負、音無さんの勝利ですっ!!」
クラスメイト達と同じように目を見開き驚きの余りに我を失っていた生徒は結に声をかけられることによって自分を取り戻しそして今だに混乱しているような表情で結の勝利宣言をした。
勝利宣言が響き渡るとその言葉によってアリスの敗北を理解してしまったクラスメイト達は一人また一人とその場に座り込んでしまっていた。
「みっ、皆さん!?……あ、あれ?」
皆が座り込んでしまうという状況に焦った声を出す先生だったが先生もまた足に力が入らなくなってしまっておりその場に座り込んでしまっていた。
「先生、授業続刊は不可能の判断し今日のところは終了にしてはどうでしょうか?」
結は辺りを見渡すとクラスメイト達が暗い目をして座り込んでしまっている状況を確認すると無表情のまま先生に淡々と提案した。
「え、あ……そ、そうですね」
先生もまたこの状況で続行できるとは思わず、無理に続行した場合確実に怪我人が出てしまうと悟ると体に鞭を打って立ち上がると皆に解散の号令を出していた。
「アリスさん……」
「音無さん……」
誰一人として立ち上がろうとしない中結は敗北を悟った瞬間その場に崩れ落ちていたアリスに声を掛けていた。
「悔しいですか?」
「……なにをおっしゃっているのかしら?」
「Fランクに負けて悔しいですかと聞いてるんです」
「……」
アリスは結の言葉に返事を出すことができなかった。
悔しいか?そんなの悔しいに決まっている。格下だと思っていた他園の者に敗北するという現実。しかし一言悔しいと言ってしまえばきっと我慢できなくなってしまう。
きっと涙が止まらなくなってしまう。
自分は最強でなくてはならない。皆を支える存在でなければならない。
それがアリスの考えるSランクという才能を持ったものの責任だから。
「泣いていいんですよ」
「……なっ、なにを!?」
結は目の前で座り込んでいるアリスを優しく抱きしめていた。
抱きしめながらその綺麗な金髪の髪をなにも言わずただ、優しく撫でていた。
「う、うぅ……私は……私は……」
アリスは結の優しい抱擁に思わず弱々しい声を出すと自分から結に抱き付きそして静かに涙を溢していた。
「……れ、礼を言いますわ」
少しの間、結の腕の中で泣いていたアリスは泣き終わると恥ずかしそうに頬を赤くしながら立ち上がると正面からなんて恥ずかしくて言えないのか思わずそっぽを向きながら結にお礼の言葉を口にしていた。
「……それだけの力を持っていてどうして隠すのかしら?」
幻操師にとって力とは地位であり名声であり誇りでもあるアリスにとって自分の実力を隠すという結の行動が理解できなかった。
実際はただジャンクションによって一時的にブースターをかけることができるだけなのだかそんな事情を知るはずもないアリスは結がS相当の実力を持っていながらそれを隠しているのだと勘違いしているのだか。
「一体、何者ですの?」
アリスの言葉に対して結の返事はたったの一言だった。
「ただの劣等生だよ」
アリスとの模擬戦が終わりクラスメイト達の様子があまりにも授業に支障をきたすと判断した先生はその日の授業は終了ということにし皆、それぞれ解散し自分の部屋へと戻っていた。
「……疲れたー」
「お疲れゆっち」
結と桜の二人は結の部屋に集まっていた。話題の中心はもちろんのこと今日あった結と桜の潜入調査のこと、そして結とアリスの模擬戦についてだった。
「それにしてもゆっちって技の引出し多いよね」
結がアリスに勝ったことにこれっぽっちも驚いていなかった桜に結は内心驚いていた。
(……これが成長というやつか?……いや違うか……)
心の中で自分の言葉に自分でツッコミを入れるというわけのわからないことをしている結はソファーの上に寝っ転がろうとしていた。
「ん?どったのゆっち?……あっ膝枕をお所望かな?」
しかし隣に桜がいるために寝っ転がることが出来ずに桜にどいてくれと目で訴える結だったが桜はそれをどう受け取り間違えたのか今まで浅く座っていたのを深く座り直すと自分の太ももを両手でポンポンと叩いてそのまま結に寝っ転がるように要求していた。
ちなみにこのR•Gの制服はワンピース型なのだか丈の長いスカートが性に合わないのかこの部屋に来る前にF•Gの制服に着替えていた。
F•Gの女子用制服は二種類あるが桜が着ているのはブレザータイプでこの部屋は法具によって中々心地よい暖かさになっており桜はブレザーを脱ぎ上はワイシャツだけになっておりそのボタンがあろうことか第二ボタンまで空いており年齢の割には育っている胸の谷間が姿を覗かせていた。
これだけでも桜のことを異性として意識してしまうのにF•Gの制服にはある特長があった、それはスカートが短さだ。
短いスカートで深く座っている桜はなんというかその白くて綺麗な太もも露わになっていた。
(いやいやいやいや、流石にこれは生足の膝枕はアウトだろ……)
谷間を思いっきり見てしまい元々可愛い桜の事を異性として意識してしまった時に生足で膝枕なんてしようものならそれはなにかが危ないと結は悟っていた。
「ほらほらっ疲れてるんでしょっ!!」
「うわっ!!」
躊躇って中々膝枕をさせてくれない結に痺れを切らした桜はあろうことか結の頭を掴むと無理矢理膝枕をしようとするがそれがまずいと思った結はほぼ反射的に桜を止めるべく桜から顔を背けながら手を伸ばしていた。
ムニュ
「ん?」
「へ?」
(なんだこれは柔らかい……マシュマロみたいな……いい触り心地だな)
ムニムニ
結はその触り心地の良さに思わず何度も柔らかいなにかをムニムニと揉みながら自分がなにを掴んでいるのか確認するべく桜の方に振り向くとそこには恥ずかしそうに顔を真っ赤にし涙目の上目遣いで結を見つめる桜とその桜の中々大きくで柔らかく弾力性に満ちた胸を鷲掴みにする自分の手が見えていた。
「え……」
(おいおい、待て待て。俺はさっきからなにをしている?)
ちなみに今だに結の手はその触り心地の良いなにか……改め、桜の胸を丹念に揉んでしまっていた。
「ひゃっ、はぅー……ゆ、ゆっち?」
「わっ悪いっ」
思わず声を漏らしてしまう桜の姿を可愛いと思っていると涙目で名前を呼ばれた事で我に変えると鷲掴みにしていた手を離し怒られるのを待っていると
「え、……桜?」
桜は結の頭を優しく包むとそのまま自分の膝へと案内した。
「さっきのはまぁ……前に助けて貰ったからそのお礼ということで許してあげる。それにゆっちってば疲れてるんでしょ?」
桜は今だに赤い顔を向けながら自分の膝に頭を置いている結と頭を優しく撫でながら微笑んでいた。
(……それは反則だろ……)
桜の言葉を素直に受け入れそのまま桜に膝枕をしてもらっていると気が付けば結は眠ってしまっていた。
眠った後も桜はずっと優しく結の頭を撫で続けていた。
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