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7ー1 早朝会議

第7章、本編スタートです!


 六芒戦六日目。

 本戦初日が始まった。


「なあ。結。昨日のことなんて言う?」

「なにもなにも、あったことをそのまま言えばいいだろ?」

「鏡と剛木の二人をやったと思われる人物に遭遇。まんまと逃げられましたってか?」

「……そうなるな」

「殺されないか?」


 早朝。結と楓は共に会議室へと向かっていた。

 二人が朝から一緒にいる理由は簡単だ。昨日の夜に遭遇した女、アヤメについてなんて報告するかを相談するために、楓が朝早く結の部屋に訪れた……のではなく、

結のルームメイトである鏡が今は病棟で寝ているため、なんと楓は結の部屋に泊まっていた。


 言うまでもないと思うが、あんなことやこんなことは当然なかったぞ?


「「はぁー」」


 会長の性格からして、犯人と遭遇したにもかかわらず、みすみす逃げられたなんて知ったら、激おこだ。

 さすがに殺されることは無いにしても、待ち受ける罰ゲームを考え、二人は深いため息をついていた。


「おはよー」

「おはー」

「結さんに楓さんおはようございますですぅー」


 二人が会議室に入りながら挨拶をすると、先に来ていた真冬が挨拶を返した。


「他はまだみたいだな」

「そうですねぇー。この時間はまだみんな来ませんよぉー?」


 真冬以外に誰もいないため、結がぼそりと呟くと、真冬はクスクスと笑いながらそう言った。


 確かに今の時刻は会場の三○分前だが、これくらいなら他にもいてもいいんじゃないだろうか。っと結が思っていると、ガチャリと音を立てて、結たちの背後からドアの開く音が聞こえた。


「あら。真冬ちゃんはいつものことだけど、二人とも早いわね」


 そう言って現れたとは、生十会会長こと、神崎美花だった。


「真冬はいつもこの時間なのか?」

「はいですぅー」


 会長の言葉から、結が真冬に確認すると、真冬は嬉しそうに頷いていた。

 少し遅れたが、結たちは会長とも朝の挨拶を交わすと、それぞれ既に指定席になっている自分の場所に座った。


「おはようございまーす」


 次々と他の選抜メンバーたちが現れる中、会長は持ってきていた資料らしき紙の束を、ずっと見続けていた。


「会長。それなんだ?」

「これ?今日から本戦だからね。ルールとか、作戦とかの復習よ」


 結が軽い気持ちで聞くと、会長は見ていた資料を手にとって、それを結に見せると、再び読み始めていた。


「会長にしては真面目だな」

「……その言い方、ちょっと気になるのだけど?」

「気のせいだろ?」

「それならいいけど」


 会長はやはり引っかかるのか、納得していないようだったが、それよりも資料を読むことの方が優先事項が高かったらしく、再び資料を読み始めていた。


「あっ、そうそう。後で会長に報告することあるから」

「報告?焦れたいわね。今しなさいよ」

「みんなにも伝えるべきことだからな、みんなの前で言うよ」

「そう?まあ、そう言うならわかったわ」


 さて、これで報告しない手はなくなった。

 ちらりと楓に視線を向けてみると、罰ゲームのことを考えたのか、憂鬱そうに表情をゆがめていた。


 ……まあ、俺もなんだが。


 結たちが会議室入りしてからニ○分ほど経つと、既にほとんどのメンバーが集まっていた。


「みんなおはよー」

「桜、遅かったわね」

「遅かったって、まだ一○分前だよ?」

「あら、あたしは三○分前からいるわよ?」

「別にそんな早く来たからってえらくないからね?」


 桜が来たことで、これで来ていないのは鏡と剛木の二人だけなった。

 二人はまだ病棟にいるはずだから、この会議には参加しないだろう。

 六花は桜が座るのを確認すると、立ち上がり、会議を始めた。


「予定よりも少し早いですが。揃ったようなので朝の会議を始めます」

「ちょっと待てぇぇぇいっ!」


 六花がそう言って会議を始めようとすると、まるで道場破りが来たかのようなテンションの声と共に、扉が大きな音を立てて開いた。


 その扉の先に居たのは、


「あら、鏡に剛木じゃない。参加するの?」


 まだ病棟で安静にしているはずの鏡と剛木の両名だった。

 会長は二人の登場に意外なことに、結構冷静にことを進めていた。


 二人が現れたことで、何故か桜が気まずいそうにしていたが、何故だ?


「鏡に剛木、大丈夫なのか?」

「ああ。当たり前だろ?どっかの誰かさんにやられた程度で参加できなくなるなんて恥だな」

「……剛木は?」

「ガハハ。俺も問題ないぞっ!

俺も鏡も既に六芒戦に参加は出来んが、会議に参加するくらいはできるっ!」

「……そうか」


 片腕を無くすという、重傷だと言うのに、笑ってそんなことをいう剛木に、結は心がざわつくのを感じた。

 鏡も鏡で、剛木ほどではないが、それなりの怪我だったはずだ、それなのに会議に参加する二人に、結は思わず心打たれていた。


「わ、わかりました。それでは二人とも座って下さい」

「あっ、悪りぃ」

「ガハハ、すまない柊」


 六花も二人が現れたことに思うことがあるのか、動揺しながら二人に早く座るように促すと、二人が自分の席に座るまでの間、ふぅーっとため息をついていた。


「さて、改めてこれより朝の会議を始めます。会長、どうぞ」


「みんなっ今日から本戦が始まるわ。

 中には予選で負けて、もう出番がない生徒もいるようだけど、あなたたちも選抜メンバーの一員なのだから、他のメンバーのサポートをよろしく頼むわ」


 六芒戦は一競技につき、九名が参加するのだが、複数の競技を掛け持ちすることが出来ることもあり、ほとんどの枠を生十会が埋めてしまっている。

 生十会メンバーはほとんど二つ以上の競技に出るのだが、他のメンバーはそうではない。大抵一競技なのだ。

 そのため、昨日までの予選で敗退してしまえば、もう出番がないのだ。

 【F•G(ファースト・ガーデン)】の各競技での勝利数は高いのだが、負けてしまった試合も当然あるため、ここにいる選抜メンバーでありながら既に出番がない生徒も続出している。

 そんな生徒たちに、会長はそう優しく微笑ま掛けると、そんな会長の笑顔に応えるようにして、はいっと大きな返事が聞こえた。


(資料をあんなに読んでたのは敗退したメンバーを正確に覚えるためか?)


 今の会長は明らかに敗退したメンバーに向けて笑顔を向けていた。

 勝ちのためなら抜け目がないと言いたいところだが、確かにこのまま何もせずに残りの六日間を過ごさせるよりも、効率的であり、何より敗退した生徒たちにとってもいいだろう。


「今日からの本戦では、この六芒戦に参加する各校から大勢の生徒が見に来ます。

 それと同時に、今まで使っていた予選会場ではなく、一つ一つ孤立している本戦会場となりますので、間違えのないように」


 予選は同時に複数の試合を行うために、体育館のような場所で一気にやっていたのだが、本戦は観客も入るようになるため、専用のコロシアムのような場所で行われる。

 既に【F•G(ファースト・ガーデン)南方幻城院なんとうげんじょういん】内の地図は全員に資料として配られているため、迷子になることはないと思うが、会場を間違える可能性は高い。そのための確認だろう。


「本戦は午後からとなりますので、それまでは各自体を休めるなど、ご自由に。

 ですが、スケジュールは全てお手元の資料にありますので、各自自分の出番が何時からなのかは確認して下さいね?」


 会議を始める前に配られた資料には、この本戦六日間の対戦スケジュールが書かれていた。

 どうやら一回戦が始まるのは午後一時、時間はまだまだ余裕だ。

 結は今日本戦が行われる【キックファントム】では既に敗退しているため、出番はないのだが、確か【キックファントム】は桜、陽菜、雪乃の三人と、生十会外メンバーの風魔、服部、藤林の三人が参加する筈だ。

 しかも、どうやら一回戦から桜たちのチームが出番らしい。相手は【F•G(フォース・ガーデン)】のチームらしいが、桜たちの様子をどうなのか気になり、まず桜に視線を向けると、


(なんであんなにテンションが低いんだ?)


 とうの桜といえば、鏡と剛木と二人が現れてから、ずっと元気がない。


「桜大丈夫か?」


 さすがに心配になった結が、立ち上がり桜の肩に手を乗せながら聞くと、手を乗せた瞬間、桜はビクンッと震え、恐る恐るといった風に、ゆっくりと振り返った。


「ゆ、ゆっちどうしたの?」

「桜は一回戦から試合だろ?それにしてはやけにテンションが低いからな。気になって」

「そ、そうかな?あたしはいつも通り元気元気だよ?」


 桜はそういうと、両手を胸の前で気合いを入れるような仕草をした。


「何かあったのか?」

「え?と、突然なに?」


 あまりにも今の桜は不自然だ。昨日の夜、アヤメに襲撃された結からすれば、桜のもとにも何かあったのかもと思い、心配するが、桜は何も言いわしなかった。


「……桜」

「そ、そんなに見詰めないでくれるかな?」


 結は言葉で聞き出すとは無理だと悟り、桜の目を真っ直ぐに見つめることにした。

 案の定、真っ直ぐ見つめられ桜は明らかに動揺している。これで何かを隠していることは明らかだ。


「桜。隠すな」

「う、うぅー」


 トドメとばかりに、真剣な表情と真剣な口調でそう言うと、桜は顔を真っ赤にすると、バッと立ち上がった。


「おっと」


 結はぶつからないように桜が立ち上がった瞬間に、半歩下がると、桜はそのまま、何かを話している鏡と剛木と元へと歩いて行った。


 桜の行動の意味がわからず、結は疑問符を浮かべると同時に、桜の意図を探るべく、桜の後ろからついて行った。


「鏡、ちょっといい?」

「あ?お、おぉ」


 どうやら用があるのは二人じゃなくて、鏡だけだったらしく、桜は真剣な表情で鏡を呼んだ。

 桜のただならない雰囲気を感じ取ったのか、鏡は緊張した顔で、体に余計な力が入っているようだった。


「鏡、ごめんっ!」


 桜はそう言うと、同時に頭を深々と下げていた。


「……はっ?」

7章第1話はどうでしたか?

7章からは少し文の構成が変わります。

最初は読み辛いと感じてしまうかもしれませんが、ご理解のほどよろしくお願いします。


これからも天使達の策略交差点の応援、よろしくお願いします。

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