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1ー2 出会い

 結と桜は他に三人の男女を誘い五人でガーデン内にあるカフェにきていた。

 たくさんの生徒が同時に使うことと依頼を受けた際グループで内密に相談することを想定しており千人以上の生徒を同時に受け入れられることのできる大部屋と十人前後が入れる小部屋が無数にある。

 結達は無数にある小部屋の一つを借りていた。


「さて、改めましてあたしは雨宮桜ランクはAだよ」


  幻操師は皆がそれぞれの実力を表すため数字とアルファベットが与えられている。

 生徒手帳と一緒に渡されたカードはステータスカードと呼ばれそこに書かれてあるローマ数字とアルファベットによってその者について多少わかることがある。

 このローマ数字はその幻操師の資格を表すものでクラスと呼ばれ下から3rd(サードクラス)2nd(セカンドクラス)1st(ファーストクラス)、の三つがある。

 1stは資格の中でもトップクラスで特に実力のある者にしか与えられてない。

 結がもらった3rdはガーデンに入学している間もらえる資格で最低限の権限しかもたず。

  2ndはガーデン卒業後にもらえる資格で在校生は2nd獲得に向けて日々訓練している。

 そして1stは資格の中でもトップクラスで特に実力のある者にしか与えられていない超一流だけのもので幻操師界における一種の貴族の様な扱いをうける。

  資格は幻操師として活動するのに必要なものであるが最上資格である1stは次元が違う、貴族と例えたがそれは比喩ではなく1stの幻操師は個人で国に喧嘩を売ることのできるような超人のことであり幻理領域において圧倒的な権限を持っている。

 そしてもうひとつそのものの実力や才能を示すものとしてランクがある。これはガーデンで定期的に行われる計測によって出た数値と実績によって決まり、上からX.G.R.S.A.B.C.E.D.E.Fの十一段階ある。とは言ってもX.G.Rは世界で数人しか確認されておらず基本的にはAからFの七段階だ。

 一般的にCから一人前と言われている。

 Eが最低限の力を持っている証となっている。

 桜のAというランクは中学生でありながらすでに卒業した者達と比べても負けないぐらいか十分勝てるほどの位置に達しているということだ。


「おっなかなか驚いてるね」


  桜はイタズラが成功した子供のように笑うと自分のステータスカードを結に見せ付けるかのよう取り出した。

  そこには桜の発言通り、Aの文字とローマ数字のⅡが書いてあった。


(ん?Ⅱだと?)


「あはっその顔気が付いた? 気が付いた? あたしはすでに2ndの資格、貰ってるんだ」


  桜は無邪気に笑うとステータスカードをしまった。

 笑いながら話す桜だが、たった今桜が言っていることは実際とんでもないことだったりする。

 だってつまりは中学生なのに高校の卒業資格を既に持っているような、そんなレベルだ。


「じゃっ次は真冬ちゃんいってみようか?」


  桜が次に推薦した少女は白銀の雪のような長い髪をうなじの近くで二つに結んだこれまた雪のように白い肌をした桜よりも小柄でセーラー服を着た美しい少女だった。


「えぇーと、そのぉ日向真冬ひなたまふゆです。ランクはBを貰ってますです。よろしくです」


 真冬はどうやら内気でまるで白うさぎのような印象を受ける少女だった。

 自己紹介をしているだけなのに恥ずかしいのか頬は微かに赤くなっていて目元にはキラキラとした涙が少し溜まっていた。


「次は僕かな?僕の名前は日向春樹ひなたはるきランクは真冬と同じでBだよ。あっ真冬とは兄妹で僕が四月生まれで真冬が三月産まれなんだ。よろしくね音無君っ」


  春樹はブレザーを着て髪は黒で長さは長過ぎず短過ぎず、身長も同じくで言い換えるとなんというか普通だ。

 顔立ちは妹の真冬と違いこれといった特徴もなくイケメンでなければブサイクでもないその姿はまるでモから始まりブで終わる二文字のキャラクターのようだ。


「……あの、なんとなく酷いこと言われた気がするんですけど」


 ……うん。


「……次は私……」


  最後に残ったのは肩に掛かるくらいに伸ばした黒髪を後頭部で纏めた俗にいうポニーテールしている少女だった。


「……私の名前は宝院陽菜ほういんひなランクはAよろしく」


  陽菜は眠たそうな目をしていて首にはマフラーを巻いている。制服はセーラー服をきていて元々短いスカートをさらに短くしてよくみると右側と左側に切れ込みがあって白くて綺麗なふとももが姿を覗かせていた。

  四人中、二人がAランク、残りの二人はBランク。

 桜に至ってはすでに2ndだ。

 四人とも一人前以上の実力を持っているのだろう。


(凄まじいグループに興味を持たれたものだな)

「それじゃ最後にいってみようか?」


  桜は結に目で自己紹介をするように催促した。

 この中で自分のランクを晒すのは躊躇う気持ちもあるが四人はすでに明かしており言わない訳にもいかないことは火を見るよりも明らかだった。


「俺は音無結、ランクはFだ」

「「「「えっ?」」」」


  本来ランクはEが最低限のラインになっている。

 しかし結のランクはF、Eの下。

 これが意味すること、それは。

 幻操師にとって絶望的な非才。

 劣等生だ。

 ランクは定期的に行われる計測とは幻操術を扱うのに必須とされる力の源、幻力の体内使用可能量と幻操術を扱うのにこれまた必須の式と呼ばれるものを刻むための心の無意識領域と呼ばれる所にある幻操領域の規模だ。

  幻力使用可能量が少なければ術の多用が出来ず、又レベルの高い術の使用ができない。

 そして幻操領域が小さければどれだけ幻力使用可能量が多くてもレベルの高い術の式を刻むことができない、つまり用意することができない。

 ランクは一人前とされるC以上はこの数値だけでなく実積や実力を示さなければならないがD以下のD.E.Fはこの数値によって決まると言ってもいい。

  つまりFランクとは強力な武器はおろか最低限の武器さえ用意できず最低以下の武器を連発することもできない幻操師界における圧倒的弱者だ。

  驚き過ぎて固まってしまった四人に対して結は自分のステータスカードを見せることによってとどめをさした。


「えぇーとその、あまり落ち込まないでくださいです?晩熟型なだけかもしれないですし」

「だっ大丈夫ですよっ!きっと僕が虫けらみたいな幻力とミジンコみたいな式で発動できる幻操術を開発してみせますからっ!」

「……どんまい……」


  真冬はオロオロしながら自分のことのように若干泣きながら、春樹もさりげなく酷いことをいいながらも優しげに、陽菜に至っては一言だけど結のことを励ましていた。

 ただ桜だけはいつもの明るさが消えその目には真剣な眼差しをしていた。


「えーと、励ましてくれてるとこ悪いが別に俺はなんとも思ってないぞ?……なんたってこれは仕方が無いことだからな」


  結が明るげに言うと皆安心したのか落ち着きを取り戻していた。

 いつの間に誰知れず桜もいつもの明るい桜に戻っていた。








  その後結は四人からF•Gについて色々と教わっていた。

 今後の日程などもなんとなく教えてもらい、気が付けばただの雑談会になっていた。

 元々親睦を深めるための会だったため結果オーライだろう。


「そういえば音無君はA•G(エンジェルガーデン)のことは知ってますか?」

「A•Gと言えばあれですよね?約三年前から二年間程度活動していたというグループ」


  春樹の問いかけに真冬が代わりに答えると話の中心はそのA•Gになった。

  聞けば聞くだけ妙な話だ、たった二年間だけ活動していたらしく片っ端から依頼を受けては一切の依頼料を受け取らなかったらしい。

  その特異性から当初は話題によく持ち上がり、様々な噂が流れたがどれも確証はなく目撃者からの情報から幾つかのことだけがわかったらしい。

  まず、構成員の全てが美しい少女で構成されているらしく、トップと思われている少女はまるで女神の如く凄まじい美しさと可憐さをほこっていたらしい。

  人数は多いいわけではなかったがその戦力は世界でもトップクラスであり、依頼経過を見ていた人曰く、個人個人の実力も圧倒的だったがなにより連携が完璧であり、軍隊のごとく統率性があったらしい。

  女神を頂点として動く美しい少女達はまるで天使のようでいつしか女神のことも大天使、天使姫などと呼ばれ、ただのパーティでありながら天使の庭、A•Gとまで呼ばれるようになっていた。

 しかしたった二年間で姿を消してしまい、今ではかすかな情報も出て来ないらしい。

 一時は各地のガーデンが自分国の戦力に加えるべく探し回ったらしいが結局なにも成果をあげることなく捜索は打ち切りになったらしい。


「それにしてもA•Gってなんだったんだろうね」


  桜はイチゴパフェを食べなら気になる気になるとぶつぶついいながら足をバタバタさせていた。


「それにしてもカッコイイですよね。無償でどんな依頼でも受けるなんてまるで正義の味方ですよね」


  春樹はヒーローに憧れる少年のような目をしていた。

 まぁ年齢を考えればそういったヒーローのような集団をかっこいいと思うの普通のことかもしれないが。


「……不思議……」


  陽菜は相変わらずの無口キャラだった。


「……すぅー……すぅー……」


  真冬はすでに……眠っていた。


「あはは……、真冬ちゃんは春樹が連れてかえるとしてそろそろお開きかな?」

「そうですね、それではみんなまた明日」

「……バイバイ……」


 春樹はスヤスヤと眠っている真冬を抱っこすると去り際に振り向いて軽く頭を下げるとスタスタと歩き出していた。


「じゃあな今日は楽しかったよありがとな」


  最後に桜に今日のことについて礼を言うと


「あはっそんな風に言われると照れちゃうよ。それじゃあまた明日」

「また明日」


  そして今日はお開きとなった。


「また明日ーーーーー室でね」


  最後に呟いた桜の言葉は風の音に紛れてしまい結の耳に届くことはなかった。

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