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6ー46 六つの競技


 たとえ鏡がいなくとも、だからと言って他のメンバーに練習をさせない理由になんて当然ならない。


 一校につき与えられる時間は二時間だ。


 その二時間の間は全て会場の使用権利が与えられる。


 【F•G(ファースト・ガーデン)】でやったのは、その予選である六芒戦出場選手選抜試験簿を含め、その競技に必要とされる技術や能力の確認や、向上であり、実際にその競技をするのは初めてだ。


 基本的なルールは【物理世界】のサッカーだが、通常使われるサッカーボールとは違い、【幻吸玉(げんきゅうだま)】という、蹴った時の衝撃の威力によって、蹴った人物から幻力を消費させるという効果を持つボールを使う。


 衝撃の威力によってとは、つまり、ボールを強くければ蹴るほど消費させられる幻力が高くなるということだ。


 元々サッカーとは膨大なスタミナが必要なのだが、そんなボールを使うことによってそれをさらに消費させ、幻操師としての耐久力、スタミナを測り、尚且つ、消耗した状態でどこまで自分の体を器用に動かせるかを見る第一競技、【キックファントム】。


 バスケが元になっているのだが、元のスポーツの面影がありありと出ている【キックファントム】と違い、バスケの面影があまりない競技。


 その競技を説明するには、バスケのコートよりも一回り広い空間で、バスケットゴールの代わりに、サッカーのゴールが置かれている状態でやるバスケという表現が近い。


 バスケではボールを上に投げたり、ゴールまで飛び上がって直接ボールを叩き込むなどと、上からボールを下に落とさないとゴールには入らないのだが、サッカーのゴールを使用するため、横からただ投げ込めばいいだけだ。


 一見、バスケよりも簡単にゴールが出来る競技に見えるが、コートの面積の都合上、使われるゴールはサッカーのそれに近いとは言え、大きさはそれよりも小さい。


 幻力によって運動神経が上昇しているものが一人キーパーにつけば、それを突破するのは正直難しい。


 バスケというよりも、手でボールのやり取りをするサッカーっと呼んだ方がいいかもしれない。


 ただし、使われるボールはサッカーのボールではなく、バスケットボールを使用する。


 互いが互いのゴールにボールをシュートして、それをキャッチしてはリベンジをする。


 一ゲーム一○分の三セットの間、それを何度も繰り返すことになる競技、先にゴールされた方が負けになると言っても過言ではないため、高い集中力と、その集中力を持続させる力。


 そして、相手の防御を突破するための高い突破力。


 相手の攻撃に耐え得るための高い防御力。


 なんでも出来る者のスポーツとも言われるバスケが元になっているに相応しい競技である第二競技、【シュート&リベンジ】。


 テニスが元になっており、通常テニスはダブルス、つまり二人が最大だが、この競技では三人で一チームとなり、本物のテニスコートとほぼ形状が類似するコートでテニスボールのやり取りをする競技だ。


 しかし、これも他の競技同様にただのテニスではなく、一○秒毎に球が増えて行くのだ。


 全競技中、一番試合時間が短い競技なのだが、一ゲーム五分の二ゲーム制。


 一ゲームの内、四分が経過すると、その後はコート内の球が常に六球になるように増える。


 しかも、そのボールを打ち返す道具はテニスラケットではなく、先端が球状になっているロッドだ。


 このロッドは法具で中には単純な幻操術が一つだけ刻まれており、試合中に使っていい幻操術はそれだけだ。


 大量の球を目の前に、どれだけ迅速に、的確な判断を、そしてそんな状態でどこまで精密にコントロールできるか。


 それらを試す第三競技、【リターンフェアリー】。


 クリスタルのようにも見える、六角形のタイヤの無い車に三人で乗り、車の後部にあるジェットエンジンのような形状の法具に三○秒間三人で幻力を注ぎ込み、三○分経過後に、込めた幻力を使ってその法具を起動させ、込めた幻力を動力に推進力を生み出すジェットエンジン型法具の能力で、どこまで車を移動させることが出来るのかを競う。


 三○秒間という定まれた時間の間に、どれだけの量の幻力を体内から放出し、それをどれだけ法具に注ぐことが出来るのかを競う競技とも言える、第四競技、【トライチャージ】。


 三人の人物をA、B、C、とした場合。


 一直線にC、A、Bの順で並び、AがBに向かって専用の法具を使って球を打ち出し、Bはそれを専用のバットを使って打ち返し、Bが打ち返した球をCがどれだけ取れるかを競う。


 一ゲーム五分で、二セット行うが、成績が良い方を使い、二セット分の得点を足すわけではない。


 競うための得点は、Cが取った球の数から、Cが取り逃した球の三倍の数を引いたものだ。


 Aの使う法具は威力は低いが、込めた幻力が少し変わっただけでも、大きくスピードを変える。


 球速が急に変わればBはそれを正確に打つのが難しくなってしまうだろう。


 つまり、Aはずっと出来るだけ同じ量の幻力を法具に注がなければならないのだ。


 BもBで、どれだけ頑張ろうが、毎回同じ力を注ぎ込むことなんて出来るわけがないため、球速が毎回変わる球を正確に打ち返す技術、それを繰り返す高い集中力を必要とする。


 Cはグローブ型の法具を身に付けて球を取るのだが、取り逃がしの三倍がマイナス点になるため、自分に飛んでくる球をどれだけ取りこぼさずに取れるかが、重要だ。


 Aは球速を一定にすることに努め、Bはそれを正確にCが取りやすいように打ち返し、Cはその球を取りこぼさずに取る。


 その難易度は五つある団体競技の中でも、最高難易度とされている第五競技、【ショットバット】。


 そして、唯一の個人競技であり、最もシンプルな競技なのが、一対一の戦闘である、第六競技、【個人闘技(ファイトソロバトル)】だ。


 第一競技はサッカー、


 第二競技はバスケ。


 第三競技はテニス。


 第四競技はレース。


 第五競技は野球がそれぞれ元になっている。


 複数の競技に出場する者もいるし、全ての団体戦が同じ人とチームを組んでいるわけでもない。


 この二時間をどう有効に使うかを考えることも、ある意味六芒戦の競技の一つなのだ。


 一よりも前の競技、第零競技、【トリックタイム】……なんてね。


「さて、今日と明日。合計四時間を有効に使わなくてはならないのですが、各自に提出してもらった個々の出場競技一覧から最適と思われる時間配分を推理しておきました」


 六花はそういうと、一人ずつに一枚ずつ、ボックスリングから取り出した用紙を渡していった。


 用紙にはそれぞれ用紙を貰った選手の名前が書かれており、その下には一○分単位で二日分のスケジュールが書き込まれていた。


「これ、六花一人で考えたのか?」


「はい。そうですね」


「……お疲れ」


 ちらりと他のメンバーの用紙を見たが、どれも細かくスケジュール管理されている。


 驚くことはなにより、会場を貸し与えられる時間だけでなく、それ以外、会場設備が使えない時も、練習したいならばどういう練習をすればいいのか、などなど、練習パターンが一○個ずつ書かれていることだ。


 一人一人に合わせてここまで考えたのは並の努力ではないだろう。


 六花の苦労を考えて、結は六花に、労いの言葉をかけていた。


「何を言いますか。当然のことです」


 六花の言葉とは裏に、その表情は嬉しそうに、そしてどこか誇らしげにしていた。


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