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6ー39 再臨する雷鳴


 美雪の言葉は、結の胸を強く貫いた。


 結にとって、恩人であり、戦友であり、何より最も大切な人、奏。


 その奏が死んで現れた、瓜二つの少女、楓。


 性格は似てなんていない、似ているのは見た目、外見ただそれだけだ。


 だけど、結にとって、楓の隣は凄く心地よかった。


 結自身、その理由はわからない。


 ただ、心地良いのだ。


 でも、わからないなんて、嘘だ。


 気付いていた。


 美雪の言う通り、結は楓に、奏の姿を見ていたのだ。


「ごめーー」


「勝手に謝らないでくれるか?」


「えっ?」


 自分の心内が明かされ、結が楓にまず思ったのは、申し訳ないという、謝罪の思いだった。


 俺は君を見ていなかった。


 友人のふりをして、本当は君の姿に重なるアノ子の面影をみていたんだ。


 だから、謝りたかった。


 楓の言葉に、結はハッとした。


「結があたしだけどあたしじゃない何かを見てたことは気付いてたぞ?

結の過去に何があったかは正直気になるし、その、奏って子についても知りたい。

でも、結は言ってくれたよな?

教えてくれるって、話してくれるって。

そうだろ?」


「……あぁ」


「それならいいさ。

それに、今までは半分無意識みたいなものだったんだろ?

見た目が似てるなら最初の内は面影を重ねて見るのも仕方がないさ。

そんなで怒るほど、あたしは小さくないぞ。

舐めんな」


 楓はそう言うと、拳を結に突き出した。


「……そうだな。悪い、そして、ありがとう」


 結はその拳に自分の拳を合わせると、どちらともなく、笑い出した。


 そんな二人に微笑み掛けると、六花衆は静かにその場から引いた。


「……よかったのー?敵に塩を送っちゃってさぁー」


「そうですね。良くはないかもしれませんが、お二人の関係は早いうちに修正する必要がありましたので、これは仕方がないことなんですよ」


「あのことがきっかけで二人が仲違いしてしまえば、再び主様の心に傷が付くのだよ。

その危険を予め取り除くことこそ、私たち六花衆の仕事なのだよ」


「ご主人様との約束で、今だけの主従関係だとしても、ご主人様をご主人様として従っていられるこの時間は、ご主人様のために、ただご主人様のために私は動いていたのです」


「凄い忠誠心だにゃぁ」


 結と楓の元から離れながら、六花衆は会話をしていた。


 美雪の強い覚悟を見て、他の三人は苦笑していた。


 そんな三人に、美雪は首を横に降っていた。


「忠誠心などではありませんよ?

それはあなたたちも同じでしょう?」


「にゃ、にゃはは。一本取られたにゃぁ」


「言われるまでもないのだよ」


「美雪って良く恥ずかしげもなくそういうこと言えるよね」


 真顔でそんなことをいう美雪に、三人はさっきとは違う意味で苦笑した。





「あれ?あいつらどこ行ったんだ?」


「あれ?本当だ。そういえば、結局あいつらはなんなんだ?」


 結たちは六花衆がいつの間にかいなくなっていることに気付くと、楓は六花衆が誰なのか知らないため、首を傾げていた。


「あぁ。わかりやすく言えば、俺の昔のチームメイトかな?」


「……へぇー。成る程なー」


 楓は離れたところに見える六花衆の後ろ姿を見つめながら、意味ありげに瞳を輝かせた。


「結構いい奴らなのかもな」


「ん?なんか言ったか?」


「いいや。結には言ってないよ」


 楓にとって六花衆は生十会を襲っていた美雪の仲間という認識だ。


 今のやり取りが、結と自分の関係性を心配してからくる行動だと悟り、楓は六花衆への認識を改め、微笑んでいた。









 交流会の立食パーティーは進み、会場の至る所で、他校と話している生徒が多くなったころ、突然会場のライトが一斉に消えた。


「えっ?」

「な、なに?」


 突然ライトが消えたことで、会場にいる生徒のほとんどが戸惑いの声をあげていた。


「会長。これは……」


「安心しなさい、六花。敵襲とかではないわ」


 バスの一件もあり、何者かの仕業だと心配した六花に、会長は優しく語りかけると、安心させるように六花の肩をポンッと叩いた。


「それならば、一体これは……」


「あら、六花でもわからないの?」


「それはどういう……この気配、なるほど。そういうことでしたか」


 会長の微笑みに、六花は一瞬考える素振りを見せると、すぐに理解したような笑みに浮かべた。


「結、これは」


「大丈夫だ。問題ない。わかるだら?」


「ああ」


 結と楓の二人は、会長や六花、他にも会場にちらほらといる、特に高い力を持つ実力者たちと同じ一点を見つめていた。


「なるほど。これは嬉しい想定外だね。

まさか、今年はこれ程の豊作になるとわね」


 結たちが見つめた先から、声が聞こえたすぐ後、目に急激な光の変化によるダメージないように、ゆっくりとライトアップしたそこには、六人の人物が立っていた。


 そのうちの一人は、今言葉を発した人物であり、結にとっては命の恩人の一人。


 【F•G(ファースト・ガーデン)】のマスター。夜月賢一だった。


 賢一は何処かの探偵を思わせるような、インバネスコートに身を包み、ディアストーカーハット、通称シャーロックホームズハットを被っている。


 腰には昔からよく使っている、刀がぶら下がっている。


 その隣には、今紹介した夜月賢一の実の娘であり、【F•G(ファースト・ガーデン)】と友好関係を築いているガーデンの一つ、【R•G(ロイヤル・ガーデン)】のマスター、夜月双花の姿があった。


 双花は二つ葉の刺繍のついた水色の和服を身に纏い、そしてその腰には愛刀である二振りの刀が差されている。


 賢一と双花の隣には、それぞれ賢一側に男性、双花側に女性が立っており、その顔は見た覚えがある。


 たしか、【T•G(トレジャー・ガーデン)】時代に何度かあったことのある、賢一さんの右腕とまで呼ばれた人物。


 男性の方は雨里重次(あまりじゅうじ)


 賢一よりも少しだけ低いくらいの身長で、一般的には十分に長身だ。体型もスマートのため、正直羨ましい限りだ。


 いつも着けているメガネがトレードマークで、賢一の右腕ということもあり、賢一がこの格好から一部から『ホームズ』の二つ名を貰っていることもあり、その相棒、『ワトソン』の二つ名を貰っている男だ。


 もちろん、ただ賢一の腰巾着という訳ではなく、幻操師としての実力はピカイチだ。


 ちなみに、ホームズスタイルの賢一とは違い、重次は背広を着ている。


 女性の方は天雲遊佐(あまくもゆさ)


 女性だが、身長は賢一や重次よりもほんの少しだけ低いくらいで、ほとんど変わらないぐらいで、女性としては凄く長身な方だろう。


 スタイルは全体的にスマートで、女優のような美しい外見をしている。


 長い黒髪をそのまま流し、鋭い目付きをしており、元々の美しい外見もあいまって、怒った時はまるで般若のようになるそうだ。


 この人物もまた賢一と深い関わりがあり、賢一と同等の高い実力を持っているため、良く賢一のライバルとされ、賢一が『ホームズ』の二つ名を取ったことから、『ホームズ』のライバルなら当然それだろうということで、『モリアーティ』の二つ名を貰っている。


 もちろん。本人は『モリアーティ』の二つ名を良く思っておらず、本来であれば、戦争後は警察の新勢力として育成されている幻操師でありながらも、犯罪のナポレオンと呼ばれているその二つ名に、酷い嫌悪感を抱いているらしい。


 それぞれ、『ワトソン』は【S•G(サード・ガーデン)】の。『モリアーティ』は【F•G(フォース・ガーデン)】のマスターをしている。


 【S•G(サード・ガーデン)】のマスターこと『ワトソン』の隣には、【S•G(セカンド・ガーデン)】のマスターを務める男性がいる。


 彼の名前は渡辺織斗(わたなべおりと)


 織斗についてはあまり知らないが、その実力をかわれ賢一に誘われたらしい。


 元はマスター補助だったのだが、ちょうど前の【S•G(セカンド・ガーデン)】のマスターが急病によって幻操師生命をたたれたことで、新たなマスターとして二年前に就任したらしい。


 織斗は生気の抜けたような顔をしており、体も細身で、長身。悪く言えばガリガリだ。


 見た目からは強さを全く感じないのだな、マスターをやってる以上、その実力は高いのだろう。


 そして、六人目なのだが、その前に、六人の人物が現れた時、会場一帯が静まり返っていた。


 六芒戦に参戦する六校のマスターがいきなり現れたのだ、静まり返るのも仕方がないのだが、とある一帯は、違う意味で言葉を失っていた。


 その一帯とはちょうど【R•G(ロイヤル・ガーデン)】の生徒たちがいるところだ。


 そして、【F•G(ファースト・ガーデン)】の生十会メンバーもまた、その人物について知らない楓を除き、驚いている。


 あの時、直にその姿をお目にした桜なんかは、特に強い反応を見せ、顔を真っ青にしている。


(六校の内、一つは知らされていなかったが、まさか、こいつらとはとな)


 今思い返せば、この会場にいるのは彼女(・・)がマスターを務めるそのガーデン以外の生徒たちだけだ。


 おかしいとは思っていたが、制服から所属がばれ、むやみな抗争を起こさないようにしていたのだろう。


「いやいやー。久振りだね?だね?」


 そこにいた人物は、セブン&ナイツの一角であり、過去に、いや、過去と言うには近過ぎることだ。ごく最近、【R•G(ロイヤル・ガーデン)】に襲撃をし、そのマスターを攫った張本人。


 【H•G(ハッピー・ガーデン)】のマスター。


 麒麟の姿があった。

 


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