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6ー37 再会の火のお嬢様

 今回の新たな企画、六芒戦の会場である【F•G(ファースト・ガーデン)南方幻城院なんとうげんじょういん】についた選抜メンバーは、これから六芒戦の期間中泊まることになっている部屋に各自向かった。


 各メンバーはフロントでそれぞれ自分の身分を示すものであるカードを出し、引き換えにあらかじめ割り振られている部屋の鍵を受けとっていた。


「あーぁ、ゆっちと同じ部屋がよかったなぁー」


 部屋は男女で別れているため、生十会は男女チームと女子チームで分かれていた。


「桜?流石に男女で同じ部屋はいろいろと問題がありますよ?」


「わかってるけどさぁー。ゆっちってそういうの平気そうだし?」


「そ、そうですねぇ」


 真冬は前にイーターが首都内部で発生し、死にかけてしまった所を結に助けてもらった後、その身を結に捧げようとしている。


 あれは死を間近に感じたことで本能的に子孫を残すという欲求が増したための謂わば暴走のようなものだったのだが、その時の結の紳士な対応を思い出し、真冬は顔を赤らめると同時に目を泳がせていた。


 そんな真冬に気付いたものの、桜はそれを指摘することはしなかった。


「あっそうだ。楓もゆっちと同じ部屋が良かったんじゃない?」


「……どうしてだ?」


「だって楓ってゆっちのことーー」


「そんなんじゃない」


「……へぇー」


 桜はニヤニヤとした嫌な笑みを浮かべていた。


「なんだ。その顔は」


「さーねー」


「桜。いい加減にしなさいっ」


「痛ぁっ」


 会長は軽くテンションがおかしい桜の脳天に手刀を落とすと、はぁーっと深いため息をついた、


「それで結局楓は結のことをどう思っているのですか?」


 話が流れたと思った途端、話を掘り返したのはまさかの六花だった、


 六花が話を掘り返したことで、桜は目をキラキラと光らせ、真冬もよく見れば控えめだがワクワクしているようだ。


「はぁぁー、まったく」


 会長は逆に深いため息をついていた。


「それでどう思っているのですか?」


「……さあな。あたしはまだ会って時間が短い。この気持ちがなんなのかまだ測れないんだ」


「……ドキドキしますか?」


「……多少」


「一緒にいて楽しいですか?」


「……まあ、そうだな」


「はぁー」


「そういえば、楓ってばバスの中で大胆なことしてたよねぇー」


 桜はバスの出来事を思い出すと、片手を口元にあてて、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。


 その時のことを知らない会長と六花は「大胆なこと?」っと首を傾げていた。


「楓ってばバスでゆっちの膝の上に座ってたんだよぉー」


「なっなんですって!?ど、どういうことよっ!」


「座る所がなかったから座っただけ」


「自分の席があったでしょう!?」


「あたしの席はこの二人のお菓子に占領されてた」


 楓はそういうと桜と真冬を指差した。


 実際にその通りである二人は、真冬はあははっと苦笑いを浮かべ、桜は吹けもしない口笛を吹いて誤魔化そうとしていた。


 そんな二人を見て、会長はここに来て何度目になるかわからないため息をついた。











「結は女子部屋じゃなくていいのか?」


 女子チームと別れた男子チームは、結と鏡、剛木と春樹がそれぞれペアで泊まることになっている。


 とはいえ、部屋自体は隣同士のため、四人は一緒に部屋へ向かっていた。


 部屋に向かう途中、鏡と突然の発言に、結は面食らっていた。


「その言葉の意図は?」


「いや、結って俺たちよりも女共と一緒にいることが多いと思ってよ」


「いや、お前らとはそれなりに喋ってるだろ?」


「じゃあ生十会メンバー以外の男と話したことあるか?」


「……ないな」


 言われて見ればそうだ。


 結はあまり男たちと話した覚えがない。


「あっ、そういや二人だけ話したことあるな」


「へぇー、名前は?」


「名前?……なんだったけな。なんか忍っぽい名前だったような」


「そういえば、前に風魔君と服部君と会ってましたね」


「あーそうそうっ風魔と服部だっ!」


「……名前ぐらい覚えとけよ」


 春樹の助けで二人の名前を思い出した結に、鏡は呆れるようにため息をついた。


「そういえばあの二人も」


「グハハッ。風魔と服部なら選抜メンバーの一人だなっ」


「そうだったのか?」


「……結、お前……」


「いや、そんな驚くことか?」


「そうですよ鏡君。結君にとって他の男の子なんてかぼちゃみたいなものなんですよ。きっと」


 地味に一番酷いのは春樹だった。


「流石にかぼちゃって思ったことはないぞ?」


「そうですか?」


 そういえば、前にもさりげなく毒舌だったし、こいつ、モから始まるブじゃなくて、毒舌キャラだったのか!?


 春樹の無邪気な笑顔が、結は凄く黒く見えるようになった。


 まあ、白うさぎのような真冬と黒で対になっていいのかもしれないが。


「あっそれじゃ僕たちはこの部屋ですので」


「ああ、また後でな」


「はい、パーティーで会いましょう」


「グハハッ、ではなっ」


 先に春樹たちの部屋についたため別れると、結と鏡は隣の部屋へと入った。


「それにしても、二人部屋なんて豪勢だよな」


「そうだな。普通四人とかそれ以上だと思っていたんだな」


 部屋は二人部屋ということになっているのだが、六芒戦のために一年掛けて作られたこの施設は、中々にいいものになっている。


 部屋の大きさも二人では余るだろう広さがあるし、ベッドが二つにシャワー室、トイレもあって、ホテルの一室と変わりがない。


「悪いが、シャワー先に借りるぞ」


「あ?シャワーなんて入るのか?これからパーティーだぞ?」


「だからこそだろ?」


 これから夜に今回の六芒戦のために集まった六校での交流会という意味のパーティーが開催される。


 第一回の六芒戦のため、主催者である【F•G(ファースト・ガーデン)】のマスターは結構な額の資金をつぎ込んでいるらしく、パーティーの料理は、一流の料理人が作ってくれるらしい。


 交流パーティーと言われると、堅苦しいイメージがあるかもしれないが、服装はどこの生徒か一目でわかるように、制服が指定されており、男性陣としては、服を選ぶ手間がなくていいのだが、女性陣はせっかくのパーティーなのにオシャレが出来ないなどと、文句が多発しているらしい。


「さて、そろそろ行くか」


「そうだな。まずは春樹たちのとこよるか?」


「そうだな」


 シャワーが出た結は、ちゃっちゃっと着替えると、鏡を連れて隣の部屋に行った。


「あっ、結君に鏡君っ。もう行くんですか?」


「そろそろ行ったほうがいいだろ?」


「それもそうですねっ。剛木君呼んできますねっ」


 春樹たちの部屋をノックしようとしたら、ちょうど出来てきた春樹に行くことを伝えると、春樹はとことこと剛木を呼びに部屋の中に戻った。


「グハハッまかせたなっ」


「お待たせしました」


 剛木とともに戻ってきた春樹は、いつも通りの制服に身を包んでいた。









 生十会メンバーと共にパーティー会場入りした結だったが、個人的にあまりにパーティーのようなものを好まない性格をしているため、パーティーが始まるとすぐに会場の隅で、会場の至る所に置かれているソフトドリンクを片手に、会場に流れる音楽を静かに目を瞑り聞いていた。


「あれ?ゆっちってこういうの苦手なタイプ?」


「そういうわけじゃないけどな」


 そんな結に声を掛けた仲の良い女の子は、結の隣で背を壁に預けると、手に持ったソフトドリンクを飲んだ。


「桜はこういうの好きそうだが、こんなとこいていいのか?」


「まあ、こういうの嫌いじゃないけどさー、なんていうの?他校の男共に声掛けられるからさー」


 中学生でナンパをしていると聞いて、正直ため息が出る思いだったが、桜の容姿を考えれば声を掛けてしまうのも頷ける。


 中学生とはいえ、整った顔立ちと、明るく花を思わせる笑顔、赤みがかったショートの茶髪も、明るさを際立たせていて、空に浮かぶ星を思わせる可憐さを持っている。


「ゆっちはいいの?こんなとこいてさー」


「お久し振りですわね。雨宮さん。それと、お姉様?」


「あっ、アリス。久し振りだねぇー」


「久し振りだな。アリス」


 そこに現れたのは、結と桜が【R•G(ロイヤル・ガーデン)】に行った時に、いろいろとあった【R•G(ロイヤル・ガーデン)】の秘蔵っ子こと、Sランク幻操師、アリスだった。


「それと、俺は男だぞ?」


「ええ。知っていますわ。ですが、私にとってお姉様はお姉様ですので」


「はぁー、それでどうしたんだ?」


 認識を改めようとしないアリスに、結はため息をつくと、わざわざやってきたアリスに要件をきいた。


「要件という程ではありませんが、ご連絡ですわ。私は【個人闘技(ファイトソロバトル)】に出場しますわ。それと友人と他の競技にも出る予定ですわ」


「まあ、だろうな」


 六種ある競技の内、【個人闘技(ファイトソロバトル)】は純粋に個人の戦闘能力が試されるものだ。


 【R•G(ロイヤル・ガーデン)】の中でも、特に高い戦闘能力を誇るSランク幻操師であるアリスが出場するのは至極当然のことだろう。


 むしろ、これでアリスを出場させないのであれば、双花が正気なのか心配するほとだ。


「今回はそれを教えるために来ただけですわ。それでお姉様、雨宮さんごきげんよう」


 アリスはワンピース型の制服のスカート部分を少し掴み、本物のお嬢様のように挨拶をすると、そのまま足音も立てずに、その場から立ち去った。



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