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6ー35 走馬灯


 引き金が引かれる瞬間、結は寸前にカナをジャンクションすると、剛木と鏡、両名に向かう弾丸を撃ち落とすべく、二丁拳銃の銃口をそれぞれに合わせるが、


(間に合わないっ!)


 ジャンクションをするとどうしても一瞬の間が出来てしまう。


 出来てしまう間が一瞬とはいえ、弾丸を弾丸で撃ち落とすなんて、コンマ一秒のミスすら許されない、繊細なものだ。


 その間は致命的なものとなり、どう足掻いでも二人を援護することは叶わない。


「ねえねえ。あたしたちのこと忘れてる?」


「……不服」


 二人よりも早く、それぞれの車の上に乗り込んでいた桜と陽菜は、二人に向かって飛んでいた弾丸を見事、手に持つ得物で真っ二つに斬り裂いていた。


(あいつら、あんなこと出来たのか)


 弾丸斬りという、弾丸撃ち同様に超人技の分類である技術を当然のように行使した二人の少女に、結が感心していると、二人の少女はすぐさま次の行動に移っており、弾丸が斬られるというあり得ない状態に動揺してしまい、間を作ってしまった犯人たちの車に、車窓をぶち破ることで侵入すると、桜は糸剣、陽菜は苦無を、それぞれ一閃した。


「桜っ掴まれっ!」


 運転手を失い、ゆらゆらと揺れ始めた車から離れるべく、車の中に入った少女に手を伸ばし、引っ張り上げると、ただ運転手を仕留めるだけでなく、機関部そのものを壊していたらしく、背中に爆風を受けながらバスへと帰還した。


「グハハッ。助かったぞっ!」


「……当然のこと」


 剛木と陽菜も桜と鏡チームと同じようにバスの中に帰還していた。


「サンキュー桜。助かったぜ」


「はいはい。礼は後で一杯もらうから、それよりも」


 桜たちは目をギラリと光らせると、次は前にいる三両を仕留めるべく、行動に移そうとした瞬間。


「ちっ!このままじゃぶつかるわっ!」


 突然、前の一台が減速を始めていた。


(……あれはっ!)


「会長っ!どうやら車内に何かをまいているようですっ!」


「状況からしてきっとガソリンとかそういう類のものね」


「じ、自爆ですぅ!?」


「ええ。あたしたちを巻き込んでドッカンといくつもりようね」


 会長がどうするか思考を始めた瞬間、春樹が声をあげた。


「僕に任せて下さいっ!」


「どうするつもり?前の三台を凍させたり壊すだけじゃ破片でどのみちバスが壊れるわよ。そうなったら中にいるあたしたちも」


「大丈夫ですっ!ただ目の前に障害物があると考えればっ」


「……っ!そういうことねっ!わかったわ!許可するわ。やっちゃいなさいっ!」


「はいっ!」


 会長から許可を貰った春樹は、ブレスレット型の法具を起動すると、バスの前、出入り口部分近くまで前にいき、両手を合わせる、前へ突き出した。


「いきますっ!『嵐弾(らんだん)』」


「ちょ!?嵐弾っ!?」


 小さな竜巻のような球状の弾丸を前方に放った春樹に、桜は慌てた。


(前の車を破壊するだけじゃ解決にならないのにっ!)


 しかし、それを理解していない春樹ではない。


 どんなに春樹がモから|始まり、ブで終わりそうなキャラだとしても、選ばれし生十会の一員なのだ。


 春樹は『嵐弾』を車にではなく、前方の地面へと撃った。


 本来着弾と同時に、小さな竜巻を起こすその弾だが、春樹は『嵐弾』を調節することで、その爆発までに一瞬の間を作った。


 その空白の時間の間も、バスは走り続ける。


 地面にくっついた状態である春樹の『嵐弾』はその場から動かない。


 結果、自然とバスは春樹の放った『嵐弾』を通り過ぎようとしたその瞬間。


「みんなっ!衝撃に備えなさいっっ!」


 会長の叫びに、バスに乗った生徒たちは近くのものに捕まったその時、丁度バスのしたに来ていた春樹の『嵐弾』が竜巻を起こした。


「うわっ!」


 その竜巻はバスに下から上に向かって衝撃を与え、そして、バスは飛び上がった。


「くっ!」


 空中でぶれようとするバスの車体を、春樹は嵐属性の風によって支えていた。


 障害物があるのであれば、飛び越えればいい。


 それが春樹の考えだった。


 それは見事うまくいき、飛び上がったバスは、不利になり自爆をしようとしている前の車を飛び越えた。


「やったぁっ!」


「こらっまだよ桜っ!着地の衝撃に備えなさいっ!」


 全身に響くような強い着地の衝撃を乗り越えた後、会長が現状を確認すると、いつの間にか前方の左右にいた車も減速していたらしく、今ではバスの両サイドについていた。


 減速でタックル出来なかった前の車は、今は後ろにあり、今度は後ろから体当たりするつもりらしく、加速を始めていた。


「後ろなら問題ないのよっ!」


 会長が立ち上がり、愛剣を抜いて後ろの車に何かをしようとした瞬間、両サイドの車から銃口が伸びた。


 その標的は今立っている会長以外にはない。


「会長っ!」


 結が思わず会長に叫ぶと同時に、両サイドから銃の発砲音が響く。


「会長さんっ!」


 思わず真冬が涙目で叫ぶ中、発砲音のすぐ後、前の発砲音に重なるようにして、発砲音が響いた。


「真冬。安心しないさい」


「会長?」


 撃たれて倒れるどころか、無傷でいる会長に真冬が呆然としている中、会長はそんな真冬に微笑み掛けると、抜いた剣を両手で強く握った。


「燃え尽きなさいっ!」


 会長が両手で握った剣を上段から振り下ろすと、同時に太刀筋から爆炎が巻き起こり、その爆発は飛ぶ炎の斬撃となり、バスの後ろに一直線の傷を付けつつも、後ろから体当たりしようとしている車を一刀両断した。


 一刀両断にした炎の斬撃はその後大きな爆発を起こし、車は綺麗な花火となった。


「ふわぁぁぁあ。綺麗ですぅー」

 

 その綺麗な花火に、真冬が微笑んでいる中、結は次の行動に移っていた。


 会長が撃たれる瞬間、その前に鏡と剛木が撃たれそうになり、それを助けるためにカナをジャンクションしていた結は、今度こそ会長に向かう弾丸を弾丸によって撃ち落としていた。


 そして、すぐさまカナからルナへ交代(チェンジ)すると、二刀を構え、ストライクアウトでいう、六の場所の車へと突撃した。


 六の車の屋根(ルーフ)へ降りついた結は、二刀を振るい、車を細切りにした。


 最後に屋根(ルーフ)を蹴ってバスへと戻る中、空中で回転しつつ今度はルナからルウへと交代(チェンジ)する。


 そして槍を振るって六番の車の足元に幻操陣を描く、逃げ場のない空中にいて、六の車から反撃はない。


 既に相手は沈黙しているからだ。


 そして幻操陣を起動させて、車体の上半分がグチャグチャになっている六の車を完全に灰にした。


「結っ!」


 その時、確かに結は聞いた。


 会長の悲痛の叫びを、


 そして、見た。


 四の車から結へ向かった伸びる銃口を。


(あっ、やべ。忘れてた)


 結が焦る中、また声を聞いた。


「見ていられませんね」


 その声を。


「うわっ」


 結はそのままバス中に転がるように着地すると、今まさに自分を撃とうとしていた四の車を見た。


 そこで見たのは、


「遅れて悪かったな」


 楓の姿だった。

 

 


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