2ー6 R•Gの日常
ここR•Gでは国語、数学、理科、社会などの授業も行なっています。
それでは授業風景を見てみましょう。
まずは国語の授業から見てみましょう。
二年一組の一同は国語の授業をするために第二射撃場に集まっていた。
第二射撃場は弓道場のような形状をしており的までの距離は約五十メートルある。
「それでは幻操術の詠唱から始めましょう」
F•G生十会役員は皆、幻操師として平均以上にいるために幻操術を発動する際術名だけで実行できているが本来は術名の前に詠唱というものが必要になります。
この国語の授業では詠唱について勉強をしましょう。
「それでは最初にアリスさんにやってもらいましょう」
多くの女子生徒の中指名されたのはドレスの似合う金髪縦巻ロールの少女、アリスだった。
皆の視線が集まるなかアリスは堂々と前に立ち右手を上げそして右首につけた法具を起動すると詠唱を開始した。
「コテヒリ、ノムヒ、コア、ノニカヲ、ゾハ、コニレ『火操二番=火弾』」
アリスが詠唱を開始するとその手に光が集まり火操の言葉でそれが火へと姿を変えていき、二番の言葉で火がその火力と大きさを増していき最初はピンポン球程度の大きさでしかなかった火球は一瞬で膨張しバスケットボールほどの大きさまで膨らんでいた。
そして術名である火弾の言葉と同時に上げている手の少し前で静止していた火球が前方へとかなりとスピードで放たれた。
詠唱によって幻力を体の中から引き出し、操の言葉で属性を発現させ、番の言葉で規模を決定し、術名で発動する形を決め発動する。
上級者になると詠唱も操も番も唱えずに術名だけで発動している。
上級者でも操だけは唱える事が多い、元々詠唱は全部きっちりした方が威力も効率も良いが詠唱にかかる時間や手間を考えると実戦では操プラス術名が一番ポピュラーだ。
アリスの火弾はSランクということもあって同じ二番幻操で属性違いの氷弾、嵐弾を使っていた日向兄妹よりも一回りも二回りも大きかった。
アリスの火弾は的の中心に当たると爆発するように弾け飛んだ。
「はい、流石はアリスさんですね。次は誰にやって貰いましょうか」
「先生、私が推薦してもよろしいでしょうか?」
「そうですね、ならば今後は参加者が次の参加者を指名していきましょうか。それでアリスさんはどちらを指名するのですか?」
アリスは先生に提案し許可がおりると生徒たちの並ぶ列へと振り返りある人間を見つめた。
「音無結さんを指名しますわ」
アリスが指名したのは結だった。 今朝言っていた借りを返すとは弱いと思っている結にこの場で盛大に失敗してもらい恥をかかせようという魂胆であった。
とはいえここでうまく行けばそれはそれで実力を示すことになり任務を遂行することができ気に食わないアリスを驚かせることができ一石二鳥だった。
「わかりました。音無さん、よろしいでしょうか?」
「はい、わかりました」
結は指名されたなら仕方が無いと前に出ると両手首でクロスさせるように両手を前に突き出し構えると詠唱を始めた。
「コテヒリ、ノムチラ、コア、ノニカヲ、ゾハカ、コレニ『幻操二番=弾』」
結の操は幻操、つまり属性変化をさせていない無属性だ。属性変化をする方が難易度は高いのだが属性変化にはそれぞれ適性というものがある。
幻操師の幻力にはそれぞれ性質というものがありそれぞれ日曜、月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜と呼ばれそれらをまとめて七曜の光と呼んでいる。
誰もがこの七曜の光の内どれか一つに属しておりこの性質によって発動することのできる属性変化が変わる。
火操に分類される火弾を発動したアリスはあの威力からして火の属性が最も得意なのだろう、七曜の内火の属性に対して強い適性を持つものは火曜の光だ。
それぞれには適性属性以外にも追加効果のようなものがあり。
日曜と月曜は特殊なため後で説明するとしてまずは火曜の光は火を適性属性としており特徴はその術の強化。
水曜の光は水を適性属性としており特徴は被弾者の弱体化。
木曜の光は風を適性属性としており特徴は鋭さ。
金曜の光は雷を適性属性としており特徴は速さ。
土曜の光は土を適性属性としており特徴は硬さ。
強靭な肉体を得る剛木の身体強化は土曜の性質によって硬度を増した身体強化に対して桜の身体強化は火曜の性質による強化率を強化していた。
「え?」
誰の声だったのかはわからないがその場にはシーンとした空間が広がっていた。
それは結の発動した術があまりにも凄すぎて言葉を失ってしまったのではなかった。
「クスクスクス、流石平民ですね。属性変化をしていない基本術でさえまともに発動できないとわ、驚きましたわ」
結の発動した弾は的に当たるどころか外れることさえも無く的のある位置よりも遥か手前、発動位置から十五メートル程度ノロノロと飛んだだけで拡散してしまっていた。
(……基本術は苦手なんだけどなー、双花の奴忘れてるのか?)
幻操術は大きく分けて三つに分類される。
一つ目は基本術と呼ばれるものでこれは一般公開されており各自で調べればいくらでも調べることのできる最も一般的な幻操術だ。
二つ目は継承術と呼ばれるものでこれは一般公開されずに幻操師がそれぞれ個人で式の研究をし編み出した独自の幻操術だ。
これは開発者や開発者から直々に伝授された者から教わる事しか出来ないため継承術と呼ばれている。
これは基本術と比べると数があまりにも少ないがその分強力なものや特殊なものまである。
結の得意とする幻操術ジャンクションも結が編み出したものであるため種類で言えばこの継承術に分類される。
そして三つ目は固有術と呼ばれるものだ。
これは個人の経験や素質によって生まれる特殊なものであり継承術とはこの固有術と基本術を合わせて己以外の人間でも発動可能にした劣化版でありつまりこの固有術とその素質のある本人にしか発動することのできない選ばれた者だけの幻操術における奥義だ。
奥義であるが故にその力はあまりにも強く一番式でさえも基本術の三番や四番と同等、またはそれ以上の可能性を秘めている。
結はジャンクションを作る際に基本術の素質をほぼ完全に捨てている。つまりほぼ全ての基本術をまともに発動することができないでいた。
結は一瞬苦い表情になるとすぐに冷静な顔に戻ると桜達のいるところまで戻った。
「ゆっち?あれって……」
結ならすごいのをやってくれると信じていた桜は困惑した顔で結に問い掛けていた。
「私がFランクだということを忘れたのですか?」
「あっ……」
桜の耳元で呟くと完全に忘れていたようで苦笑いしていた。
「音無さん?次の方を指名してくださりますか?」
「……それでは雨宮さんを指名します」
結に指名された桜は「ですよねー」と呟くと手をぐっと伸ばしながら前に出た。
桜は袖からナイフ型法具を取り出すとナイフの切っ先を的に向けて詠唱を開始した。
「コテヒリ、ノムヒ、コア、ノニカヲ、ゾハ、コニレ『火操二番=火烈弾』」
桜はアリスが使った術と似た幻操術を発動するとバスケットボールよりも一回り小さい火球となって的に飛んでいった。
的に当たると同時に火球は大きな爆発を起こし狙った的だけでなく左右にある他二つの的さえも吹き飛ばしていた。
桜が発動したのは二番基本術の火弾の上級形、着弾と同時に火弾以上の爆発を巻き起こす幻操術だ。
Aランクである桜がSランクであるアリスと正面から張り合って勝てる訳がないだから桜は威力ではなく技術で張り合おうとしていた。
「す、すごーいっ!!」
パチパチパチパチ
桜が生徒たちの方に振り向くと同時に最初の敵意とはまるで違う好意的な歓声と共に拍手が巻き起こっていた。
「えっ、あれ?」
突然の歓声に動揺を隠せていない桜の前にアリスが近寄った。
最初から敵意しか見せていなかったアリスを警戒する桜だったがアリスはそんなことはお構いなしに桜の手を取ると今までとはまるで違う綺麗な笑顔になっていた。
「雨宮さん凄いですわっ!!失礼ですがランクを伺ってもよろしいでしょうか?」
「え!あ……うん、Aランクです」
アリスの豹変ぶりに驚きながらも答える桜に対してアリスは花が咲き誇るような笑顔を見せると桜のことを褒めちぎりだした。
(桜のレベルはここでも通用するらしいな……あれ?俺いらなかったんじゃ)
桜の様子を見て自分が女装してまで潜入する必要なんてなかったと思って結はさっきから視線でヘルプを出している桜にそのまま馴染めと目ばたきによるモールス信号で伝えるとなにがあっても自分のことは放置しろと伝えた。
(俺に構うとせっかく気に入られたのに無駄になる可能性がある。俺は一人で動くか)
桜にそれも伝えると結が一人で佇んでいた。
一時間目、国語の授業も進み桜はアリス達とどうなか馴染むことができていた。それに比べて基本術の使えない結はアリスから敵意を未だに向けられていた。
結の提案もあり二人は完全に学院内での会話をしないことに決定していた。
そして一時間目が終わった。
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