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6ー21 予想外


「楓、お前って、ピュアなんだな」


「は、はぁ?なんのことだがわからんっ!

あたしは普通だっ普通っ!」


 少しずつ顔から赤みが抜けている桜と違い、ずっと耳までいや、首元まで赤くなっている楓は、ごまかすようにいつもより声量が大きい。


「ピュアな楓、ピュエデ?」


「誰がピュエデだ!誰が!」


「あ、あのー。三人は付き合っていらっしゃるんですよね?」


「「ななっ!?」」


 服部の言葉でやっと赤みが完全に引いた桜と、ずっと赤みの抜けない楓は、再び頭からボフッとでも効果音がつきそうに感じに、湯気を噴射すると、二人とも面白い顔になって、真っ赤かになっていた。


「おい!違うからな?俺たちは別に普通の友達だからな!?」


「え!?そうなんですか!?」


「て、てっきり三人共そういう関係だと……」


「ちょ!?……って、おい、ばかっ!楓!なに深読みしていやがる!」


「ふ、ふぇ?し、してない。してないぞ!変な想像なんて一切あたしはしてないぞ!」


 結の言葉に、一瞬、表情に影を落とした二人だったが、すぐに風魔の言葉で、微妙に頬を緩めながらも、俯いていた。


 楓に至っては、風魔の言葉を深読みしてらしく、珍しいことに、軽く錯乱しているようだ。


「あ、あはは。まったく、二人とも勘違いが過ぎるよー」


 結と楓が面白いことになっているせいか、三人の中でまだ冷静だった桜は、頬は軽く赤くなっているものの、頭は冷静に戻っているようだった。


 桜は結たちは無理だろうと判断して、二人の勘違いを解こうとしていた。


「そ、そうだったんですか。すいません勘違いしてしまって」


「あはっ。いいのいいの。間違いは誰にでもあるもんね」


「……えっと、お二人のことは……」


「あーうん。二人はほっといて、勝手に戻るでしょ」


 風魔が示す方に振り向くと、そこには軽く錯乱した状態でいる結と楓の二人がいた。


「そういえば、あちらの女性は誰ですか?」


「ん?楓のこと?」


「はい。あんな綺麗な人、知らない訳がないと思うのですが……」


「そうですね。僕も知りませんし……誰なんですか?」


「あー、まあ簡単に言えば転校生だよ。それで、今は生十会の一員」


「わぁー、凄いです!転校してそうそう生十会に入るなんて、よっぽどの実力者なんですね!」


「まーそうかな?」


 楓が褒められているにもかかわらず、何故か照れる桜であった。


「ねえ結?」


「なんだ楓?」


「ずっと思ってたんだけど、二人とも敬語キャラだろ?……なんか、判別つかないのだが」


「しかも、厄介なことにもう一人いるんだよな」


「何がだ?」


「男子の敬語キャラ」


「あぁー、そういえば」


 時間のおかげで顔は少し赤くなりながらも、頭は冷えたらしい結と楓の二人は、桜と話している服部と風魔を見て、そんなことを思っていた。


「あっ!結さん!」


「あっ、真冬。お前らは西校舎行ってたんじゃないのか?」


 白うさぎを思わせる少女、真冬は結たちを見つけると、トコトコと軽い小走りになると、結たちに深々と礼をした。


「はい。そうですよ。僕と真冬は西校舎だったんですが、西校舎にはほとんど生徒が残っていないようで、もう聞き終えちゃったんですよね」


 日向兄妹は二人で西校舎を担当していたはずなのに、南校舎に来ているためそう聞くと、真冬の後ろからひょっこり現れたモから始まりブに終わるキャラに似ている、日向兄こと、春樹が答えた。


「聞き終える?そういえば、先ほども生徒に聞き回っているようでしたが、音無さんたちは何をしているんですか?」


「あーそうだった。二人とも交闘戦技大会こうとうせんぎたいかいについてどう思ってる?」


 日向兄妹が来た時に、桜と共に結たちに近付いた忍者の二人組に結は忘れていた口頭アンケートを実施していた。


「どうっと言いますと?」


「いや、あれだ。参加人数が減るだろう?それで参加したくても出来ない奴が大勢出るからな。不満とかはないのかってことだ」


「あっなるほど。そういうことでしたか。そうですね。不満は特にはないですね」


「そうなの?その心は?」


「参加出来るのなら参加したいですが、それでも新競技は見てる側も楽しめそうですし」


「そういや、朝のガーデン通信に新競技の説明もあったな」


「みんな新競技の内容は把握してるってわけかぁー」


「あっそういうことでしたかっ」


 唐突に風魔は両手をポンっと打っていた。


「これって生徒たちに今回急に決定した新競技と、六芒戦(ろくぼうせん)について不満が無いがを調べる口頭アンケートですね」


「そうそう。その通りー。……で?六芒戦って何?」


 真顔でそう聞く桜に、結と楓は苦笑いになっていた。


 結は呆れるようにため息をつくと、桜にジト目を向けた。


「六芒戦ってのは六校で戦うからってついた、交闘戦技大会こうとうせんぎたいかいの別名だろ?朝のガーデン通信にあっただろ?」


「あー、うん。そういえばあったね」


「……あたしにはわかるぞ。桜、ガーデン通信読んでないだろ」


「うっ……」


「図星かよ……」


 楓の読み通り、朝のガーデン通信を読んでいなかったらしい桜に、結と楓は深いため息をついた。


 ガーデン通信は主にガーデン側から生徒への連絡なのだ。


 それを生徒の代表である生十会メンバーが確認しないなんて本来あり得ない。


 やる気もなく入っている楓や、半ば無理矢理入れさせされた結ですら読んでいるというのに、既に二年目である桜が読んでいないのは、もう、あれだ。完全にアウトだ。


「さて、生十会員としての自覚が低い桜はほっといて、どうだ?本当にないのか?不満」


「そんなに心配しなくても、ほとんどの生徒が僕たちと同意見だと思いますよ?

会場は【F•G(ファースト・ガーデン)】らしいですし、

感覚的には部活の大きな大会をみんなで応援しに行く感じで楽しめますよ」


 どうやら生十会の心配は杞憂に終わりそうだ。












 六芒戦の開幕が決定してから三日が経った。


 あれから各クラスでは六芒戦に向けて通常授業が全て六芒競技の練習となっていた。


 しかし、ここで一つ問題が起きていた。


「まさか、ここまで参加希望者がいるなんて、思っていなかったわ」


「口頭アンケートでは大丈夫そうだったですぅー」


「つまりあれだろ?口頭アンケートの時は既に帰ってた奴らがほぼ全員参加希望者ってことだろ?」


 口頭アンケートの時点では、ほぼ確実に定員オーバーは無しだと思われていたのだが、

後日、

朝に改めて参加希望者を募ったところ、なんと、口頭アンケートの時は大丈夫な割合だったのだが、それを大きく上回る割合となってしまっていた。


 鏡の言う通り、口頭アンケートに参加しなかった者の大半が参加希望者という結果だった。


「全く。時間がないのに」


「会長?ですがそれは他校も同じ条件のはずですよ?」


「そうそう。他校も六芒戦のことはずっと知らせてなかったんでしょ?問題ないさー」


「桜は楽観的だな。まぁ、あたしはこの六芒戦、勝とうが負けようがどうでもいいがな」


「生徒代表の生十会の一員としてはふさわしくない態度だな」


「ぬはっはっ。そうだぞ望月。生十会のメンバーとしての自覚が足りぬぞ!」


「……なんでだろー。剛木の声すっごく久し振りな気がする……」


「あっ雨宮さんもですか?それが僕もなんですよね」


「おっ、奇遇だねぇ」


「そうですねぇー」


 桜と春樹が突然笑い出したことはほっといて、会長と六花がスケジュールの確認をしていた。


「やっぱり時間が足りないわね」


「参加メンバーをどう決めたものでしょうか」


「選挙なんてどうですぅ?みんなで参加して欲しい人の名前を書いてもらって、それを集計するですっ!」


 真冬は両手を胸の前でグッとやると、どうですかっ!とでも言わんばかり表情を浮かべていた。


「それもいいかもしれませんが、元々幻操師は自分の能力を隠す傾向にあります。

つまり、他者が他者の実力を正確に判断することは難しいです。

仮にそれを判断出来るものがいたとしても、それは特に中のいい友人の集まりになりますし、

そうなると実際の実力ではなく、友達の量で代表が選ばれる可能性も生まれてしまいます」


 六花が真冬の提案を遠回しに却下すると、

白うさぎのように保護欲の刺激する見た目をしているとは言え、

正直な話桜よりも何回転も頭の回転数が多いため、真冬は六花が遠回しに言っていることを正確に認識し、

両手を胸の前で握った可愛らしいポーズから、

どんよりとした落ち込みオーラを垂れ流しにしていた。


「あっ、それなら」


 皆が落ち込みオーラを垂れ流しにしている真冬に同情の視線を送っていると、突然桜は両の手を叩き、立ち上がっていた。


「どうかしたのかしら?」


「そうだよ!簡単だよっ!」


「……だから、何がかしら?」


「だから、選抜の仕方」


「いい案が浮かんだんですかぁ?」


「そうだよ真冬ちゃんっ!Aランクを舐めるなっ!」


 桜はビシッと感じの効果音が出そうな勢いで、ピースを横に向けたようなものを、開かれたハサミの間にちょうど瞳が来る、独特のポーズをとっていた。


「題してっ、六芒戦出場選手選抜試験っ!つまり、六芒戦の予選だよ!」

 


 これからもよろしくお願いします。

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