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6ー7 彼女たちの正体


 目の前に現れたのは、黒の和服に身を包んだ、少女だった。


「あなた、誰かしら?」


 愕然としている六花衆や生十会の面々の中で、一番最初に口を開いたのは、会長だった。


(あっ、そか。会長は姿の変わるジャンクションは見たことないんだっけ)


 会長はまだ結のフルジャンクションを見たことがない。


「私?」


「そう。でも、やっぱり答えなくていいわよ。あなた、結でしょ?姿を変えた結、違うかしら?」


「あれ?会長はゆっちの変身見たことなかったと思うけど」


 会長がほぼ正確に目の前にいる少女の正体を見破ると、桜は驚いていた。


 桜の言っていることは勘違いだ。


 会長は一度だけ、結のフルジャンクションを遠目からだが見ている。


 それは、イーター襲撃事件の中でも、特に厄介な相手、人型が現れた時だ。


 会長は結たちの元に駆け付けた時、結の姿がルナから結に戻るところを遠くから見ている。


 剛木との模擬戦の時にも、結はフルジャンクションはしていなかったが、口調の変化や雰囲気の変化などで、会長は結の能力に大方の検討を付けていた。


 そして、先ほど、桜がジャンクションという技名をつぶやいたことで、それを確信した。


 己に何かを接続し、己の情報を上書きし、己を強化する。


 それが会長の考えだった。


「ゆ、結花様なのですか?」


 美雪は目を大きく見開き、動揺を隠せずに言った。


 今この部屋にいる中で、最も驚愕しているのは誰でもない、六花衆だった。


 何故なら、六花衆は知らなかったからだ。


 結が再び、ジャンクションを力にしていることを。


 過去にも結は力を失い、また別の力を手に入れている。


 あれから既に一年も経っていることから、結が新しい力を得たであろうことは容易に推測出来た。


 しかし、失った力を取り戻すなんてありえないことだ。


 結が【A•G(エンジェル・ガーデン)】に来たばかりの頃の力を取り戻したのならわかる。


 何故なら、あれは結の心が不安定になったことで、失ったというよりも、発動出来なくなっただけだ。


 しかし、結花は違う。


 結花は『再花』によって、自らその力を捨てているはずなのだ。


(どういうことなのでしょうか。……いいえ、今更ですね。ご主人様が例外だということは)


 元々、結には例外が多い。


 幻操師が得られる固有術は、本来一つだ。


 ある程度の違いはあれど、何があろうと根本的な部分が変わることはない。


 しかし、結の能力はそれが変わり過ぎている。


 なにより、『再花』は、力の核を代償に一時的に通常時よりもはるか上の力を得る技術、禁術だ。


 一度でも『再花』を発動すれば、もう幻操師としてはやっていけない。それが普通だ。


 しかし、結はあの時、【重力操作(グラビティ)】を得ている。


 彼は【継承術】であり、外部記憶装置だったため大丈夫だったのかもしれないが、『再花』で失うのは、術だけでなく、幻力もだ。


 習得したとしても、使える訳がない。


 いや、この際そんなことはどうでもよかった。


 六花衆にはただただ、信じられなかったのだ。


 結が結花として、再び咲いたことが。


「お久しぶりです。ご主人様」


「うん。ちょっと待って」


「はい……?」


 結花の身体から白い霧のようなものが溢れると、一瞬、霧によって結花の姿が覆い尽くされると、次の瞬間、中からは【F•G(ファースト・ガーデン)】の男子制服に身を包んだ結の姿があった。


「ふぅー。久振りだな。美雪」


「はい。お久しぶりです」


「久し振りーバカ主ー」


「お久しぶりですにゃ!」


「二度目になるが、久し振りなのだよ」


 それぞれ、一年ぶりの再会になるため、結たちは再会を喜んでいた。


 もちろん、バカ主と言った雪乃へのチャップはあるが、再会を嬉しいと思うのは本物だ。


「それで?お前ら何しに来たんだ?」


「……聞かないんですか?」


 それは、理由だ。


 ここにきた理由ではなく、一年前に姿を消した本当の理由。


 【A•G(エンジェル・ガーデン)】の内乱を止めるため、四人は犠牲になったと聞いていたが、実際にこうして生きている。


 つまり、あの情報は偽装だったことになる。


「どうせ厄介な理由でもあんだろ?なら聞かねえよ」


「……相変わらず、優しいですね」


「……そうでもねえよ」


 結は照れ隠しでそっぽを向いていた。


「ですが、理由を話していいですか?」


「……わかった」


 美雪の言葉に振り向いた結は、美雪の真剣な表情に思わず表情を強張らせた。














 美雪の話は、六花衆と生十会のやり取りで少し荒れてしまった生十会室を整理した後になった。


 部屋の端っこにある、物置になっている小さなスペースから、予備の机を取り出すと、それ、二つ横に連ねて一本の長い机を作るように合わせた。


 長い机を境に、片方が六花衆、もう片方が生十会役員が座った。


 六花衆は奥から小雪、雪羽、美雪、雪乃の順に座り、生十会は奥から六花、結、会長、桜の順で座っている。


 生十会の残りのメンバーはというと、六花衆との第一印象があまりにも悪く、彼女たちとの会話に支障が出ると思い。この会議の内容は、後日会長から話されることになって、今日は先に帰宅となっていた。


 その理由なら桜こそ帰されるべきなのだが、桜の強い希望により、桜は会議に同席することになった。


「ふう。これでゆっくりと話が出来るわね」

 

 机の上には会議に支障が出ない程度の軽食とそれぞれの飲み物が置かれ、会長は会議を開始した。


「まずは改めて私たちの自己紹介からでいいでしょうか?」


 美雪はそう言って目配りをすると、ごほんっとわざと咳払いし、自己紹介を始めた。


「まずは私から。私の名前は美雪。所属は元A•G(エンジェル・ガーデン)二番隊隊長」


「じゃっ次はあたしだね。あたしは雪乃。所属は元A•G(エンジェル・ガーデン)四番隊隊長だよっ」


「私は雪羽。元A•G(エンジェル・ガーデン)三番隊隊長なのだよ」


「元A•G(エンジェル・ガーデン)五番隊隊長の小雪だにゃっ!」


「た、隊長!?」


 四人の自己紹介を聞いた会長は目が飛び出てしまうのではないかというくらい目を大きく見開いていた。


 桜に至っては驚き過ぎて声にもなっていないようだ。


 六花はあらかじめそれを予測していたのか、「……やはりそうですか」っとつぶやいていた。


「只者じゃないと思ってたけど、まさか隊長クラスなんて思ってなかったわ」


「隊長クラスって確か、一人でも小さな国くらいならやっつけられる程の実力でしょ?」


「そうですね。実際に非公式ですが、裏で悪いことをしていた小国や組織などは良く潰していましたね」


 美雪が軽い感じでそんなことをいうと、会長と桜の二人は完全に固まっていた。


「あっ。そういえば、ご主人様はこの前【R•G(ロイヤル・ガーデン)】に行ったそうですね?双花様とは会えましたか?」


「……あ、あぁ」


 結は双花に結のまま結花の姿をさせられたことが少々トラウマのようなものになっているようで、苦い笑みを浮かべていた。


「ちゃっちょっと待って!ゆっちって双花様と面識あったの!?」


 美雪と結の会話を聞いていた桜は、あまりにも衝撃的な内容に、思わず待ったを掛けていた。


「あら?お話になっていなかったのですか?ご主人様は前々から双花とは仲をよくなさっていますよ。そもそも、双花があれ程の力を得たのはご主人様の功績と言っても過言ではありませんから」


「それは過言だ。俺はただ双花の遊び相手をしてただけだぞ?」


「遊びではなく、戦いの間違いでは?」


「ちょちょちょ待って、待ってくれない!?」


 結と美雪が二人で盛り上がっていると、再び桜が待ったを掛けていた。


 そんな桜に。美雪は「どうかしましたか?」っと首を傾げていた。


「あの双花様と遊んでたって、ど、どういう……うんん。それよりも、あの【A•G(エンジェル・ガーデン)】の隊長クラスとタメ口。それどころか、ご主人様って呼ばれてる結ってもしかして……」


「はい。ご主人様こそ幻、伝説と呼ばれる【A•G(エンジェル・ガーデン)】の中でも、幻と呼ばれる部隊。零番隊の隊長ですよ?」


「ぜ、零番隊っ!?それも隊長!!?」


 【A•G(エンジェル・ガーデン)】に一番隊から七番隊まであるのは割と有名な話だ。


 しかし、噂程度だが、あったのではないかと噂される部隊がある。


 それが、零番隊。


 別名、『死神隊』


 これからも天使達の策略交差点をよろしくお願いします。

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