2ー4 双花の提案
次の日、目を覚ました結は自分がいつ寝たのかわからずに疑問に思い、思いだそうとするが双花と法具屋での出来事について話していたことしか思い出すことができずにいた。
(他にもあったような気がするけどまぁいいか。それにしても首が痛いな)
双花の手刀によって気絶させられたのを覚えていない結は首を押さえながらベットから起きるとタイミングを見計らっていたかのようにタイミング良く扉がノックされた。
「どうぞ」
声をかけるとメイド服を着た少女が結に生十会メンバーと一緒に双花と会った謁見の間に来るようにと伝えると綺麗な礼をして部屋を去っていった。
「さて、行くか」
結は昨日、着替えたりせずにそのままベットに突っ伏したために乱れていた服を整えると両手の法具を確認し謁見の間へと向かった。
「おっゆっちーおはよー」
「遅いじゃねえか」
謁見の間へと続く巨大な扉の前に着くとすでに桜と鏡が結のことを待っていた。
桜はF•Gの制服ではなく白を基本とした桜の刺繍のある程よくフリルのついた可愛らしいワンピースを着ていた。
いつもは活発な姿を見ているためこういった大人しい女の子らしい格好は新鮮でいつもよりも数倍可愛らしく見えた。
「どうこれ?似合うかな?」
桜は結に自分のワンピース姿を見せるようにその場でクルッと回ると恥ずかしいのか頬を赤らめてながら聞いた。
「あぁ、とってもにあってるよ。いつも可愛いけどいつもより二割増しで可愛いかな」
「ふぇ?」
多少はお世辞で褒めてもらえると思っていた桜は結から予想以上に褒められるどころか褒めちぎられたことで目を見開きながらびっくりしてしまい変な声を出してしまっていた。
桜はすぐに我に帰ると恥ずかしそうに頬をかきながら照れながらそっぽを向きつつ「ありがと……」と小さく礼を言った。
「結に褒められて照れて……痛っ!!」
鏡は結をうわーとでも言いたげな顔で見ると視線を桜へと変えニヤニヤとした嫌な笑みを浮かべると珍しく照れている桜をからかうように言うと桜は無言で鏡の足をかかとで踏みつけた。
「みなさんおはようなの」
桜と鏡がそんな漫才をしていると昨日とは違うものだがやはりフリルのたくさんついたドレスを着た春姫がやってきた。
春姫はさっきの漫才の一部始終を見ていたらしく手を口にやってクスクスと小さく笑いながら桜、鏡と順に視線を移すと最後に結へと視線を向け「悪い人ですの」と呟いた。
「それではご案内ですの」
春姫は結達にそう声をかけると扉を開かずに違う部屋へと案内した。
どうやら謁見の間で話すのではなくただ三人を集めるためにわかりやすい部屋を指定しただけだったらしい。
三人が集まったところで春姫が本来の集合地に案内するという少々無駄な事をしているようにも見えるがこのR•Gはまだ歴史が浅いため生徒、教師ともに人材不足らしい。
つまり三人に一人ずつ案内人をつける余裕がなかったということだ。
「ここなの」
そういって春姫が止まったのは大きさは普通程度だが綺麗な装飾がある一目でただの部屋ではないとわかるような部屋だった。
「あのーこの部屋は?」
「ここはマスターの私室なの」
今だに春姫に慣れていないのか緊張しながら春姫に尋ねる桜に少し笑いながら春姫は答えていた。
マスター双花の私室ということで急に汗をかき始めた桜と鏡を横目に双花は待ったなしで部屋の扉を開いた。
「お待ちしておりました」
扉と違い部屋内部はそこまでキラキラとしたお金をかけたような部屋ではなく双花の趣味なのか落ち着いた部屋となっていた。
部屋の真ん中にテーブルと椅子が置いてあり扉から手前に三つの席がありその向かい側に双花と見覚えのない炎のように真っ赤な長い髪をした一つか二つ年上に見える少女といつの間に移動していたのかすでに春姫が座っていた。
結達三人は真ん中に結、右側に桜、左側に鏡が座るとまだ面識のない赤い髪をもった少女が立ち上がると自己紹介を始めた。
「私はマスターを守る守護者の内一人佐藤火燐だ。よろしく頼む」
火燐はどうやら他の五人よりも一つ年上の十四歳らしく一つ年上と考えても足りないくらい大人びていて年齢に合わないグラマーなスタイルやクールな声、この中で一番身長が高いこともあって年上のお姉さんみたいな少女だった。
桜と鏡はマスターに守護者二人という本来なら自分が出会うなんてあり得ないメンバーが目の前に揃っているためか緊張と言うよりも怯えているようにも見えた。
「みなさん旅の疲れは取れましたでしょうか?」
「……はい」
双花の結達を気遣う言葉に返事の言葉を出そうにも口がパクパクするだけで上手く言えていない桜と鏡を横目で見ると結は溜め息をつきたい思いを押し殺して返事をすると二人は言葉に話すことを諦めたのか首を小さい上下に動かし始めた。
「それはよかった。それでは早速本題に入りたいのですがよろしいですか?」
三人が頷くのを確認すると双花は本題を話し出した。
「本来であればこちらがF•Gへの返事を書くため情報を集めたりまとめたりする間は自由にしてもらうところなのですがどうやらここに来るまでにトラブルに巻き込まれてしまったようなのですが本当でしょうか?」
双花は鏡に視線を向けると返事を待った。今言っているのは昨日結が話した法具屋での一件のことだろう。
その事だと気が付いた鏡は頷くことで返事をすると双花とその守護者達は突然立ち上がり鏡に向かって堂々と頭を下げた。
「こちらの不手際のため不愉快な思いをさせたこと心より謝罪する」
三人のうち火燐が代表として謝罪の言葉を言う中現在謝られている本人である鏡は完全に困惑してしまっていた。
結にヘルプの合図を表情で出してくる鏡に対して溜め息をつくと鏡の期待に答えてやることにしていた。
「三人ともどうか頭を上げてくださいその事についての謝罪であればすでに春姫から貰っています。ですので頭を上げてください」
「しかし……」
「……さっさと頭をあげれば良いんだよ。じゃないとこっちの連れが緊張のあまり死にかけてんだ。謝罪と評して相手に精神的苦痛を与えることがお前らの謝罪なのか?」
「え……」
最初は仮面を被って話していた結だったが火燐が反論しそうになった途端、仮面を捨て去ってしまい一ガーデンのトップスリーということも完全に無視して完全に暴言を吐いていた。
結のそんな無礼な態度に対して火燐はうつむくと「ふふふふふ」と怖い声で唸り始めた。
桜と鏡が怒られるっと思い目を固く瞑り双花と春姫も困惑した目で火燐を見つめる中火燐は頭をあげると唐突に
「ぷ、ぷはははははは」
と笑い始めた。
火燐の行動に困惑する結達三人をよそに双花と春姫は苦笑いを浮かべつつ頭を上げた。
笑いがおさまった火燐は目尻に涙を浮かべながら話し始めた。
「ふぅ、まさか私達に向かってあんな態度を取るとはな。マスターから聞いていたが面白い奴だ」
火燐はあれだけの暴言を吐いた結に対して怒るどころか面白い奴と褒めると双花と目配せしてから頷くと三人とも席に座った。
「はぁー、火燐が暴走してごめんなの」
「春姫、そう言っても仕方が無いだろう今までの奴は皆緊張するばかりなのに対してこいつは平然としているばかりか暴言を吐いたのだぞ?面白いと思わないのか?」
「思わないの」
春姫と火燐が口論をしているなか双花は結達との話を進めていた。
「そのことについての原因なのですがどうやらR•Gの生徒達は自尊心が高くなりすぎてしまったようで他園の者を見下すようになってしまったのです」
双花は悲しそうに俯くと突然頭を上げて生き生きとした声で話し出した。
「それで昨晩ふと思い付きました。他園の者が弱くない所を見せれば解決するのではないかという結論になったのですがどう思いますか?」
結と双花が旧友だということを知られないために昨晩双花がふと思い付いたという設定にしたらしく双花はそう言うと次の言葉で三人を驚かせることを言った。
「そこで三人に協力してもらおうと思います。どうですか?このR•Gに入学しませんか?」
「は?」
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