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6ー2 復活の天使


「本当に、本当に雪羽なのか?」


 突然目の前に現れた雪羽に、結はそう問い掛けていた。


 あの日。


 死んでしまったのは奏ただ一人だった。


 しかし、【A•G(エンジェル・ガーデン)】という冗談にならない戦力を持った組織を纏めていた者が死んでしまったのだ。


 天使たちの中には、結のせいだの避難する者までいた。


 そして、結自身、そう思っていた。


 だから、だから結はその後、ただ一人【A•G(エンジェル・ガーデン)】から離れた。


 結はその後、一度入ったことのある【神夜】を頼っていた。


 【神夜】の当主、結一から許可を貰い、結はしばらく神夜邸に住まうことになっていた。


 神夜邸に住むようになってから、一ヶ月程経った頃、結菜が凄い表情を浮かべ、慌てて結の元を訪れていた。


 その時、結は結菜から聞かされた内容に、震えた。


 奏という、絶対的支配者がいなくなった後、【A•G(エンジェル・ガーデン)】は内部抗争を始めてしまったらしい。


 抗争は主に、奏は結のせいで死んだと訴える者たちと、結は悪くないと、結を庇う者たちの間で起こっていた。


 抗争とは言っても、戦いを仕掛けたのは結が悪いと訴えていた者たちだ。


 戦いを仕掛けられたことで、結を庇っていた側、六花衆たちも戦いに参加したらしい。


 そして、結菜から聞いた話では、その戦いのせいで、【A•G(エンジェル・ガーデン)】はバラバラとなり、少しでも被害を少なくようと六花衆はずっも駆け回っていたらしい。


 そして、六花衆の活躍のおかげもあり、その抗争で死んだのは、たったの六人だった。


 そう。


 その戦いで、六花衆は死んだ。


 結はそう聞いていた。


「む。私のことを忘れたのか?失礼なのだよ」


「いや。そういうわけじゃないが……」


「えーと。結?そろそろあたしたちに紹介してくれないかしら?」


 結と雪羽が話していると、さっきから無視されてイラついているらしい会長が話に割り込んでいた。


「む。主様との間を切り裂こうとするなど、なんなのだ?この娘は」


「さっきから主様主様って、一体あなたは結とどういう関係なのかしら!?」


 雪羽の結に対する主様発言は、会長だけでなく、場にいる一同が同様に思っていたことでもあった。


 そのため、皆がその会話を盗み聞きしようと、耳を微かに幻力で強化していた。


 イラついた様子でいる会長に、雪羽はニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべると、即座に勝ち誇ったような顔になった。


「主様のことを主様と呼ぶのは当然のことなのだよ。なんせ、主様は私たち全員の、ご主人様なのだよ」


「ご、ご主人様ですてっ!?」


 驚きた様子で叫ぶ会長は、何を勘違いしているのか、顔を真っ赤にしていた。


 雪羽のご主人様宣言で、顔を真っ赤にしたのは会長だけでなく、場にいた桜や真冬、あの筋肉の塊である剛木さえも顔を微かに赤み付ていた。


「結。そろそろ紹介してくれませんか?正直、眠いです」


「六花……。お前そんなキャラだったか?」


 結が空気が読めていないともとれる六花の発言で、思わず苦笑いしているの、「わかった」っと雪羽の紹介を始めた。


「えーと。まず、こいつの名前は雪羽。俺の昔の戦友だ」


「戦友?ご主人様とそれに仕える召使いの間違いでは?」


「はぁー。六花、そういう冗談はやめとけ」


「確かにそうですね。召使いの言うより、奴隷のほうか適当ですね」


「どどど、奴隷ですって!?ゆ、結っ!あ、あなた、なな、なんてハレンチなっ」


 六花が結と雪羽の関係を、ご主人様と奴隷のようなものだと推測していると、会長はそれを聞き、さっきまで以上に顔を真っ赤に染め上げていた。


「はぁー。そんなんじゃねえよ」


「なら、どうして雪羽さんは結のことを主様と?」


「それは……」


「助けられたのだよ」


 六花の質問に、結が答えるか迷っていると、雪羽がその質問に答えていた。


 結が雪羽のほうにちらりと視線を向けると、雪羽は小さく頷いた。


「助けられた?」


「そうなのだよ。私たちは昔、とある資料を元に実験をしていたのだよ」


 雪羽の言う実験とは、奏が偶然見つけたとある術の設計図【霧雲】のことだ。


「しかし、結果は失敗。それもただ失敗するだけでなく、それは暴走を始めてしまったのだよ。本来ならばあの時、私たちは全員死ぬ運命にあったのだよ。それを助けたのが主様、つまり結なのだよ」


 雪羽が結のことを名前で呼んだことで、結は驚いていた。


 その一件以来、雪羽は結のことを一度も名前で呼ばなくなったのだ。


 理由はわからないが、その頃からだろうか、雪羽はやけに結のことを主様と呼びながら、二人だけの時は甘えていた。


 結はいつもどこか大人びている雪羽に甘えられて、少し嬉しく思っていた。


 多分、その事件をきっかけに、雪羽を結のことを認め、結になら甘えていいと思ったのだろう。


 しかし、同時にどこか遠慮を感じていた。


 雪羽は結のことを主様と呼ぶ時、怪しい雰囲気を漂らせながらも、どこか、悲しそうに見えた。


 だから結は気になっていたのだが、今再開して、前のような悲しさは見えなくなっていた。


 それに名前も呼ばれたことで壁のようなものも感じなくなっていた。


 結が思わず微笑みを浮かべていると、それに気付いた雪羽もまた小さく微笑んでいた。


「ふっ。もう遠慮するつもりはないのだよ」


「ん?どういうことだ?」


 そういう雪羽の瞳は妖しく光っていた。













「えーと。思わず乱入者もあったけど。今日の会議を始めるわっ」


 会長は定位置に座ると、皆を座らせ、改めて会議の開始を宣言した。


 しかし、場にいる人間は全員、雪羽の存在が気になっていた。


 それは当然だろう。


 何故なら、今の雪羽の格好は白いコートに白い仮面。


 その格好は、伝説にもなっている【A•G(エンジェル・ガーデン)】の代名詞だ。


 一時期は【A•G(エンジェル・ガーデン)】に憧れて、白いコートと白い仮面というのを真似する輩が多くいたが、雪羽からはそういった輩とは違う、本物であると嫌でもわかってしまうオーラが出ている。


 そして、雪羽が【A•G(エンジェル・ガーデン)】の者だとすると、その雪羽と昔の仲間らしい結のことも気になっていた。


「なんだかなー」


「桜さんどうかしましたです?」


「いや。なーんか複雑だなーって」


 雪羽が現れたことで、忘れられているが、雪羽が現れる前、結は桜のことを雪乃と呼んでいる。


 桜にとっては、雪羽が現れたことで結は自分のことを誰だと思っているのかが気になっていた。


「あーもう!雪羽だっけ?落ち着かないからその仮面外しなさい!」


 場の雰囲気が重くなっていることに加え、機嫌が悪くなっていた会長は、バシンと机を叩きながら立ち上がると、雪羽に指を指し、そう言っていた。


「む。それはできない相談なのだよ。私たちは存在の秘匿を義務付けられているのだよ」


「なら帰りなさいよ!会議が始められないわっ!」


「私は結に用事があるのだよ。会議なら勝手に始めるといいのだよ」


「結に用事があるなら外で待ってなさいよ!」


「それは出来ないのだよ」


 雪羽はそういうと、さっきからやけにおとなしい結に鋭い視線を向けていた。


「見張っていないと、すぐにでも逃げてしまいそうなのだよ」


 皆が雪羽の視線を追うとそこには小さくだけど、確かに震えている結の姿があった。


「結?どうしたの」


 誰もが結にそう聞きたそうにしていたが、桜の一件もあって、皆が結に声をかけることを躊躇しているも、既に大丈夫だとわかっている会長が結にそう声をかけていた。


「雪羽ーー」


 結は震えた声で話し出した。


「ーーなんでお前がそれを持っている?」



 これからもよろしくお願いします。

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