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2ー3 マスターの娘

 部屋に入ってきたのはR•Gマスターこと夜月双花だった。

 玉座に座っていた時に着ていた白のワンピースのようなドレスではなく元々好んでいる二つ葉のクローバーが描かれた水色の着物を着ていた。



「久し振りですね。結」


  双花は部屋に入った途端懐かしい旧友との再会を喜ぶような慈愛に満ちた表情になった。結は横になっていたベットから体を起こしベットに腰掛けると溜め息をつきながら双花に問いかけた。


「……はぁー、そのために部屋を別々にしたな?」


  双花は扉を音をたてないように静かに閉めると結の座っているベットの前にあるソファに膝を揃えて行儀良く座ると当然のことを言うかのように答えた。


「えぇ、そうですよ」


  双花はあの場で結が初めて会うようなことを言ったことから他の二人にはすでに結と双花が会ったことのある旧友だということを知られたくないと判断し結と話をするためにわざわざ退室の際に部屋を別々に案内させるようにするという春姫への言伝をメイドに伝え、他の二人から結を離しそして今こうして目の前に現れたのであった。


「相変わらず自由だな……はぁ……久し振りだな元気してたか?」


「……はい、私は元気にしておりました、ですがーー」


「そこから先は言うな」


 結の事を心配そうにする双花に結は手の平を向け行動と言葉でそれ以上は聞きたくないと厳しい目と口調で止めた。


「……ここはどうですか?」


「ここ?」


「はい、私のR•Gはどうでしたか?」


  双花は先程の悲しい顔とは一転まるで告白の返事を待つ女の子のようなドキドキと不安の入り混じった顔で結の返事を待っていた。


「そうだな……良いか悪いで家ば綺麗で良いんじゃないか?……あぁ、そういえば法具屋で失礼な態度を受けたな」


 結の綺麗という言葉を聞いて嬉しさの余り叫んでしまいたい衝動に駆られるも法具屋での話を聞いた途端一瞬絶望するかのような表情になり今度はまた悲しそうな表情になった。


(相変わらず表情の変化が激しくて忙しい奴だな)


 結は双花の百面相に内心笑っていた。


「そうですか……申し訳ございません」


  双花はソファから立ち上がると結の前で床に膝を付け頭を下げた。第三者からみたら男がベットから地面に膝を付け頭を下げている少女を見下ろしているような格好だ。

 あいては一ガーデンのマスター。誰かに見られたらアウトだな。


「はぁー、そこまでしなくていいって、お前の守護者の春姫って奴に助けてもらったからな」


  結は溜め息をつくとベットから立ち上がりしゅんとしている双花の頭を優しく撫でるとくすぐったいのか体の力が少し緩んだ双花の脇に手を滑り込ませると無理矢理立たせそのままソファに座らせると今度はベットにではなく双花を座らせたソファにつまり双花の隣に腰を下ろした。


「そうでしたか……私もここ最近生徒の他園の者に対する敵対心が膨れ上がり過ぎてしまい困っているのです」


  双花は心から悩んでいるようで珍しく人前で弱気な事を言いながら大きな溜め息をついた。

 結は双花のらしくない状態を見て溜め息をつくとどうにかしてやろうと思っていた。


「他園の奴を嫌う理由って弱いと思ってるからだろ?」


「……はい」


  双花はまた結が怒ってしまうと思い声を小さく縮こまってしまっていた。


「なら簡単じゃねえか」


「えっ?」


「俺達の強さをここの生徒たちに見せてやればいいんだろ?」


 結は珍しく笑顔を作るとその笑顔を見た双花はずっと思い悩んでいた事の解決方法を簡単に見つけてしまう結に思わず赤面してしまっていた。


「……相変わらず天然もののたらしですね」


 双花は赤面した顔を見られないように顔を伏せながらぶつぶつと呟くと突然立ち上がりそんな双花の行動に驚いて目を見開いている結を正面にあるベットに向かっていきなり投げ飛ばした。


「ちょっ……はぁっ?」


 突然投げ飛ばされて困惑する結の前で双花はいきなり着物の帯を外し始めていた。その行動に驚く結だったが即座に我に帰り止めようとするが既に引っ張れば外れるように細工していたらしく止めようと手を伸ばした結の手に帯の端を握らせると結の足を引っ掛けてベット側に倒すと結の手によって帯が引っ張られてしまい外れてしまっていた。


「なっ!!」


「……うぅ」


 帯が外れてしまった結果着物の前の部分がずれてしまいブラジャーは着けていなかったらしく双花の綺麗な胸の谷間、可愛らしいおへそ、そして着物と同じ水色をしたフリルの付いた下着までもが露わになってしまっていた。


 双花は恥ずかしそうに耳まで赤くしながらも全く隠す様子を見せずにそのままベットに仰向けに倒れこんだ状態の結の上に四つん這いになった。


「そ、双花?」


 双花はそのまま体を低くしていくと両腕を結の首に絡めるようにして結の上にうつ伏せになった。

 密着されたことにより女の子特有の甘い香りやその柔らかい体の触感が結の全身を覆っていた。


(なんだ、なんだ!?これはやばい、いろいろやばいって!!)


 双花の想定外過ぎる行動に困惑を隠し切れない結はどうにかこの状況から抜け出そうと体を捻じると抜け出すどころか逆にその動きを利用されて腕だけでなく両足も結の両足に絡めまるで拘束されているような状況になった。


「おい、双花っ!今すぐ離れろっ!」


 体全身を使って絡めるようにくっ付いている双花を無理やり引き剥がそうと手を動かすと


(ん?なんだこの柔らかいものは)


 抜け出そうと両手を動かした結の手にはなんと双花の胸を鷲掴みしていた。


「あ、んっ……」


 双花の胸を鷲掴みしている状況を自覚して全身が強張った結は反射的に手に力を入れてしまった。

 つまり双花の結を揉んでしまったのだ。


「悪いっわざとじゃ……」


 故意でないことを主張する結だったが被害者である双花にそんなことは関係なく軽く混乱状態になった双花は結の絡めていた両手、両足を外すと結の上からコロンと転がり結と並ぶようにして仰向けに横になり目尻を涙でキラキラと光らせながら結に触られた胸の前で両手を落ち着けない子供のように絶えずもじもじと動かしていた。


 いつもR•Gのマスターとして凛々しい姿を周りに見せている双花がこんな女の子らしい仕草をするとそれは可愛らしさを引き立てるつまりギャップ萌えというやつだ。


「双花、大丈夫か?」


 拘束が外れて内心喜ぶ結だったが双花が隣で仰向けになりながら焦点をどこにも合わせない目をグルグル回しながらぶつぶつと呟いている双花を放っておくこともできずに体を双花に向けると上半身だけ起き上がり双花の顔を覗き込んだ。


 双花はその目に結の姿を確認すると顔をさらに真っ赤にし一瞬石化するとすぐに我を取り戻し覚悟を決めたような顔になって自分の顔を覗き込んでいる結の足を思いっきり引っ掛けた。


「ふにゃっ!!」


「うわっ!!」


 双花の顔を覗き込むために少々無理な体制になっていた結は当然その不意打ちを避けることもできずにさらに体制を崩されてしまい双花の上にさっきとは逆に倒れこんでしまった。


「っ!!」


「逃がしません」


 嫌な予感がした結は即座にその場を離れようと横に向かって飛ぶがそれよりも早く双花の両腕が結の首回されていた。


「あの、双花さん?この状況は一体……」


「……すぐに離してあげますので今はこうさせてください」


 双花は潤んだ目で微笑むと結の頭を自分胸で抱き締めた。


「双花?」


 あろうことか頭が双花の胸に挟まれるように抱き締められた結は抜け出そうとするが微かなすすり声が聞こえ抵抗をやめた。


 双花は泣いていた。


 結と双花は昔同じ移設のお世話になっていた。その施設で知り合った二人は他に五人合わせて七人でよく一緒に遊んだり幻操師として互いに高め合ったりと良き友でありながら良きライバルでもあった。


 だがその関係はある事件のせいで終わってしまった。


 その事件とは


(……あれ?俺はどうして双花達の元を離れたんだ?なにかが辛くて……そう、確か)


「結」


 思考の渦に飲まれかかっていた結は双花の一言で我に返っていた。

 胸に抱いていた結を開放すると泣いた後で少し目の赤い双花は心配そうに結の顔を見つめていた。


「……泣かないでください」


 結の目からは一筋の涙流れていた。


 双花は悲しそうにいうと結の目に手をやって流れていた涙をそっと拭った。


「あれ?……どうして?」


 自分が泣いていることに双花に言われてやっと気が付いた結はなぜ泣いているのかもわからないまま子供のように涙を流し続けていた。


「私といるのはお辛いですか?」


「え?」


 双花は悲しそうに微笑むと言葉をつないだ。


「私といるとアノ子のことを思い出してしまわれますか?」


「アノ子?」


 双花の言うアノ子と言う言葉を聞き結は心が苦しくなるのを感じだ。


 理由がわからないまま心に刺すような痛みを感じた結は双花の言うアノ子というのが誰なのかを考えるが結局わからないでいた。


 本格的に思い出せていない結の姿を見て双花もまた心が苦しくなるのを感じていた。


「そうですか……」


 双花は悲しそうに呟くと困惑して固まっている結の下からスルリと抜け出すとソファの上に投げていた帯を手に取ると結に背を向けたまま帯を締め始めた。


「ごめんなさい」


 帯を締めきった双花はまだ固まっている結に振り返ると混乱が解けずに軽く精神状態が悪くなっている結の首に手刀を落とし気絶させると優しくその頭を撫でそのままベットに寝かせた。


(アノ子って誰?)


 気絶する刹那の間でさえ結の頭にはその言葉だけが鳴り響いていた。


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