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2ー2 守護者

「えーと、だれ?」


「は、春姫様っ!?」


  春姫と呼ばれた少女はふわふわとした長い水色の髪を持ちたくさんのフリルが付いた可愛らしいドレスを着ていた。

 美しいというよりふんわりとした可愛らしい顔をしており春姫の名の通りどこかの国のお姫様のような出で立ちをしており身長は低くおそらく百四十程度しかないだろう。


「お困りの様なの、何があったのか教えないとここにいる全員果ててもらうの」


「え?」


  果てるという凄まじく物騒な単語がきこえたような気がするが表情にでないようにスルーすると冷静に話せそうでない鏡の代わりに桜が春姫に今までの経緯を話した。


「なるほどなの、それは明らかにこっちが悪いと思うの、謝るの」


「あぁ!!春姫様っ!!」


 どうやらR•Gにおいて地位が高いらしい春姫の登場に動揺を隠しきれていない定員が春姫の謝るという言葉にさらに慌てるなか春姫は鏡に向かって頭をぺこりと下げた。


「えーと……と、とりあえず頭を上げろ……くださいっ!!」


 上げろと言おうとした途端に周りから刺すような殺気が飛んできて思わず敬語になってしまった鏡は春姫に頭をどうにかあげさせると周りの者から敬意や憧れ、そういった心を向けられているこの少女が何者なのかをきいた。


「自己紹介が遅れてしまったの。わたしの名前は河嶋春姫かわしまはるひめなの」


 春姫はスカートの端っこを軽く上げて貴族のように上品に礼をすると今度はすぐに頭を上げて定員の元へ向かった。


「これ、私が買うの」


「え?」


  春姫は店員の前に立つと店員が鏡から奪い取ったXモデルに視線を注ぎながらそう言った。鏡が春姫の突然の言葉に驚くなか店員はすぐに我に返るとテキパキと動いて即座にXモデルを春姫にお渡しし見事お買い上げとなっていた。


「嘘だろー」


 春姫の介入で手に入れる事が出来ると期待していた鏡は想定外の展開になってしまったことで肩をがっくりと落とし落ち込んでしまっていた。


「ねぇねぇなの」


 そんな鏡を突っついたのは落ち込むことになった原因とも言える少女、春姫だった。


「えーとなんですか?」


  自分を落ち込ませた原因を作った本人に対し周りの目が怖いためギリギリ敬語を使いながらもやる気がない声で返事をする鏡に


「これ、あげるの」


「へ?」


「なっ!!」


 鏡にあげると言って渡したのは今さっき購入したXモデルだった。


「えーと貰ってもいいんですか?」


「いいですの」


 本当に貰ってもいいのか春姫に確認すると春姫は実にパッと可愛らしい笑顔になるとその場でクルッとスカートと長い髪を靡かせながら回転し店員のほうに振り向いた。


「春姫様っ!!どうしてあのような輩に渡してしまうのですかっ!!」


  春姫の行動に困惑を隠せていない店員は思わず敬語を使いながらも責めるかのように春姫に言い寄ってしまっていた。


「あなたがあの人達には売らないと言ったの。だから変わりに私が買ってプレゼントしたまでなの」


「ど、どうしてプレゼントなんてしたんですかっ!!」


 店員は春姫の答えにまだ納得していないのか春姫に再び言い寄っていた。


「今回の経緯を聞いて悪いのはあなただと思ったの。でも仲間であるあなたに罰を与えるなんてできないの。だからあなたが売っても良いと思っている私が買ってプレゼントしただけなの。料金を肩代わりしたのは今回の件についての迷惑料なの」


「なっ……」


  春姫の言葉を聞き納得はしていないようだったがなにを言っても効果がないことを悟るとワナワナと震えたまま黙りこくってしまった。


「そういうわけなの、だから今回のことは許して欲しいの」


 春姫は結達三人に振り向くとぱっと笑顔になりさらに言葉をつなげた。


「迷惑料が足りないならあなた達の分も肩代わりしてあげるの」


  春姫はそう言いながら結と桜に視線をうつした。


「いや、俺は結構だ」


「あ、あたしも……いいかなー」


 春姫が二人の方に振り向いた途端、外野から浴びせられる殺気を気にせずにいつも通りの話し方で断る結と殺気に呑まれ怯えながらも敬語で断る桜だった。


「そういえばあなた達は誰なの?ここは男子禁制、無断入園なら悪いのだけど果てて貰うの」


  春姫はそう言ってフリルの付いたスカートから握りの下に宝石が付いている指揮棒のような法具を取り出すと結に向けながら凄まじい幻力を指揮棒に纏わせ始めた。


「あ、あたし達はF•Gから来た者ですっ!!」


「あ、そうなの?」


 桜が焦りながら自分のステータスカードを取り出しながらF•Gの使者だと伝えると春姫は指揮棒に纏わせていた幻力を引っ込めると思い出したかのように両手をぽんっと叩いた。


「あっそういえばそろそろF•G使者が来るって姫様が言ってたの」


「姫様?」


「姫様とはR•Gのマスター、夜月双花様の事なの」


「えーと春姫様はな、何者なのでしょうか?」


 桜がすごい下から目線できくと春姫は


「私はR•Gマスター、夜月双花様の守護者の一人なの」


「守護者っ!?」


 国のトップである国王だとか大統領だとかトップにいる人間は何かと命を狙われることが多い、それらの人達がボディーガードを雇うようにガーデンのトップであるマスターにも守護者と呼ばれる一種のボディーガードがいる。


 つまり目の前にいるのは一国のトップを守る存在、物理世界ではただのボディガードでしかないが実力主義のガーデンで守護者と言うものはトップから二番や三番目そんな位にいる人間だ。三人がびっくりするのも仕方が無い。


「ここでは他所者が行動するには不便過ぎるのどこかの寄りたい所がないなら今から私と一緒くるの」


「あたしはもう寄りたい所なんてないですけどどこに行くのでしょうか?」


  桜は相手が守護者だと聞いて更にガチガチに緊張するとおずおずといった具合に春姫にきいた。


「私達のお城、R•G本部なの」


 そうして春姫を含めた結達四人はR•G本部でありこの街の中心に建つ城に向かった。














  門番のいる大きな門の中を春姫の顔パスで身分の確認もしないまま通り城内部へと入った結達はその光景にまたも感嘆の意を表していた。


 城内部を一言で言えばそれば美という一文字に限るだろう。

  廊下の各所な置かれている多くの工芸品はどれも素人から見ても美しいと思わず漏れてしまうほどの完成されておりその全てがどれだけの価値があるのか計り知れないようなオーラを発していた。


 本来こういった廊下などには大抵万が一使用人やお客様が壊してしまってもいいように精巧なレプリカを置くことが多いらしいがこのオーラ、おそらく全てが名のある本物の芸術作品なのだろう。


 そこにあるのは目を洗い流してくれるような美しいものだけではなく実用的な法具なども飾ってあった。


「ここまで侵入された時こんな風に飾ってて利用されないのか?」


「ちょっゆっちってばっ!!」


 桜に注意されながらも春姫にタメ口で話し掛ける結の問いに対して春姫は機嫌を損ねることはなく笑顔で答えた。


「ここに飾ってあるのは少し改造してるの」


  春姫はそういうと首にかけているペンダントのような鍵を取り出した。


「これでロックを解除しないと使えない仕組みなの」


  無造作に強力な法具が置いてあると思ったがそれに対する対策は一応しているらしい。


「誰かがやられたら終わりじゃないか?」


  鍵がされているならとりあえず実力の低い者を狙って鍵を奪い取ればいいのではないかと問いかける結に対して春姫は


「鍵にはランクがあるの、対応するランク以上の鍵がないと強力なのは起動できないの」


 つまり強い法具を使うための鍵を奪い取るためにはそれ相応の実力を持った強い幻操師を倒さないといけないため問題はないらしい。


「着いたの」


 そういって立ち止まった前にはガーデンのゲート同様なぜこんなものをわざわざ作ったのかわからないほど無意味とも言える規模の巨大にな扉がそびえ立っていた。


  その扉には煌びやかな装飾がされておりよく見ると下の方に通行用なのか小さな通常サイズの扉がついていた。


「入るの」


  春姫がそう言うと小さい扉のノブに手をかけ扉を開き始めた。誰のものかわからないがごくりと喉を鳴らす音が聞こえたような気がした。


「ようこそ、いらっしゃいましたF•Gからの使者様方」


  入った途端大勢のしかし規律の取れたまるで合唱のような綺麗な声に導かれ扉の先に進むと目の前には巨大な階段があり階段に続く一本道にはなぜかメイド服を着た女性が道を挟むようにずらりと並んでいた。


 メイド達は一人一人がマスケット銃型の法具を持っておりその姿はまるで兵士の総列にも見えた。


  そしてなにより目を奪われるのは階段の上にある煌びやかな玉座に座る美しい少女の姿だった。


「はじめましてF•Gの使者の皆様方。わたくしはこのR•Gのマスター、夜月双花(やづきそうか)と申します。どうぞお見知り置きください」


 石化。

  双花が結達に挨拶をしつつ美しく微笑むと結を除いた二人が完全に固まってしまっていた。


 双花はストレートの黄金に輝く腰に届くほどの長い髪をなびかせ白を基調としたワンピースのようなドレスを纏っていた。その姿は思わずどこかのお姫様だと思ってしまった春姫と同質のつまひお姫様オーラを持っていた。


 双花が微笑むだけでその姿とオーラに魅了されてしまい固まってしまう。これもまたマスターという並ではない超人というレベルなのだ。


「あら?あなたは……」


 双花は一点を見つめると懐かしむように微笑んだ。


「F•G中等部二年生十風紀会の音無結と申しますーー」


(二人は……話せそうにないな)


「こちらは私と同じく生十風紀会のメンバーである雨宮桜、土屋鏡です」


  結は二人を見て自己紹介は無理だと判断し代わりに二人を紹介すると多少動ける程度には復活したのか二人はガチガチに固まりながらも無礼がない様に双花に礼をした。


「そうですか……わかりました……」


  双花は一瞬驚いたように目を見開くと瞳を揺らしどこか寂しそうな声で呟いた。


「これが今回の報告書でこざいます。どうぞお受け取りください」


  結は一歩前に出て会長から貰った書類を頭を下げながらその場で両手で持ちながら差し出すと総列をなしていたメイドの一人がそれを受け取ると足音を全く鳴らさない見事な足捌きで双花の元に駆け寄るとその場で両膝をつきうやうやしく頭を下げながら書類を差し出した。


「なるほど、わかりました。人型イーターについてはこちらでも調べて起きましょう」


 双花は報告書に軽く目を通すと手を顎に当てて考える仕草をし結達にこの情報を検討するため終わるまでの間ここに滞在するように言った。


「……それでは確かにお受け取りました。どうぞ隣の部屋で旅の疲れを癒して下さい」


  双花は書類を先ほどのメイドに渡しメイドが軽い礼をし立ち去るのを確認すると静かに立ち上がり書類を渡したメイドではない他のメイドの耳元で何かを囁くと結達に礼をして退室した。


「どうぞこちらになの」


 双花になにか言伝を頼まれたらしいメイドは結達と一緒にいた春姫にコソコソと耳打ちをすると結達に一礼し立ち去っていた。

 春姫は結達に声をかけると体を休ませるために隣の部屋へと三人を案内をした。

















 三人は鏡、桜、結の順で別々の部屋に案内されるとここまで案内した春姫は「ごゆっくりなの」と言うと一礼し退室していった。


「はぁー」


  結は先程冷静にしている様に見えて実際は精神的疲労を過分に受けていたらしく疲れてしまっていた結は部屋に入るなりすぐにベッドに突っ伏してしまっていた。


 コンコン


「失礼しますわ」


「ん?」


 小さなノックと共に扉が開きそこから入ってきたのはさっきまで同じ場所にいたR•Gマスターこと双花だった。


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