5ー15 遭遇!
【A•G】の地下五階に広がっている大浴場と言う名のプールで楽しんでいた優花は、最後の締めに静止のお風呂に入ろうと思い、静止のお風呂に行くための扉を開くと、そこにいたのは見知らぬ一人の男性、いや、見る限り年齢は優花とそう変わらないだろう。
男性改め少年と対面してしまった優花と、優花と同じように今の状況に追い付けておらず、二人は石のように固まってしまっていた。
楓はバスタオルを体に巻いているだけだ。
しかも、そのバスタオルは非常識なことなのだが、お湯に浸かってしまっていたため、つまり、バスタオルを体に巻いたまま湯槽に入っていたためビショビショになっており、所々薄っすらと透けていて、優花の綺麗な肌が見え隠れしていた。
少年の方もまた、腰にタオルを巻いているだけで他の部分は完全に露出していた。
「……え?」
「……あっ」
運命のイタズラなのか、優花が石化してしまったせいなのか、今まで少年の視界から優花の体を覆っていた一枚の布は、スルスルっという音を立てながら、ヒラリと地面に落ちてしまっていた。
「あ、あぁ」
「……えーと。悪い」
自分の裸体が露わになってしまい、アワアワと狼狽えている優花に少年は顔を背けながらも罰の悪そうな顔でそういうとガラガラと音を立てて扉を閉めていた。
「…………きゃぁぁぁぁぁぁあっ!!」
優花の頭がやっと状況を理解したのか、優花の顔が凄まじい勢いで真っ赤に染まっていくと、次の瞬間涙目になりながら大声でそう叫んでいた。
(み、見られた!あたしの裸、あの男の子に見られちゃった!あたしの裸どうだったかな、変じゃなかったかな……って違う違う!あーもう!お嫁に行けなくなっちゃったよ!)
すでに扉は閉まっているというのに、大声で叫びながらその場にしゃがみ込んだ優花は激しく混乱しているようだった。
(……でも、あの男の子。 何処かで……)
大声で叫んだことで、少し落ち着きを取り戻しつつある優花は、思案顔でそんなことを考えていた。
少年と予期せぬ対面をしてしまった優花は二つの意味で体が熱くなってしまったため、大浴場を出て自室に戻っていた。
折角、体を綺麗にしたのに、着ていた服を着るのが嫌だった優花は、服を洗浄機に入れると籠の横に置いてある着物に着替えていた。
(和服は下着を履かないものだから、ちょうどいいね)
ちなみに、洗浄機というのは【物理世界】にあるようなものではなく、奏の氷で作られたあの箱のことだ。
「……ただいまー」
部屋に入った優花の挨拶には、暗い成分が存分に含まれていた。
その原因はもちろん少年との対面だ。
優花と梨花の家がある街【アフタドリム】は田舎だ。
その場所の特徴として、子供の人数があまりにも少ない。
現在【アフタドリム】にはハタチを迎えていない人数は梨花と優花を入れてもたったの五人だ。
他の二人は現在一八歳で残りの一人は一二歳らしい。
そしてその五人の中で男性なのは一八歳の少年、たった一人なのだ。
つまり、優花は男子に対する耐性が皆無なのだ。
「どうしよ」
まだ赤みの抜けない顔のまま、優花はため息を一つしていた。
(男の子に、それも裸を見られるなんて……あれ?なんでお風呂に男子がいたの?)
頭からベットにダイブし、ベットの上で悶えていた優花は、少しずつ冷静さを取り戻していた。
優花は少し冷静になった頭であの時のことを思い出していると、そこに違和感を感じていた。
(【A•G】って、女性だけで構成されてるんじゃなかったの?)
優花は【A•G】について幾つかの噂を聞いていた。
一つは構成員の全員が【幻操師】の平均的な実力よりも遥か上の実力を持っているということ。
構成員はそれぞれ位があり、指揮系統が完全に整っており、構成員同士の連携が凄まじいということ。
そして最後に、全員が女性で構成されているということ。
大浴場は男女で分かれている訳でもなく、全員が女性なら分ける必要もないのかと思い気にしなかったのだが、先程優花が出会ったのは少年、つまり男だ。
男がいないはずの場所に男がいる。
ここは【A•G】。
天使の庭だ。
その由縁は構成員の女性たちがあまりにも美しいから。
そう、その美しさ、可憐さはまさに天使。
コートと仮面で隠していると言っても、戦闘中の動きで顔のパーツが露わになることだって当然ある。
【A•G】を追っているどこかの誰かがパーツを集めてその顔を割り出したらしい。
結果、あの集団は天使の集団。【幻操師】の集団を意味するガーデンを付けて、天使の庭、【A•G】と呼ばれるようになったのだ。
美しい女性だけがいるはずの場所にいた男。
それはつまり
「侵入者っ!?」
【A•G】にいる美しい女性を狙った侵入者だと思った優花の行動は早かった。
侵入者がいたとしても【A•G】にいるのは一人一人が圧倒的な強さを持っている【幻操師】だ。
たとえ侵入者が【A•G】にいる美しい女性を狙っているとしても捕まえる手段は実力が劣っているため不意打ちしかない。
つまり、【A•G】側の人間全員が侵入者の存在に気付けば問題ないのだ。
そして、その侵入者が捕まるのも時間の問題だ。
「もしもし!優花です!雪乃さんですか?」
『んー?優花?どうしたの?』
「侵入者がいました!」
『侵入者っ!?』
「はい!この目で見ました!」
『わかったわ。あたしたちが侵入者は捕らえるからあなたたちは部屋に隠れてなさい』
「はい!」
そして、【A•G】全員の侵入者探しが始まった。
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