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#あなたの悪夢

12の悪夢たち。

あなたのお気に入りはどれですか?

『ひとつ』

自分のそっくりさんがいる。最初は端から見た自分はこんな感じなのか!と面白がっていたが、段々とどちらが先に何をしてまた自分が何をしていたか忘れていく。最後自分がどちらかわからずになり存在理由も忘れてしまう。



『ふたつ』

真っ白の空間をただ独り歩いている。歩けど疲れは感じずよいが、誰ひとりここにはいないようでひたすらに人を探す。とうとう疲れ目を閉じると世界が反転し目覚めるのかと息を吐く。――しかし反転後の世界は真っ暗な何もない空間だった。



『みっつ』

目が覚めると右肩が重い。鏡を見ても何も乗ってなどいないしそもそも右肩を払っても何もない。鉛をのせているのかと思う気もしてきた頃に視界のはしにとらえたのは、右肩に見えた血だらけの誰かの、腕。



『よっつ』

貝のベッドの上で海に溺れて呼吸を続ける。苦しくてももがいても身動きはとれない。ただ水面から覗くちらつく光を受けながら、取り込めない酸素を二酸化炭素にかえて海へと還す。



『いつつ』

標本が並んでいる。蝶だけの標本だ。ところどころがぼろぼろになっていて、針で刺されたところが少し痛そうだと思った瞬間。ちくり。指の先をふと見ると蝶に刺された針と同じもの。ちくり、足に刺され痛みが広がり、理解した言葉ひとつ『人間標本』と。



『むっつ』

友人といつものように談笑しているあなた。馬鹿話なんてしたりして、ああ楽しいと笑っている。そう、それ面白かったよね。と、言うと突然辺りが静まって、あれ?と不思議がっているとある一人がこういった。

「ところで、あなた、だれですか?」



『ななつ』

夢オチだと気づいた夢のなか、それならどれだけ好きなことをしたっていい!と普段自分にできないことをひたすらやりこなした。ああ楽しかったとつかの間、そろそろ目覚めないだろうかと待ってみれど起きる気配はない。……起床できないのだ。



『やっつ』

カフカの虫になる話を思い出したのは自分が虫になったから。栄養をとらず、さなぎになって、どろどろになり成虫になる頃、目を開いて見た世界はすべての色が反転して生えた羽は瞬時に灰となる。



『ここのつ』

目の前にあるシャボン玉がはじけるたびにあなたの記憶が消えていく。ぱちん、ぱちん。はじけとんだ記憶の中でなにか大切なものもあったはずなのに、手を伸ばしたそれがはじけた瞬間、自分の中でなにかが弾け消えていった。



『とお』

心の声が聞こえる世界で、笑顔の裏で残忍さを聞き取り、哀しみの裏で人の不幸を大声で笑う声を聞く。耳栓をしてようやく聞こえなくなったと思ったのもつかの間。聴覚をなくした世界の人々の顔が作り物にしか見えなくなった。



『じゅういち』

脳へと激痛が走り痛い痛いと苦しみ出す。頭が割れそうなくらいの激痛は意思をもって語りかけた。「ねえねえお母さんぼくだよ。あなたがお話の中で作ってそれから死んでいった僕だよ」ねえ、昨日作るのをやめたお話を、覚えてる?



『じゅうに』

コーヒーはミルクなしのブラック。馴染みのお店で頼むのは決まってそのメニュー。ことり、今日も深いかおり……なのに変だな、このコーヒー、なんだか鉄の味がして生温い、な。(それからちらりと見えたのは先日失くした私の『小指』)。


2013.May12

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