『もう嫌だぁぁ(爆発)!〜鬱病ロボットと行く、理不尽な町守り日常系〜』
『もう嫌だぁぁ(爆発)!〜鬱病ロボットと行く、理不尽な町守り日常系〜』
『もう嫌だぁぁ(爆発)!〜鬱病ロボットと行く、理不尽な町守り日常系〜』
自警団の詰め所に、今日も変な鉄くずが届いた。
「おい、またこれ自費で買ったのか?」
「違うぞ。町を守るための『最新鋭防犯ドローン』だ」
幼馴染の自警団員・ケンが、胸を張って奇妙な機械を叩く。
見た目はただの巨大な炊飯器。
だが、起動した瞬間にすべてを察した。
ウィィィン、と気の抜けた音を立てて浮く。
そして、画面に表示された文字。【精神同期:完了。現在、鬱モードです】
「……おい、機械が鬱病になってるぞ」
「仕様だ。現代の自警団は、犯人に共感して自首を促すスタイルなんだよ」嘘をつけ。
絶対にフリマアプリで騙されて買ったジャンク品だ。
普通の人間から見たら、ただの欠陥品。
ずるいのは、これが「自警団の備品」という名目で、町の税金から数パーセントの補助金が出ていること。
そして何より、この機械の「本当の機能」が、常識の斜め上を突っ走っていることだった。
「見ろ。ターゲット(空き巣犯)を発見したぞ!」
ケンの指差す先、裏路地をコソコソ歩く怪しい男。
ドローンは、よろよろと力なく男の後を追う。
そして、スピーカーから信じられないほど暗い声を出した。
『はぁ……。どうせ僕なんて、充電が切れたらただの不燃ゴミですよ……。あなたも、盗んだってすぐ捕まるのに、なんで生きてるんですか?』
「精神攻撃かよ!」
あまりに深いネガティブ発言。
犯人は一瞬足を止め、自分の人生を見つめ直すような顔をして頭を抱えた。
ずるい。
普通の人間がこんなこと言ったらただの「お荷物」だが、自警団の機械なら「高度な心理戦」として処理される。
だが、これだけでは終わらない。
男が正気に戻り、ナイフを抜いてドローンに襲いかかった。
「ケン、危ない!」
「フッ、ここからが本番だ。トランス・ホーミング、起動!」
ケンがリモコンの赤いボタンを押す。
ドローンが激しく変形を始めた。パーツがガシャガシャと組み替わり、尖ったトゲのような形状になる。
一瞬、めちゃくちゃ格好いい戦闘形態になるのかと思った。
しかし、完成したのは「全自動で相手の急所に突っ込む、ただの鉄の塊」だった。
『もう嫌だぁぁぁ! 巻き添えにしてやるぅぅぅ!』叫びながら、ドローンは凄まじい速度で犯人の股間に向かって、精密にホーミング(自動追尾)していく。
「待て! それはホーミング違いだ! 単なる自暴自棄の体当たりだろ!」
ズドン! と見事な音が路地に響く。
犯人は声にならない悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちた。
機械側の「うつ病」による自暴自棄エネルギーを、そのまま推進力に変換してホーミングさせる。
これがこの機械の、一番ずるくて、一番最低なシステムだった。
「ふぅ、今日も町に平和が戻ったな」
「お前のドローンのせいで、一人の男の尊厳が爆発したぞ」
泥棒は捕まった。
しかし、自警団の詰め所に戻ったドローンは、また床に転がって『やっぱり僕、生まれてこない方がよかった。電気代の無駄だし』と愚痴をこぼしている。普通の人間が必死に働いて、法律を守って生きている日常。
その裏で、自警団は税金を使って、鬱病の機械をサイコパスのように操り、犯人の股間を爆発させている。
世の中、本当にずるいことばかりだ。
私は深いため息をつき、自警団の次の予算申請書をゴミ箱に投げ捨てた。
気楽に読んで。




