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ラブ ストーリー 貴方の中の私の時間  作者: 穏世青藍


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3/3

エピローグ

 土曜日が来た。

 そのは、彼とお出かけデートだった。

 私は、身支度を整えて、待ち合わせの場所へと向かった。

 もしかしたら…。

 桜並木を尻目に歩いていた時に、ある事が、脳裏をかすめた。

 最近の彼の様子がおかしくなってきたから、ふと、その様な事を思った。

 待ち合わせの場所を遠くから見ると、もう既に、彼が来ていた。

 私に気付くと、手を大きく振って、いつもの様に優しい笑顔だった。

 気付かないふりをしたけれども、彼の目は、とても切ない鈍った光を帯びていた。

 私は、ここからは、スローモーションの様な感覚に襲われた。

 彼が下の方を向いて、そして、また、私の方を見た。


 顔が、…、顔が…、顔が…、…そういう事なのかもしれない…。


 しっかりしなければ…。


 そう思った。

 泣きそうな心を見せずに、いつもの様に、彼に近づいた。

 彼の腕に、手を回さなかった。

 笑顔も、ぎこちなくしてしまった。

 会話は、おあつらえだった。


 とうとう、この日が、来たのね…。

 

 彼の話を聞かなくては。


 いつもの様に、いつもの喫茶店に入った。

 いつもの様に、いつもの席に座った。

 いつもの様に、いつもの飲み物を頼んだ。


 お互いに一口飲み終わると、彼が、ゆっくりと私を見つめていた。

 その顔は、泣いていた。

 私も、抑えきれずに、泣き出した。

 

 嗚呼、嗚呼、嗚呼、嗚呼…。

 とうとう、来てしまったのね…。

 とうとう、この日が来てしまったのね…。

 

 彼が、開口一番に、こう言った。


 おじいちゃんが他界したのはは、もう知っているよね。

 おじいちゃんは、私に家も畑も継いで欲しいと、常日頃から言っていたのも、知っているよね。

 だから、私は会社を辞めて、郷里に戻ることにしたんだよ。

 そして、家も畑も継ぐことにしたんだよ。

 そして…、私は…、来週に、お見合いをすることになったよ。

 相手は、林檎を手伝ってくれているパートの女性だよ。

 前々から、おじいちゃんが、知らない間に、縁談を進めていたらしいんだ。

 だから、私は、それをお父さんから知らされた時に、怒ったんだ。

 でも、おじいちゃんは、即に、他界していたから、おじいちゃんには怒れなかったよ。

 お父さんに怒ったけれども、それがおじいちゃんの私に対する最後の切実な願いだったという事を聞いたよ。

 私は、今迄とても色々としてくれたおじいちゃんに、とても感謝をしている。

 とても、大好きだった。

 とても、抗えない。

 とても、迷ったんだ。

 でも、答えは、初めから…、初めから決まっていたよね。

 私は、君の望んだ答えを、大切にしようと思うんだ。

 私は、君を、愛しているから。

 

 私は、泣きながら頷いた。


 うん…。


 彼は、涙声で、話しだした。


 だから…、だから、別れてほしい…。


 私は、彼の目が、見れなかった。


 この日が、来たんだ…。


 彼は、嗚咽を、しだした。

 私も、こらえきれずに、嗚咽しだした。


 嗚呼、嗚呼、嗚呼、嗚呼…。


 嗚呼…、私達は、私達は、愛し合っていたのね…。


 私達は、心を絡め合っていたのね…。


 私が、望んだ事だもの。

 

 私が、望んだ事だもの。

 

 いいのよ、それで…、私が、望んだ事だもの。


 彼が、それを、叶えてくれた。


 彼が、それを、叶えてくれた。


 彼が、それを、叶えてくれたんだ。


 彼は、ゆっくりと、私に優しい眼差しを注ぎ出した。

 私も、ゆっくりと、彼に優しい眼差しを注ぎ出した。

 私達の目は、涙で光が乱反射していた。

 私達の唇は、涙で光を語っていた。

 私達の頬は、涙で光に彩られていた。

 私達の愛は、止めどなく、溢れていた。

 私達の時間は、ゆっくり、流れた。


 ゆっくり、ゆるやる、見つめ合った。

 最後に見る、愛する人を、見つめ続けた。

 長い、長い、尊い時間が流れた。

 

 そして、お互いに、私達は、笑った。

 いつもの様に、笑った。

 私達の顔は、もう、穏やかだった。

 

 それから、初めて一緒にデートした場所に行った。

 手を繋いでいた。

 夕暮れだった。

 綺麗な、綺麗な、夕日だった。


 最後に、2人で、これをまた見たかったんだ…。


 そう言って、彼が、おでこに、キスをした。

 そして、最後の方キスをした。

 軽い、軽い、キスをした。

 何も言わなくても、そのまま、抱き合った。

 彼の腕が、きつかった。

 離れようとしたけれども、腕が背中に回ったままで、私を離さなかった。

 

 忘れないよ…。


 彼が、そう言った。

 

 絶対に、忘れないよ…。


 また、嗚咽しだした。


 私は、彼の目を見て、微笑んだ。


 有難う…。


 そう言って、彼の頬にキスをした。


 彼は、目に涙を溢れさせながら、また、私を抱き寄せ、泣き出した。

 暫く、そうしていた。

 私は、そっと、頭を彼の頭に擦り寄せた。

 少し迷って、 彼の肩に、頭を乗せて、暫くずっとそのままだった。

 気持ちが落ち着いた様だった。

 そして、私は彼に、頭突きをした。

 彼は、笑っていた。

 頭をぐしぐしと撫でてくれた。

 そして、また、抱き合った。

 最後の温もりを、静かに、静かに、確かめ合った。

 そうして、また、手を繋ぎ、ゆっくり、ゆっくり、歩いていった。

 そして、彼の車まで行って、私の家の側のコンビニエンスストアまで、送ってもらった。

 車が、止まった。

 もう、終わりの時が来た。

 私は彼の顔を、最後にしっかりと見ておきたかった。

 けれども彼は、運転席のドアを開けて、外へ出ていってしまった。

 すると、助手席のドアを、空けてくれた。

 最初、何が起こっているのか、分からなかった。

 それは、彼なりの、とびきりの優しさだった。

 あんなに面倒臭がっていた彼が、助手席のドアを開けてくれた。

 その顔は、とても真面目で、微笑みながら、泣いていた。

 私も、嬉しさを隠しきれずに微笑んで、泣いていた。

 そして、これで、本当に終わってしまうのだと、認識した。

 彼の顔を、じっと見つめた。

 彼も、私の顔を、じっと見つめた。

 お互いに、深く息を吐いた。

 そして、家のほうへ向かいながら、歩き出した。


 終わる、貴方の中の私の時間。

 終わのね、貴方の中の私の時間。

 終わってしまうのね、貴方の中の私の時間。


 忘れないで。


 忘れないで。


 忘れないで。


 忘れないでね。

 

 貴方の中の私の時間を。


 通りすがりの関係じゃない。

 

 愛を注いだ日々を。


 愛に涙した日々を。


 愛で暖めあった日々を。

 

 私達は、何処までも、何処までも、お互いに思い合っていた。

 何にも負けない、惹かれる思いがあった。

 何にも負けない、溢れる思いがあった。

 貴方の中の私の時間は、私の中の貴方の時間だった。

 2人で1つの世界だった。

 その中を流れた時間は、お互いを見つめ合って暖かだった。

 その中を流れた時間は、お互いを確かめ合って暖かだった。

 その中を流れた時間は、お互いを支え合って暖かだった。

 貴方が注いだ愛の言葉を、私は一生忘れないでしょう。

 貴方が注いだ愛の思いを、私は一生忘れないでしょう。

 貴方が注いだ愛の時間を、私は一生忘れないでしょう。

 これからは、この世界の何処かで、それぞれ生きていく私達。

 貴方の中の私の時間は、今日で、今日で、終るのね。

 私の中の貴方の中の時間も、今日で、今日で、終るのね。

 

 彼が、立ち止まって、私の方を見た。

 優しい、優しい、眼差しだった。

 彼が、息を、深く、吸い込んだ。


 今迄、僕に愛を教えてくれたのは、君だけだった。

 今迄、僕を愛してくれたのは、君だけだった。

 今迄、僕が愛したのは、君だけだった。


 きっと、きっと、僕が愛し続けるのは、君だろう。

 心の底で、愛し続けるのは、君だろう。 


 だから、だから、泣かないで。

 君の選んだ事だから。


 僕は、君の為に、強くなる。

 必ず、君の想いを、遂げてみせる。

 僕は、君に愛されていたいから。

 ずっと、ずっと、君に、愛されていたいから。

 死んだ後も、ずっと、ずっと、君に、愛されていたいから。

 だから、僕は、強くなる。

 君の為に、僕は、強くなる。

 

 今迄、有難う。

 体には気を付けて。

 息災で。

 さようなら。

 

 そう言って、私の側を離れていった。


 少し離れた所からで、大きな声で、私を呼んだ。


 君を、愛している。

 愛している。

 …、何回も繰り返して叫んでいた。。

 

 君を


 声が裏返った。


 愛してる。


 その目は涙で溢れていた。

 

 愛している。

 …、何回も何回も繰り返して叫んでいた。


 ずっと、ずっと、愛している。

 

 彼は、ずっと、ずっと、叫び続けた。

 声が、段々、深い悲しみになっていった。

 突然、わーっと、叫びながら泣き出した。

 体ごと崩れ落ち、膝を付き、手を地面に付け、大きな声で泣き出した。


 彼が、彼が、壊れちゃう。

 

 私はそう思った。

 私は駆け寄ろうとした。 

 即に、彼を、抱きしめたかった。

 でも、彼が、こう言った。

 

 来ちゃいけない!!!

 来ちゃいけない!!!

 来ちゃいけない!!!

 

 私は、はっとして、息を呑んだ。

 

 君は、来ちゃいけないんだ!!!

 君は、来ちゃいけないんだ!!!

 君は、来ちゃいけないんだ!!!


 僕は、僕は、強くなる!!!

 君の為に、強くなる!!!

 幸せな家庭を作ってみせる!!!

 君の夢見た幸せな家庭を作ってみせる!!!

 それが、僕の、出した答えだから!!!

 それが、僕の、許した答えだから!!!

 それが、僕の、認めた答えだから!!!

 そして…、そして…、そして…、

 それが、僕の、プロポーズだから!!!

 それが、僕の、最初で最後のプロポーズだから!!!

 それが、僕の、とても愛した君への最大級のプロポーズだから!!!

 

 私は、彼を、強く意識した。

 私は、彼を、強く認識した。

 私は、彼を、強く許識した。


 嗚呼…、かなわない。

 嗚呼…、嗚呼…、かなわない。

 嗚呼…、嗚呼…、嗚呼…、かなわない。

 

 私は、大声で、彼に叫んだ。

 

 不束者ですが、謹んで、喜んで、お受け致します!!!

 末長く、宜しくお願い致します!!!

 貴方を生涯、支えます!!!

 貴方の心の底を、生涯、支えます!!!

 貴方の中の私の時間を、生涯、支えます!!!

 生涯、生涯、支えます!!!

 だから、どうか、泣かないで!!!

 私達の世界は繋がっているわ!!!

 だから、どうか、泣かないで!!!

 私は、貴方の側にいる!!!

 ずっと、ずっと、側にいる!!!

 貴方の心の底の、側にいる!!!

 貴方の中の私の時間の中の、側にいる!!!

 だから…


 声が、裏返った。

 涙が止めどなく、溢れていた。

 私は水色の優しい暖かみのある世界に、いつの間にかに吸い込まれていた。

 決心した。


 彼を、支えよう。

 彼を、支えよう。

 彼を、支えよう。


 彼を、いつまでも、支えよう。

 彼を、いつまても、何処かで、支えよう。

 彼を、いつまでも、きっと、何処かで、支えよう。

 

 一緒にいなくても、私達は、心の底が通い合っている。

 一緒にいなくても、私達は、心の底が愛で溢れている。

 一緒にいなくても、私達は、心の底が絡め合っている。


 出会えたんだ。

 出会えたんだ。

 私は、出会えたんだ。

 嗚呼、何て素敵な事だろう。

 私は、心の底から、一生添い遂げられる人に出会えたんだ。


 支えよう。

 支えよう。

 彼を心の底から、支えよう。


 受けよう。

 受けよう。

 彼のプロポーズを、受けよう。

   

 愛を注ごう。

 愛を注ごう。

 溢れる私の愛を、注ごう。


 離れよう。

 離れよう。

 貴方の別の暮らしから。


 離れよう。

 離れよう。

 貴方の別の日常から。


 離れよう。

 離れよう。

 貴方の別の世界から。


 私は、貴方の中の私の時間で、繋がっている。

 貴方は、私の中の貴方の時間で、繋がっている。

 私達は、私達の中の時間の中で、繋がっている。


 そう、きっと、それでいい。

 私達は、きっと、それでいい。

 いつまでも、いつまでも、それでいい。


 私は、彼を、愛している。

 彼は、私を、愛している。

 それは、きっと、永遠に。


 いいのよ。

 いいのよ。

 それでいい。


 いいのよ。

 いいのよ。

 それでいい。


 いいのよ。

 いいのよ。

 それでいい。


 貴方を私は支えたい。

 貴方は私を支えたい。

 そして、それは、別の愛の形。

 普通の世界とは違う、別の愛の形。


 いいんだ。

 いいんだ。

 これでいいんだ。




 …だって、仕方がないじゃない…。

 

 そう思った。

 そうなんだ。  

 私は、本当は、そうなんだ。

 やっと、理屈じゃなくて、心の底から、答えが出た。


 嗚呼、私、悲しい…。

 嗚呼、私、悲しい…。

 嗚呼、どうしよう、私、悲しい…。

 

 本当の私が、泣き出した。

 今迄の私は、私達の抱えている現状を打破することが精一杯で、私の心の底の答えを見つめてあげていなかった。

 私は、強がっていたんだ。

 私は、心の底にアクセス出来ないくらい、私の心を殻に閉じ込めていたんだ。

 可哀想。

 可哀想。

 私が可哀想。

 でも、理屈で出した答えは、間違っていない。

 私は、そう、思った。 


 覚悟しよう…。

 

 すうっと、息を深く吸い込んだ。

 そして、彼に向かって、微笑んだ。

 彼が愛してくれた私の笑顔を、最後に見せたかった。

 もう、お互いに、泣いてはいなかった。

 お互いに、心の底に眠る答えを、曝け出せた様だった。

 理屈ではなくて、愛の答えを見つけた。

 愛する者に注ぐ、愛の形を見つけた。

 彼も、こちらを向いて、微笑んだ。

 そして、暫くすると、彼は、こう言った。


 あともう一つ、君の願いを叶えよう。

 それは、私の願いでもある。

 私達が、この先、いつか親を看取って、お互いに、フリーだったのなら、私は君をもらいたい。

 私は、君を、お嫁さんにしたい。

 君の全ての時間が欲しい。

 君の全ての時間を、私に注いでほしい。

 君は、それで、きっと、いいよね?

 私は、この先、どうなるのか分からないけれども、それまで、夢を見ている。

 君を側で見つめていける、夢を私は見続けている。

 私は、一生懸命に生きて、最後に君を妻にする。

 私の妻になって下さい。

 一生、一生、側にいる。

 君じゃなきゃ、駄目なんだ。

 君の願いを叶えてあげる。

 だから、どうか、私の願いも、叶えて欲しい。

 君の全ての時間を、私に注いで欲しい。

 ずっと、ずっと、ずっと…側にいて欲しい。

 

 そう言って、私の方を、暖かな眼差しで見つめ出した。


 さぁ、笑って。

 私に、君の笑顔を見せて。

 私が愛した君の笑顔を見せて。

 そう、その自然な笑顔が、私は好きだ。

 その笑顔を心の底の側に置いて、私はこれから歩んでいく。

 君への心にある愛の火は消えない。

 ずっと、ずっと、灯し続ける。

 そして、いつか、君を、妻にする。


 私は、頷いた。

 そして、心の底から笑顔を注いだ。

 涙が、とても溢れてきた。

 彼に、こんな激しい感情があったなんて、知らなかった。 


 彼は、私に駆け寄った。

 彼は、私の頭を撫でた。

 優しく、私の頭を撫でた。

 大きな手で、優しく、私の頭を撫でた。

 そして、手を絡めた。


 嗚呼、お別れの時が来たのね…。

 

 私は、絡めた手を強く握り返した。

 暖かな気持になった。

 笑って欲しかった。

 自然な笑顔が欲しかった。

 だから、指と指を絡め合い、関節でぎゅっと、力を入れた。


 痛っ!!!

 

 彼が、そう言った。


 ふふふ…。


 私は、笑った。


 彼も、指に力を入れた。

 

 痛いよ。


 私が、そう言った。


 そして、お互いに、笑った。


 暫く、お互いの笑顔を見つめ合っていた。

 彼は、いつもの様に大きい手で、私の頭を何回も何回も優しく撫でていた。


 そして…。

 そして…。

 そして…。


 そして、私達は、自分達の世界に戻っていった。


 もう、泣いてはいなかった。


 私には、これから、一生、彼を支えていかなければならなかった。

 一生懸命に生きて、彼が心配しない様に、生きていかなければならなかった。

 彼がこれから歩んでいく未来を邪魔しない様に、共に、この世界の何処かで愛を注いでいかなければならなかった。

 そして、それは、私の願いだった。 

 私の、私なりの、愛の形だった。

 彼に、人並みの人生を送ってもらいたいという、私の答えだった。

 よくやった。

 よくやった。

 よくやった。

 よくやった。

 よくやった。

 よくやった。

 よくやった。

 よくやった。

 よくやったわ、私。

 本当に、よくやったわ。

 

 私は、愛を注げた。

 私は、緩やかな愛を注げた。

 私は、最大級の愛を注げた。

 

 そして、これからも、愛を注ぐ。

 世間一般とは別の形で、愛を注ぐ。

 貴方の中の私の時間は、まだ続く。

 きっと、それは、永遠に。

 ずっと、ずっと、ずうっと続く。

 この愛が終わるまで、ずっと、ずうっと、続く。


 私は、きっと、これでいい。

 彼も、きっと、これでいい。

 私達の愛は、これでいい。


 貴方の中の私の時間。

 私のの中の貴方の時間。

 私達の中の私達の時間。

 今日も、何処かで、刻んでる。

 何処かで、何処かで、刻んでる。

 ずっと、ずっと、刻んでる。

 それは、尊い、愛の形。


 それが、私の答えだった。

 それが、私の出せた答えだった。

 それが、私の心の底を出せた答えだった。

 

 




 私達は、今、それぞれの世界で生きている。

 月に一度は、電話で、話をする。

 たまに、彼の彼女と共に、お茶をする。

 私も、私の彼を、連れて行く。

 その彼は、彼が私の事を心配してくれて、会社の人の中から私を任せられる人を探して、根回した人らしかった。

 その彼は、始めは、もう、結婚はしないつもりだったそうだ。

 彼からの熱烈なアタックに気圧されて、二つ返事で承諾をしてしまったらしい。

 彼に、そんな、勇気があるとは思ってもいなかった。

 私の事をとても心配してくれていたという事が、私の心の底を暖めた。

 彼と別れた後に、今の彼から、その話を聞いた。

 内緒だと言われたので、彼には御礼は言っていない。

 お互いに、それぞれのバーナーに、私達の事を、素直に話した。

 最初は、色々、咎められた。

 でも、その内に、認めてもらえる様になった。

 とても、深く、感謝している。

 そして…、そして…、そして、彼は彼の家庭を持った。

 色々、苦労はしているみたいだけれども、子供にも恵まれ、とても幸せそうだ。

 いつも、訳あり品で出荷出来ない野菜や林檎を、沢山贈ってくれる。

 旬の野菜や林檎は、とても美味しい。

 私は本当は林檎が苦手だったけれども、色々な種類の林檎を食べている内に、美味しく食べられる様になった。

 特に、シナノスイートとぐんま名月とはるかがお気に入りだ。

 甘くてとても美味しい。

 沢山の野菜や林檎を贈ってくれる御礼に、私は素敵だと思うCDと美味しそうなお菓子を贈る。

 そして、何時しか、毎年、彼の家族が写った写真付き年賀はがきが送られてきた。

 初め、私は、それを見て、心が切り刻まれた。

 彼の側には、奥さんと子供達がいた。


 彼の隣にいるのは、彼の隣にいるのは、私だった筈なのに…。

 

 分かっていた結果だったけれども、心の底は、不安定になった。

 とても、悲しかった。

 数年は、年賀はがきを直視出来なかった。

 そして、私も、家庭を持った。

 彼が熱烈にアタックして根回してくれた人だった。 


 俺しかいないだろう。俺の側にいろ。仕方ないから貰ってやる。

 

 仕方がないは、余計だと思った。

 でも、私は、心の底から、感謝した。

 夫は、再婚者だ。

 子供がいた。

 私は、母になれた。

 嗚呼、私は、母になれたんだ。

 何て素敵な事なんだろう。 

 私は、いつの間にか、彼の年賀はがきを直視する事が出来る様になった。

 やはり、色々、苦労はあるけれども、夫と相談して、決めている。

 子供達は、私に慣れるまで、大分かかった。

 本当は、まだ、無理をしているのもしれない。

 受け入れようとしてくれている事が、愛おしかった。

 大切に、大切に、愛を注いだ。

 素敵な家庭になった。

 子供が成長して家を出ていったので、私は夫とボランティアをすることにした。

 週に1回だけだけれども。

 町内会のお花を植えている。

 とても、綺麗だ。

 彼も、たまに、見に来てくれる。

 綺麗だと、褒めてくれる。

 私達は、それが、嬉しい。

 毎年、毎年、前年と同じ花を植える季節になると、嗚呼、歳を取ったなぁと、思う。

 今、私は、心が満たされて、愛で溢れている。

 とても、素敵な人生になった。

 

 

 

 友としての道を、私達は選んだ。

 愛のある友になった。

 貴方の中の私の時間は、これからもずっと刻まれていく。

 私の中の貴方の中の時間も、これからもずっと刻まれていく。

 私達の中の私達の時間も、これからもずっと刻まれていく。

 私は、きっと、それでいい。

 彼も、きっと、それでいい。

 私達は、きっと、それでいい。

 だって、それしか選択がなかったのだもの。  

 一生懸命に、一生懸命に考えて、私達の置かれた状況に合った選択をするしか、出来なかったのだもの。

 欲しいものを一つだけ、手に入れる事が出来るのならば、今でも、私は、迷わず、彼を選ぶ…、と言いたいけれども、私は、今の私との家庭の生活も、悪くはないので、これで良かったと思っている。

 そして、私達の置かれた状況は、私達にはとても厳しすぎて、今ある現実が、一番ベターな選択だった。

 だから、私は、これでいい。

 それに、夫は、とても私を大事にしてくれている。

 小言は多いけれども。

 とても、とても、感謝している。

 夫を、幸せにしてあげたい。

 私は、そう出来る様に、毎日、毎日、夫に愛を注ぐ。


 


 これは、私のケース。

 これは、私の選択。

 これが、私の愛の形。

 他の方は、分からない。


 今、この日本は、少子化社会だ。

 私の様に、一人っ子同士の恋愛も沢山あるだろう。

 どちらか一方の家庭に入るという事は、その入らなかった方の家庭が困るだろう。

 揉めている家庭も多いだろう。

 私の選択が、正しかったのかどうかは、分からない。

 もっと頭のいい人ならば、何かいい考えがあっただろう。

 でも…。

 人それぞれだ。

 人それぞれに、与えられた条件が違う。

 人それぞれの心の底も違う。

 どの選択をしても、その後の人生に愛を注いで、そこから愛の花を咲かせてあげればいい。

 私達だけの、事では無いかもしれない。

 貴方なら、どう生きる?

 貴方なら、どういう選択をする?

 貴方の愛の形は、どういうの?

 愛する人の中の貴方の時間は、貴方に何をもたらすの?

 どの選択をしても、皆、幸せになります様に。

 私は、そう、祈っています。


 





 最後の迄、お読み頂いて、有難うございました。

 私なりの、愛の形を書いてみました。

 今、この日本は、少子化社会です。

 彼等だけの話ではないかもしれません。

 他の方達は、どういう選択を乗り越えていっているのか、不思議です。

 これは、フィクションです。

 貴方にとって、素敵な愛の形が見つかります様に。

 愛を込めて。


           終

 

 


 

 

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