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かくや姫は今夜も配信中  作者: ゆずさくら


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竹の危機

 授業が始まってすぐ『れとろゲーム研究会』から、五月の連休に新人歓迎合宿をやるという話が入った。

 桐谷とひかるは授業の合間にその話をする。

「先輩とか、他の友達に聞くと、普通、歓迎会って、そこら辺の飲み屋とかでやるらしいんだ」

「だけど私たちは年齢的に飲めないじゃない」

「飲み屋って言っても、ノンアルコールだよ。実態は知らないけど」

 ひかるは思った。

 泊まりの旅行。サークルの行事なら、両親にも言い訳がたちやすい。

 これはチャンスかも……

(しゅん)はいくの?」

「歓迎される側が『行かない』選択はまずいんじゃないかな」

「そうよね!」

 ひかるは調子の外れた声を出した。

 自分で気づくと、出した言葉が引っ込む訳でもないのに、口を手で押さえた。

「お泊まりの旅行とか行ったことなくて」

「?」

「どんなものが必要なのか、学校が休みの時、買い物に付き合って」

 桐谷(きりたに)は頷いた。

 二人はその日の講義が終わると『れとろゲーム研究会』に顔を出すことになった。

 LINKアプリに連絡が入っていたのだ。

 構内を二人で歩いていると、ひかるはサークル勧誘の際に『ゼルダ姫』のコスプレをしていた女性を見かけた。

「えっと……」

 ひかるが名前を思い出せずにいると、桐谷が言った。

白石(しらいし)彩花(あやか)先輩だっけ?」

 ひかるは彼が他の女の人の名前を覚えていることに、少し嫉妬した。

「綺麗な女性(ひと)だよね」

 白石が同じ年次であろう男子生徒二人に挟まれ、楽しそうに話している。

 学校の男女比率を反映しているのか、それとも彼女の学部・学科の男女比率を反映しているのだろうか。

 桐谷とひかるが所属する学科は、理系のためか男女比率が極端に男性に偏っていた。

「声をかけるわけにも行かないだろう」

 二人は白石先輩を通り過ぎ、研究会の部屋についた。

 中には丸顔の先輩がいた。

「よろしくお願いします。私が桐谷(きりたに)で……」

 先輩は立ち上がり、軽く会釈をして言った。

「君たちのことは聞いているよ。桐谷くんと、流星くん。ボクは円谷(つぶらや)。ウルトラマンで有名な円谷さんと同じ字を書く」

 ひかるたちは、苦笑いしながら首を傾げた。

「と、特撮とかみないんだ?」

「え、ええ、すみません。私に至ってはゲームすら、あまり……」

「ところで、二人は『アヤ』様みなかった?」

 桐谷はひかるの顔を見て、頷く。

「白石先輩のことですか?」

「うんうん、そう。知っているよね?」

「ええ、3号館の近くで見かけました。まだいるんじゃないですかね?」

 円谷は二人と入れ違うように戸口に向かった。

「ちょっと行ってくる……」

 円谷が部屋を出ていくと、桐谷とひかるは小さい声で話しあう。

「白石さんに『様』ってつけてた」

「確かに聞こえた」

「ここはオタサー。先輩がオタサーの姫でも不思議じゃない」

 そんなことを言っていると、扉の方から声がする。

『アヤさん、これをどうぞ』

『ありがとう』

『アヤさん今日は何時までいらっしゃるんですか?』

 円谷と白石の声だけではない。三人目の声がした。

 すると扉が開く。

 扉の正面には白石が立っているが、扉のノブは遠藤が持っていた。

 ゆっくりと白石が部屋に入ってくる。

 背後から続くようにして、円谷と遠藤が入ってきた。

「二人が桐谷さんと流星さんね。実際に会うのは勧誘の時以来よね。今日は新人歓迎合宿の件で集まってもらって御免なさい」

 白石が言っている間に、遠藤がタブレットを取り出し何か操作する。

「今から場所を決めるわね」

 遠藤の持っているタブレットには国の地図が表示されていた。

 白石は目を閉じ、指を出した。

 遠藤がタブレットをそっと近づけていく。

「決定しました」

 地図にピンが立っていて、遠藤がピンチアウトしていくと詳細がはっきりしていく。

 桐谷とひかるも覗き込んだ。

 そこは偶然にも二人の記憶に残る地形が表示されていた……




 県職員の佐藤大吾は、笑っていた。

 例の竹林の地質調査許可が下りたからだ。

 今まで熊退治のついでに竹林を訪れていたが、これで直接竹林を捜索できる。

 県が竹林の調査を許可した理由として、最近、百二十年に一度の竹の開花があった事が理由の一つだった。

 開花すると竹は枯れる。

 枯れた竹の地盤は、急速に弱くなると進言したのだ。

 災害につながるとなれば、県で調査が必要だ。

 あとは同じような案件がある中、どうやって順位を繰り上げるかだけだった。

 佐藤はその担当に説明し『例の竹林』の調査優先度を上げた。

「今回は、ある程度地面を深掘りして問題ないはずだ」

 掘って何か(・・)に行き当たれば……

 竹林のプロジェクション・マッピングの性能は、星野の調査によると『ものすごいコンピュータ』に相当するものが計算し、映し出したと推測されていた。

 人の目を避けるため、大掛かりなプロジェクション・マッピングを行うほどの何かが埋まっている。

 佐藤は県庁の建物から竹林のある山を見つめていた。

「誰が、どんなものを埋めたのか確かめてやる」

 星野の口利きで、県庁近くの大学が協力してくれることになっている。

 現地には、小型のボーリング機や、金属探知機、地中レーダーなどの装置を持ち込む。

 科学的な調査によって、不思議な『めまい』についてもなんらかの答えが出るはずだ。

 さらにあの女とつながる何かが見つかれば、いうことなしだ。

 来月になれば何もかも明らかになる。

 佐藤は妄想する。

 竹林の地中に未知の物体が埋まっていて、大規模な掘り出し作業が始まる。

 作業の先頭に立って、指揮している自分。

『世紀の大発見』

 そんな見出しがネットニュースになり、テレビでも報道される。

 コメントするためテレビカメラの前に立つ自分。

 佐藤はそう思うと、いつの間にか顔に笑みが浮かんでいた。




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