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かくや姫は今夜も配信中  作者: ゆずさくら


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13/22

合格発表

 星野は県職員である佐藤から送られてきた情報を確認することにした。

 リンク先は『かぐや姫は今夜も配信中』となっていた。

 ライブ配信で、スパチャをもらって稼ぐタイプのサイトだ。

「ちょっと加工してあるが、確かにあの女だ」

 固定の画面が終わると、『かぐ配』のオープニングが始まった。

 卵形の宇宙船。

 細い足が出て着陸。

 突然、出口が現れ、中からアニメ顔のアイコンが飛び出してくる。

「かぐや姫…… まさか、本当に『月の人』と言うわけでは……」

 星野は思う。

 そんなわけあるまい。

 俺たちが生まれるずっとずっと前にはもう、アポロ十一号は月に行ったのだ。

 その時、月はただの乾いた衛星であることが明らかになっている。

 月には『宇宙人』なんていないのだ。

 いや、本当にそこで終わって良いのだろうか。

 画面では例の女が、カグヤと名乗る配信者として、ワイワイ楽しそうに喋っていた。



「はい。今夜も始まった『かぐや姫は今夜も配信中』です。ずっと一人で話しを回すのは私『カグヤ』と申します。いつもの皆さんこんばんわ。お初の方もこんばんわ、ついで登録してってねっと」

 コメント欄が騒がしい。

『いつになく明るい』

『化粧の雰囲気違う』

『やけくそぎみなハイテンション』

 ひかるはコメントを拾い読みしながら、息を整えると、

「今日は嬉しいお知らせがあるよ」

 といった。

『だからハイテンションなんか』

『ソウ状態ってやつ』

『どんな嬉しいこと?』

 ひかるは隠しきれない笑顔をたたえながら、言う。

「カグヤ、来季から大学に通うことになりました!!」

 再びコメント欄が壊れたように流れる。

『おめでとう??』

『学校行ってない定期…… ってウソだったん!?』

『エイプリルフールネタ定期』

『誇大妄想乙』

『どこ大? はい論破』

 コメントが落ち着くのを待って、ひかるは話す。

「そう。学校がダメで行ってなかったんだけどぉ。大学なら良いんじゃねって思って。時期的には、ギリギリで高卒認定が受かって、その流れで共通テスト、二次試験という感じで」

 ひかるは、事実を言いすぎた、と思った。

 案の定、コメント欄に書き込みがある。

『それ国公立の流れ』

『で、どこ大?』

『私大でも併用あるし』

『ウソくさ。最短すぎね?』

『学歴詐称議員たちも、最初はこんな小さなウソだったに違いない』

 ひかるはとぼけるように、話題をズラす。

「楽しみなんだ〜 キャンパスライフ。映画とかドラマとかの見過ぎなのかなぁ?」

『意外に勉強の比重重い。遊べないよ』

『結局、入学直前が一番楽しかった〜 免許取りに行ったりね』

『遠い思い出』

『ねぇ、どこ大』

 大量のコメントと共にお祝いのスパチャが入ってくる。

「あのあの、お祝いいただくのは良いのですが。大学名を聞いてきても答えられません。それと大学に問い合わせるなど、大学特定する行為はしないでください。もしかしたら私の大学『仮想空間』にあるかもしれませんし」

『仮想空間にある大学合格でスパチャ送ったやつ(笑)』

『仮想空間なら大卒認定不要じゃね?』

『時代は仮想よ』

 コメントに苦笑いしながらひかるは配信を続ける。

「配信は続けるつもりだから、よろしくね」

 そして、画面外からリップを取り出してカメラに向ける。

「ここからは毎度お馴染みのおすすめコスメ&ファッションのコーナー」

 カグヤが気になるコスメやファッションを一方的に説明していく時間が始まった。

 いつものように、配信が終わると、ひかるはPCの状況を確認した。

 完全に配信が終了していることを数度、確認するとため息をつく。

「よかった」

 彼女は昼の出来事を思い出した。



 ひかるはキリヤと会っていた。

 そこは以前、女性がカッターで切りつけてきたカフェだった。

 二人は同じ端末(・・・・)で合格発表を確認しようとしていた。

 横並びに座り、目の前に置いたキリヤのノートPCが起動画面になった。

 ひかるは言う。

「ご両親に一緒に確認しなくても、よかったのですか?」

「君は大丈夫だったの?」

「多分、二人とも私が合否のラインに乗っているとは思っていないんです。ずっと慰めの言葉ばかりを探していて」

 確かにこんな短期間のつけ焼き刃で大学に受かると思う方が変わっている。

 ひかるの養父母はとても常識的な人だ。

 最初に相談した時も、受かる前提の物言いではなかった。

「それは辛いね」

「このパソコン、ネット繋がるの?」

「このカフェは、フリーWiーFiがあるんだ」

 だからこの前のビー・カフェではなく、こっちにしたんだ。

 と、ひかるは思った。わざわざ事件があったカフェにしなくても良いのに、と思っていたのだ。

 キリヤがPCを操作して、ネットに繋げ、合格発表をしているサイトを表示した。

「画像で表示されているから、文字では検索できないんだ」

 ひかるは画面に顔を近づけると、自然とキリヤとの距離が近づく。

「じゃあ、表示するよ」

 ページを進めると、画面に合格者の受験番号が並んだ。

 彼がページを進める前に、目を合わせてくる。

 目を合わせると、合意と判断してページが進む。

「!」

 ひかるの番号が来る前に、彼の番号が掲載されているのを確認した。

 お互いの番号は見ていないことにしているが、同じPCで見ているのだ。いやでも彼の番号は見てしまう。

 そして彼自身、番号を見つけているはずだけど、ひかるには何事もないかのように振る舞っている。

 二人の目が合うと、ページを進めた。

 このページだ。

 ここに無ければ…… 落ちている。当然、補欠合格というパターンもなくはないが、この場では彼の合格に水をさすように思える。

「えっ……」

 すごく小さな声だったが、とても近くにいる彼の声は、ひかるの耳に入った。

 直後にひかるが自らの番号を見つける。

 どういう意味で『えっ』という発言をしたのか。

 ひかるは悩みながら、その気持ちを押さえ込んで、言った。

「どうだった?」

「同時に言おうか」

 キリヤが指で静かにカウントダウンする。

『受かった!』

 お互い、画面で確認済みのことを声に出すと、一気に解放された。

「すごいよ!」

「キリヤの方がすごいよ、自分で決めた目標をちゃんとやり遂げたんだから。私はただキリヤについて行っただけ」

「君が受かる、というのは正直期待してなかったんだ。だからさっき『えっ』って思った。本当に失礼だよね。けど、自分で言うのはなんだけど、難関大だから」

 やっぱりそういう意味だったのか。

 ひかるは少し気持ちが下がった。

 両親と同じで、この短期間ではどうにもならないと思っていたのだろう。

 確かに、自分自身も『エリシュア人』と地球人という根本的な違いが無ければ、無理だったように思える。

 ひかるはバッグに目を落とす。

 あとは『竹』による学習指導を受けられるのも、他の受験生に比較して有利だった。

「今日から君の配信を見るの再開する」

「?」

「もし落ちてたら、この一年も受験に全力をかけなければならなかったから」

 そのキリヤの笑顔を見て、ひかるはしあわせな気持ちになった。




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