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いってらっしゃい

作者: 網笠せい
掲載日:2025/09/02

 テレビ、インターネットと主要メディアが移り変わっていく中で、ラジオの役割ってなんだろうか……。

 僕は漠然とした疑問を持ちながら、ラジオのボリュームを上げた。ざらざらとした音質には味がある。

 最近ではインターネットでラジオを聞くことができるけれど、音質がきれいで、こういった味のあるノイズはあまり聞かなくなってしまった。

 ラジオのノイズは雨音のようで、ゆったりとした時間に合っている。朝食のコーヒーを飲みながら、僕が聞いたことのない曲に耳を澄ます。こういう曲が流行っているのか、はたまたDJの趣味なのかはわからない。知らないものとの出会いは新鮮だ。

 インターネットでも「おすすめ」機能で新しいものを知る機会はあるけれど、ラジオで聞く知らない音楽は、もう少し人の気配がある。誰かの選んだ、誰かの好きな曲。その誰かについて、知っているようで知らない、不思議な距離感がある。


「それでは、いってらっしゃい」


 ラジオから聞こえてきた声に「いってきます」と返して、僕はラジオの電源を消した。

 急にしんとして、僕の声が部屋の中に響いた。靴を履いて玄関ドアを閉める。ゴミを出そうとしていた隣の住人と目が合った。小さく会釈する。ラジオのDJよりもよく知らない間柄だな、と僕はおかしくなった。もっとも、ラジオのDJは僕のことをまるで知らないだろうけれど。

 ラジオのノイズのようなままならなさが、僕は嫌いじゃない。

 重たい扉がゆっくりと閉まる音が、マンションの廊下にこだました。

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 最新機種では混じらぬラジオノイズも愉しむ余裕を交えながら、コーヒーや曲を嗜み、近隣の住民とトラブル・いがみ合いなく会釈する何気ない日常。  刺激や背徳、変動に満ちたファンタジーや恋愛もの、ホラーには…
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