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異世界怖い  作者: 名まず
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##学園祭のお化け(後)


 に寄り添い商人は外に出る。


女性とはいえ、意識を失った人間一人の体は重いので、反対側から お化け屋敷をやっていた生徒が一人、支えるのを手伝ってくれている。

たいへん助かる。

若い頃とは違って、運動不足ということになっている。


お化け屋敷の外に出ると、男の使用人が駆け寄ってくる。


「旦那様、どうなされました。」


男は軽く事情を説明し、妻を近くのベンチで休ませるよう指示する。


使用人も、今は詳しい事情より 奥様の体調の方が優先だ。

すぐに、奥様の看病に徹する。


を運ぶのを手伝ってくれた学生にお小遣いを渡し、戻ってもらう。


「私も疲れた。」と、使用人にトイレに行くことを伝え、その場を離れる。


トイレの横を通り、木の影に入ると、ガサガサ、と、男が出てくる。


商人風の男・・・服装からは裕福であろうということがうかがえる。


だが、それだけだ。 それ以外 特に特徴のない 普通の商人の男。


ただし、相手にとって、自分は特徴的な容姿をしている。

自分と同じ服、同じ顔というところが・・・。


「どうだった。妻は大丈夫なのか。あの悪霊は払えたのか。」


矢継ぎ早に質問する自分に、もう1人の自分は笑顔で、


「もちろん。

奥さんの悪霊はきっちりと払えました・・・もう大丈夫です。

気になるようでしたら、悪霊除けのお守りは そのまま持っておいていただいてもけっこうですよ。

あとは・・・これは今日以降の予定です。

奥さんは精神的に参っているので、何日かカノヴァの街に滞在し、観光でも楽しんでください。

塞ぎこむより、気分転換をした方が精神的にはいですよ。

奥さんは遠慮するかもしれませんが、ここは旦那さんが根気よく待ってあげてください。

時間を掛けてでも、奥さんを外に連れ出してください。

もちろん体調には充分気を付けたうえでのことですが。

ここで奥さんに寄り添えないようでは、また同じことの繰り返しですよ。」


自分の姿をした他人から渡されたメモを見る。


今日・明日の予定は書かれて無いが、カノヴァ公国の街のお薦めの屋台、回る順番、船での観光・有名なレストランの予約まで書かれている。


頭を下げて受け取る。


同じ姿をした別人と別れると、自分の妻の元に足を急がせた。




 商人の男が頭を下げて去っていく。


その様子をにこやかに見送るが、関心はすでに別の事に移っている。


の思考の対象は お化け屋敷のこと。


繋がる霊的な線、今回・・・は、はっきり見えたようだが、前回の悪霊の分体を喰った時から、ヒタヒタ様と呼ばれるあの悪霊とのパスは繋がっていた。


あの悪霊はずっと呼ばれ、引っ張られ、その身を少しずつ喰われていたのだが、あのたちの悪い悪霊が、ただ黙って消される事を受け入れるとは思っていなかった。


黙って受け入れるような性根しょうねだったら、悪霊になんかなっていない。


あんじょう こっちに近づいて来ていた。


だからこそ、あの悪霊がこれ以上被害を出さないよう誘導する必要があった。


それにしても皮肉だ。

本来は餌を多くる為に分体を生み出しているのに、逆に 分体のせいで食べられる羽目はめになるとは。


それに、あの場に自分が居なくて良かった。

頼る人が周りにいない方がいいのだ。


・・・には、周りに人が居ると つい頼ってしまうくせがある。 


それにしても、あの【スライム】でしたっけ?、あれが動くとは思いませんでした。


悪霊と戦う様子を思い出す。

血のような、スライムの真っ赤な手が、ヒタヒタ様を圧倒し、引きり込んでいくさま、そして喰われるヒタヒタ様。


あの場に居た学生やお客さんが見たもの。


体の中から出た4本の巨大な赤い腕と、場に刻まれた血にまみれた赤い手形、そこにたたずむ骸骨の光景。

強力な悪霊が断末魔をあげながら吞み込まれる現場。


・・・は、人目ひとめを気にして辺りをうかがっていたが、見られた人は「次はお前だ」と、気が気でなかったことだろう。


どう言いつくろっても、『ホラー』というやつだ。


すでに学園内に流れているであろう噂がどんなものか。


まあ、お化け屋敷の演出としてはちょうどいい・・・か、宣伝にもなる。


さて、私も・・・の元に向かいましょうか。


今頃、困っていることでしょう。

偶偶たまたま新しく作っておいた鎧を届けなくてはなりません。


( おっと、その前に姿を戻しておかないと。)

少しわざとらしく し過ぎたか?。


は、魔法をきつつ、ゆっくりと歩き出した。






 ある学園祭が行われるよりいささか前のお話し。


あるところに、怖い話しが大好きな商人の奥様が居た。


いつも、同じ趣味の奥様方と怪談話に花を咲かせる。


今度の話しは、ヒタヒタ様というお化け・悪霊・・・そういうもの。


ヒタヒタ様というのは、よくあるお化けの話しの一種だ。


それに出会うと、ヒタヒタと足音がついて来るが、振り返ってはいけない。


どんなに気になっても、無視して通り過ぎなければならない。


振り向かなければ、いつの間にか消えている。

「気のせいか。」の一言で終わる。


声を掛けたり、振り向いてしまうと、りつかれる。


かれると、体が衰弱し、精神を喰われ・・・やがて死に至る。

そういう話し。・・・そういう風に語られている。


よく出ると言われている場所に、友達と一緒に見に行った時は、まだはしゃいでいられた。


しかし、家に帰る途中、友達が冗談でやっていると思って振り返った時に、それを見てしまった。


爬虫類と人間を混ぜたような姿が、口を大きく開けてわらった。

自分の魂をさわってくるような瞳の感情いろ


自分が、その姿に悲鳴を上げた事で 他の友達も振り返った。


振り返ってしまった。


パニックになって家に帰ったが、・・・そこからは地獄だった。


魔法使いや高名な占い師に見てもらったが、全部ダメだった。


歩いていると付いて来るので屋敷にこもる。


自分にしか見えないので、一人で居るが、・・・一人は怖い。


使用人を呼ぶが、使用人も気味悪がって近づきたがらない。


辞める者も出始めた。友達を呼ぶのも怖い。あいつが付いて来る。あいつが憑いているのだ。


そんな生活が何日続いたか、一緒に行った友達の一人が亡くなったという話しを聞いた。


こういう話しが一番好きな友達(お互いが相手の事をそう思っていた)で、あいつが殺したのだろうが、自殺らしい。


旦那は口止めをしていたようだが、人の口に戸は立てられぬ。


貴族もそうだが、お金持ちの生活は使用人がいないと成り立たない。


何をするにも使用人は付いて回る。

掃除や食事は当然、着替え一つするにも主人は手を動かさない。

主人の仕事は服を着ることではなく、どの服を着るのか使用人に指示することだ。

主人が自分で服を着だしたら、使用人は 明日から暇を出されるのか、と、心配しなくてはならない。


なので、あの時も使用人は付いて来ていた。


常に誰かの目があるのが 上流階級の暮らしだ。


もちろん、使用人が、ペラペラと家の事情を他所よそで話すことはない。

そんな使用人は、よほどしつけのなっていない使用人で、すぐ馘首くびになって いなくなる。


ただ、使用人も人間だ。

普通に話しはするし、つい うっかり話してしまうことはある。

よほど強く口止めしない限り 隠し事は出来ないし、例え 口止めしても漏れることはある。


屋敷中をおおう暗い雰囲気。

みんな怖いのだ。

誰かに喋ってしまわないと、やってられないこともある。


ふさぎ込んでしまった同僚がいる。

それはつまり、仕事をしていないということだが、文句を言う人もいない。

むしろ同情している。


みんな怖いし、喋りたいのだ。


つい 主人の前で口を滑らしてしまうのは しょうがない事だった。




 妻が変なことを言い出してから しばらく経つが、一向いっこうに収まる気配がない。


妻はどんどんふさぎ込むし、使用人も気味悪がったり、辞める者も出始めた。


だから、あんな趣味ことは止めるように言っていたのに・・・。


妻は友達の奥様達と、怖い話しをしたり、怖い噂がある場所を訪れたりしていた。


その友達もおかしなことになっているらしい。

正確に言うと、・・・不幸なことが起きた。


冒険者や魔法使い、聖職者の方にお願いしたが、どうにもならなかった。


今日は魔術集会という魔術ギルドに来ていた。


どうにも気が乗らない。

窓口の受付嬢に、自分の名前を告げるまではいい。


商人として成功しているし、自分のこれまでの人生に誇りを持っている。


ただ、これまでのように、自分が「妻に幽霊がりついた。何とかして欲しい。」と、言った時の 相手の表情に 何とも言えない気持ちになる。


変な人が来た。そんな目で、取り付く島もなく門前払いされた事もあった。


だが、今回はそんな事はなかった。


「そうですか。

では、担当の者を呼びますね。」

と、言われた。


担当の者って誰だよ。と思ったが、同時に、ありがたくもあった。

事務的に接してくれた方が嬉しい時もある。


しばらく待って、出て来た男は、自分の魔術ギルドの建物の中なのに、フードを目深まぶかに被った いかにも怪しい男だった。


いかにも魔術師といった風貌ふうぼうの男は、自分の話しを聞くと、

「それはおそらくヒタヒタ様という高位の悪霊でしょう。 非常に狡猾こうかつたちの悪い悪霊です。」と、言った。


妻が口にしていたのと同じ名だ。

「どうしたら・・・。」


「今 この街にいる魔術師で、あの悪霊に対抗出来るような高位の死霊魔術士はいません。

聖職者関係の方でも、この辺りには、あれに対抗出来るような人はいないでしょうね。」


「そんな・・・クレンデス大司教様やグレスオール司教様ならどうでしょうか。」

自分が知ってる有名な人の名前を出す。


「無理ですね。

出来るならとっくに浄化されています。

ヒタヒタ様は古くからいる悪霊ですし・・・」


無情にもその男は断言する。


( どうしたら・・・。)

思わずうつむいてしまう。


「ただ、手が無いわけではありません。」


「本当ですか、先生・・。」

商人の顔が正面を向く。

いつのまにやら呼び方も変わってる。


「もうすぐカノヴァ公国で行われる学園祭、そこでお化けを使ったイベントが行われます。

そこに居る魔術集会所属の死霊魔術士なら あれを何とか出来る実力があります。」


「本当ですか!。」


「ええ。 取り敢えず、私にその悪霊を払うのはしいのですが、その悪霊の魔の手を防ぐ お守り程度なら作ることが出来ます。

今日の所はそれを奥様に渡してあげてください。」


「ありがとうございます。 あの、お代はいかほどに、もちろん出来るだけ払う用意があります。」


「いえ、今はお代を受け取れません。

・・・ああ、そんな顔をしないでください。こういう仕事はインチキだとクレームが来ることが多いのです。

なので、魔術集会では、悪霊関係や精神操作系の魔法が関与した依頼は、お代は結果が出た後に貰うことになっているのです。

仕事はきっちりとしますので安心してください。」


「そんなやり方でお金を払ってもらえますか。」

他人事とはいえ、商人としては心配になる。


「大丈夫です。

そんな人は、魔術集会のブラックリストに載ります。

その後、魔術集会はその人に関係した依頼を受ける事はありません。

その場合でも、依頼を達成した魔術師は、魔術集会から代金が支払われるので気にしなくても大丈夫ですよ。

まあ、代金は必ず回収するのですが・・・。」


「はあ・・・。」


戸惑うが、魔術師の男が気にした様子は無いから 大丈夫なのだろう。

それより何か寒気がしたので、この話しは納得しておく。


「ところで、学園祭での件ですが、一つお願いがあります。

その魔術師は魔術集会の所属なのですが・・・いささか偏屈で、普通の手段では依頼を受けてくれません。

なので、私が段取りを整えますが・・・なに、安心して任せてください。」


安心して任せては駄目なやつだった。


その商人にとってではなく、ある死霊魔術士の学生にとっての話しだったが・・・。


そこには、そこにつっこむ人がいなかった。





読んでくださってありがとうございます。

いったん終了です。

次の更新は遅くなると思います。

思ったより書くのが大変なので、書くペースは落とそうと思っています。

物語は、中途半端なところで終わるのが一番嫌だと思うので、キリが良いところまで下書きが書ければ連載を再開します。

その時はよろしくお願いします。

下書きが完成しなかった場合はそのまま終了します。

その時はごめんなさい。

その時は、『これからもアヤトの不幸な異世界生活は続く。』

と、心の中に文章を足しておいてください。

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