##学園祭準備 其の二
逃げようとした魔物もいたようだが、縄張りから外に出たエイの魔物は、シャロ・アルセンテ・フィオーラの3人が退治してくれていたようだ。
全てのエイの魔物討伐が終わった時には、辺りは暗くなっていたが、すでに仲間達が薪を拾い、テントを張っていてくれたので、そのまま焚き火の前で休むことが出来た。
焚き火は良い。
嫌なことを全て忘れ、ぼーと見ていられる。
横目で見る。
仲間達は食事を食べている。
アヤトは食べてない。
仕方がない。
骸骨の姿のせいか・・魔力が宿っている果物などなら味を感じることが出来るが、料理した物だと感じない。
しかも、マネキンの鎧を着てないと、骨の隙間から食べ物は落ちる。
あの時の虚しさといったら・・・。
いや、味は感じるんだよ。
魔力は吸収しているようだし・・・。
でも、噛み砕いた物が、顎から落ちるのを見ると心が沈む。
けど、マネキンの鎧を着てたら着てたで、「食べた物は何処に行くんだ。」と、怖くなる。
「アヤトさんは食べないのですか。」
セネカはそう言うが・・・、
「いや、何 食べるんだよ。」
「この前は、豆木の実を食べまくっていましたよね?。
ゴブリンに1つも渡さないという意気込みで食べていたようですが・・・。」
「放っておいてくれ、あの時は、こう・・・自分を見失っていたんだよ。」
自分の記憶を黒く塗る。
「この森にも食べられる物はたくさんあります。
このキノコなんかはおいしいですよ。
生ですが・・・焼くと細胞が死んで魔力が逃げてしまうので仕方がないのですが。」
「キノコか・・・・」
でも、生はなぁ~、そう思いながらも食べる。
( うまい。)
1口かじり、2口目は一気に口の中に入れた。
「知る人ぞ知る珍味です。」
「でもセネカ、それ 毒があるんじゃ・・・。」
デュークが遠慮がちに口を挟む。
アヤトは咽る。
咽る為の空気は出てない、が・・・。
「大丈夫です。
アンデッドのアヤトさんに大抵の毒は効きません
大事なのは魔力が宿っているかどうかです。
魔力が宿っていれば、味が感じられるようです。
このキノコは、『毒を喰らってでも食べたい。』と、一部マニアに有名なキノコで、薬の原料にもなる貴重な物ですよ。
アヤトさんも自分が食べる物は自分で探していかないと、普通の人間が食べれる物は食べられないのですから。」
「そうだな。」
挑戦する価値はある。
毒があっても、これだけうまいんだ。
どうせ暇だし、食べれる物を探してみるのも良いかもしれない。
味覚は大事だ。
しばらく感じてないだけで摩耗していくし、ずっと感じていないと心が病みそうになる。
「この前の蛇もおいしかったでしょう?。
あれも魔力の高い個体を選んだのですよ。」
「味も感じなかったよ!。」
アレに関しては未だに恨んでいる。
精神が病みそうだった。
「お肉ですよ・・・お肉。
おかしいですね・・・あなたの国の言葉に『肉は正義』と、いう言葉があったはずなのですが・・・・・・・生肉でしたけど。
あと、ダンジョン産のお肉なども良いですよ。
見た目も食べやすいですし・・・・・あれは焼いても魔力が抜けたりしませんから。」
「何?、そういうことはもっと早く言え。
・・・あと、生きた動物とか生肉はいらん!。」
「何でですか。
魔王らしくていいと思いますよ。」
生肉を食う骸骨、・・・その魔王のイメージはヤバすぎる。
あと、魔王のイメージ・・・それでいいのか?。
お前も魔王のようなものだろう。
でも、自分で食べるものを開拓するのは良いかもしれない・・・・・・変な物を食わされたり、異物混入の恐れがない。
日本でも時々問題になるし、こっちの世界にも問題児はいる。
さっそく明日、食べれそうな物を探してみよう。
見張りは退屈だ。
アヤトは明日の食事のことを想い、長い夜が終わるのを待った。
「アヤトさん、もっと意識を集中してください。
周囲の気の性質を捉え、自分の魔力と混ぜながら吸収してください。
大事なのは魔素や邪気を入れないことです。」
「なあ、これ何の為にやるんだ?。」
ぱしっ、と、頭を叩かれた。
「意識を集中してください。
・・・まあ、いいでしょう。
これは、この場の霊気を魔法石に集めているのです。
お化け屋敷の際、霧を発生させ、たくさんの死霊の手が出てくるという演出に使えます。
アヤトさん1人では、安定して 多くの手を出す事は出来ませんが、この場の力を借りればきっとうまくいきます。」
「なるほど・・・でもそれ、怖くないか。」
本物の幽霊や骸骨が出てくるうえ、たくさんの手が湧いて出る。
せっかくカップルが来ても阿鼻叫喚、女の人を怖がらせて結びつけるどころか、男の方も逃げて 別れる事態になりそうだ。
・・・考え直す、それもいいかもしれない。
リア充は爆発しろ。はっ・・、
「お化け屋敷ですよ。 怖くなくてどうするのです。」
「そ、それはそうだが、・・・そうなのか?。」
こいつの言葉は、いま一つ信用出来ない。
「そうなのです。
これがうまくいけば雰囲気作りはばっちりです。
窓は暗幕で塞ぎますし、照明は魔法で人魂を出します。」
「それもセネカが用意するのか。」
「アヤトさん!。少しは考えて喋ってください。
これは、あなた達のクラスの出し物なのですよ。
私が出してどうするのです。 生徒が、魔法で出すに決まっているでしょう。
出演者も生徒が操っている霊やアンデッドが出るのですから、・・・私はあくまでも手伝いだけです。」
「なるほど。 それもそうか。」
「分かったのなら、集中して気を集めてください。」
必要な気を集めるのに それから3日掛かったが、何とかうまくいった。
学園祭準備は着々と整っていた。
扉を潜ると中は暗い雰囲気の洋館だが、スペースやお化け屋敷というイベントの都合上、仕切りは必要で、迷路のような造りになっている。
実は入り口は5つある。
執事風の服を着た低学年の生徒がお客さんを、その入口のどれかに案内することになっている。
同時に扉を潜れるのは最大7人までとしている。
案内役はランダムにお客さんを誘導、入り口を5つにしたのは客を飽きさせない仕組みだ。
あと、大勢でぞろぞろ入っても怖くない。
少人数で入ることで、盛り上げようという仕掛けだ。
男女ペアでの入場を推奨、との文字があるが、これはアヤトが強行に主張して、その一文を入れることになった。
やっぱりお化け屋敷は男女ペアで入るものだ。 そこは拘りたい。
「では、皆 準備は出来たか。」
フレドが皆に確認する。
「では、アヤトさん、霧の準備お願いします。」
これは本番前のリハーサルだ。
セットはほぼ完成したが、ぶっつけ本番でやるわけにはいかないので、練習は必要だ。
「よし次!、灯かり役は人魂を。」
宙に浮かぶ数十の人魂。
「灯かり役は取り敢えず1刻、人魂を維持。
次、アヤトさん、手を出してください。」
アヤトが集中すると、床から手が出てくる。
少しの悲鳴はあったが、おおむね順調にいっている。
数多の手が手招きする室内は、雰囲気ばっちりだ。
誰かの喉が鳴る。
「次にアヤトさん、25体のスケルトンとの同調をお願いします。」
ちなみに残り5体は、レイチェルやテルセルをはじめとした生徒が、交代で操るらしい。
俺の負担 大きくないか?。
一斉に動き出す骸骨達。
うっ、視界が複数、・・・酔いそうだ。
「続いてアヤトさん、他の方々との同調をお願いします。」
陽気なレイスや黒い影、首だけの霊など、個性豊かな霊達がアヤトの精神と同調する。
マジで気持ち悪い。
眩暈がする。
さすがに、フレドにリハーサルの中止を言った方が良さそうだ。
「どうですか。」
「問題なさそうです。 このまま続けても大丈夫でしょう。」
どうも俺が口を押さえているのが見えないらしい。
っていうか、まず俺に聞けよフレド。
監督役のセネカがアヤトに変わってOKを出している。
「このスケルトンは完全に支配下におかれていますし、悪霊達も友好的な霊なので、あと100体でもいけるでしょう。」
スケルトンは簡単に操れるわけではない。
自分と魔力の相性が良く、魔力が通りやすい特別なスケルトンに、時間を掛けて自分の魔力をなじませて ようやく操ることが出来る。
霊も自我のあるタイプは、抵抗されると操れない。
操れてもレジストされると、その分 魔力の消費は大きくなる。
世間一般に思われているような、千や万の 死なない軍勢を操るみたいなのは、よっぽど条件が整っていたり、準備をしてないと出来ない。
物語で、勇者や聖騎士が、そんなアンデッドの軍勢を退治した話しはあるが、大抵は数を水増ししてるらしい。
勇者がスケルトン5体を倒した話しより、アンデッドの軍団を倒した方が 物語としては盛り上がるのである。
25体のスケルトンと複数の悪霊を操れるだけでも充分すごいそうだ。
「おお!、これで学園祭は成功も同然だ。」
( 俺の負担がでかいから、もっと役割分担しよう・・・。)
アヤトの意見は、喜ぶ生徒達の声に押されて搔き消されていった。




