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異世界怖い  作者: 名まず
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#エルフの里(5)


 蝉の魔物と戦う音はエルフの里まで届くものだったので、ずいぶん心配された。

心配したのは、大蝉を取り逃がさないか、魔物が世界樹の元へ来ないか、だったが・・・・・ちゃんと倒したことを伝えると、喜んでくれた。


それほど厄介な問題だったのだ。


 エルフにあの魔物が倒せないわけではない。


エルフが集団で戦えば、ほぼ確実に勝てるだろう。

強いとは言え、魔物一匹に手も足も出ないほど、エルフは弱い存在ではない。


ただ、あの魔物は一度手を出してしまうと後には引けない。


確実に倒さないと、周囲に甚大じんだいな被害とエルフへの膨大な苦情が出る。


もし倒しそこねると、しばらく狂暴きょうぼうになり、鳴き続けあばれ続けるのだ。


考えてもみて欲しい。

失敗して、大陸中に響くような超音波を何週間も流される。

人間達に「エルフが余計な手を出したからこんな事になったのだ。」と、言われる事態ことを・・・。

想像するだけで頭が痛くなる。


下手をすると、人間達がこの森に攻撃を加える口実になる。


確実に倒すことが必須だが、・・・それがプレッシャーなのだ。


その点、魔術集会に頼むと、失敗しても責任は魔術集会にあることになる。


もちろん、それだけが理由ではない。

エルフの森の魔物の討伐を外の者に任したのは、今回の場合、確実に倒せる相手に頼んだ方が良いと考えたからだ。


そこまでしたのだから、エルフの長老達が討伐の報せを喜んだのは当然だ。


その夜は簡単なうたげの後、客人はエリンツァイの里の建物で一泊した。



 セメントのような素材で出来た家は、異文化感をあじわえつつ、住み心地は良い、・・・快適に寝れた。


アヤト以外のパーティメンバーの話しである。


アヤトは天井を見て眠れぬ夜を過ごした。・・・本当の意味で。

散歩でもして過ごしたかったが、夜に散歩なんてしようものならエルフ達に警戒されるので、してない。

ちなみに、学園でもしていないぞ。

夜に骸骨が散歩していたら、怪談になってしまう。


休んで蝉の魔物と戦った疲れをとった。


次の日は、朝からこの里でゆっくり過ごした。


相変わらず歓迎されていなかったが、黒い肌のエリンツァイのエルフは、まだ外の世界の人間への興味というか・・・理解がある。


古代の遺跡やアーティファクトを求めて外を旅することもあるそうだ。


完全拒否とかではないので、まだやりやすい方・・・お昼に里の中を少し散歩するくらいは多目おおめに見てくれた。






 翌日、本命の場所に向かう。


目の前にそびえ立つのは、頭を天に向け、それでもまだ息を吞むような巨木。


木の全容は見えない。

近すぎて目に映らない。


2つの里より更に世界樹の近くまで来たので、迫力は圧倒的・・・根元に辿り着くと天井は・・まるで、緑と茶色の壁。


空を見上げてもまぶしくないのは、世界樹が天で日の光りを遮り、周囲に木陰こかげを作っているからだ。

だから、色づいた葉が濃く青々としている。

木肌の色も濃く、茶色より木肌真黒きはだまぐろのよう・・・いや、何でもない。


一応・・3つの里は、雨が降っても雨が当たらないくらい世界樹の近くに居を構えている。


が、世界樹のスケールが段違だんちなので、枝葉の傘の下の里は、木の根元からではずいぶん距離がある。

・・・此処まで近づくと何と言うか、すごい。

その一言だ。


この場所は、ロンゴウルイとルババィの里の間くらいにある湖。


世界樹から少し離れた所には湖があり、湖の地形は周囲より窪んだ場所にあるので、此処からだと湖が見下ろせる。


この湖の対岸、ちょうど反対側に、そのほこらがあるらしい。


うむ、エルフはあそこに近づかないが、木の上からはいつでも【骨塚あそこ】が見れるのか。


いろいろ納得がいった。

行ったことがないのに、エルフがその場所について詳しいはずだ。


 アヤト達木漏れ日の樹のメンバーは、右回りにぐるっと対岸まで歩く。

けっこう時間がかかったし、地表に木の根が多くて歩きにくい。


「これ、何の根なんだ。」と、アヤトが愚痴ったら、


「世界樹に決まっているでしょう。」と、セネカに呆れられた。


植物は空に伸びる枝葉と同じくらい、根が地下に伸びているものだそうだ。

これだけの巨体を維持するには、支える根も、必要な栄養も膨大、それを吸い上げる土地の範囲も広くなる。

当然、栄養を吸い上げられて痩せた地では、他の植物が育ちにくい。

この辺りにあるのは全部世界樹の根だそうだ。


あの湖の水も透き通って綺麗だが、別に地下水や湧き水なわけではない。

世界樹によってきれいにされた水・・・つまり、栄養が無いから雑菌が繁殖せず綺麗なのだそうだ。


なるほど・・・・森殺しの豆木と同じか。

森の中にぽっかりと空いた穴。

一見すると全部緑だが、あそこだけ森が途切れ、周囲に木が生えていなかった。

豆木から伸びた蔓と葉だけが地面を覆っていた。


木が生えていた辺りが、ちょうどアヤトが外に出られない結界の端だった。


まあ、あそこには泉も湖も湧いてなかった・・・あそこにわいていたのはゴブリンと・・・殺意、アヤトは目をそっちにやって、改めて気を引き締めた。




 それは、根と苔の緑に埋もれるようにあった。


いつからあるのか、周囲の自然と完全に一体化している。


骨塚、岩を組み上げてつくられた簡易の東屋あずまやの中に、骨が置かれている。


正確には、骨を守るように屋根が、東屋あずまやが建てられたのだそうだ。


確かにそんな感じだ。

お地蔵さんのように、親しみのあるまつられ方をしているように感じる。


骨は、苔のクッションに守られるように・・・というか、埋もれつつある?。


骨は崩れてしまっていて、何の骨か判別が付かなかった。


セネカは、

「巨人の骨です。

以前来た時は、形も保っていましたし、骨に力が宿っていたのですが、・・・今は、力が抜け落ちてしまっていますね。

アヤトさん的に言うと成仏ですか?。

すっかり力を失っています・・・・が、変ですね。

この場に力が無いわけではない?。」


「そうなのか?。」

何か変な感じは受けるが、よく分からない。


「アヤトさんも、何か異常はないか探してください・・・今のアヤトさんの目の方が、何か見えるかもですし・・・。」


目をらす。


何かあたたかいものが目にれる。


それが何か、確かめようと、見えた方の骨を動かすと、赤いものがいた。


( 何だこれ?、たま??。)


気付くと、それはねる。


丸っとした身体からだが跳ねて降りる時、重力の力で一瞬 見覚えがあるスライムの形となる。


確かに『あの』スライムの姿だ。

アヤトがそれを認識する。


すると、ぽっと、それの頭頂部が出っ張る。

そのままの形になる。


某ドラゴンよりスライムの方が有名なことで有名なゲームのイラストレーターで、雲に乗ったりジャンプしたりする漫画家さんの想像力の偉大さを感じる存在感!。


「スライム?。」


何か、・・愛着を感じるフォルム。


それと目(?)が合う・・・何か、通じ合った気がした。


敵意を感じない。

何か訴えかけているように感じられる。


「スライム。」


本物だ・・・思考が思わず声に出る。

アヤトの口調が、親しげなものになってしまうのは仕方がない。


骨塚の中にいた赤い生き物。

恐らく、眠ってでもいたのだろう。


「これは・・・巨人のナノベートがアンデッド化、その後、長い時間を掛けて半精霊化したものですね。」


セネカは、はっきりと口にした。


台無しだよ!。

こいつには情緒じょうちょというものがないのか。

アヤトは憤慨ふんがいする。

せっかく、本物のスライムに出会えたと思って感激してるのに・・・少しは感動にひたらせて欲しい。


ピョン。


こっちに飛んで来た。


( おっ、かわいい!。)


と、両手を広げて迎え入れると、そのままアヤトの胸にぶつかった。


衝撃は無かった。

ただ・・・・胸の中に入った?。


肋骨ろっこつの中にスライムが居るのを感じる。


動かない・・反応がない・・・・あの一瞬で眠った?。


どうやってあの一瞬で身体からだの中に入ったんだ?。


服は通り抜けた?、鎧の隙間を通った?、・・・疑問が尽きない。


出て来ない・・・取れない?。


宙で行き場を失くした腕でパントマイムをする骸骨アヤト


マネキンの鎧の胸部分を脱ぎ、そこらで拾った棒でつついてみたが、動かない・・・ただのしかばねのようだ・・・いや、絶対、ただのしかばねではないが・・・スライムだし、いかん、どうやらかなり混乱している。


回復の呪文を、混乱解除の魔法を・・・。


困った時のドラ・・・セネカエモン!。

セネカを見る。


珍しく少し迷い、

「どうやら居心地がいようですね。

恐らく、今まで巨人の力の宿る骨のうちに居たのが、その骨から力が抜けてしまったので戸惑っていたのでしょう。

そこへ、住みやすそうな新しいやどが来たので、そちらに引っ越したのでしょう。」


宿やどって・・・。」

俺の胸の中には、真っ赤なハートではなくてスライムが宿るのかよ!。

「・・・どうやって取るんだ。」


「え?、取るのですか。」


「そりゃ取るだろ。」


「では、自分でやってください。

下手すると私でも殺されるくらいの高位の存在ですよ。 そのスライム?。

無理矢理出すとなると、アヤトさんを破壊しない限り不可能です。」


「・・・・・・・・・・・マジ?。」


「マジです。」


本当に取り出せなかった。


そのまま学園に帰還することになった・・・・・・・・・・・・・・。






 貴族にしても商人にしても、忙しい人は忙しいし、暇な人は暇だ。


ある人は、権限が一人に集中して全てを自分が決断しなければならず、目が回るほど忙しくしている。


またある人は、優秀な部下が育っており、自分が動かなくても組織が回っていく為、悠々自適の生活を送っている。


そして、裕福で満ち足りた生活は心に余裕を生む。


つまり、暇になる。


人間、お金や時間に余裕が出てくると、魔法や幽霊といった妖しいもの・怖いものに興味を持つ者が一定数出てくるのは、仕方がないことだ。


貴族の中には、占いや魔法にまったりする人が少なからずいる。


私の妻もそうだ。


若い頃は商売が忙しく、共に汗水流して働いていたので、そんなものに意識を向ける暇もなかった。


だが、商売が成功すると、時間に余裕が出来た。


妻は、同じ趣味の奥様方と、社交と言う名目の元、怖い話しを楽しむという趣味にのめり込んでいった。


それが、まさか本当にそんなものに憑かれるとは・・・。


 はじめは、いつもの話しか、と、話し半分以下に聞いていた。


妻の機嫌が悪くなるのを恐れ、一応 話しは聞いてはいたが、半分も聞いていなかった。


妻がそういう話しをするのはいつものことだし、商人の男としては妻と違い、怖い話しに興味があるわけではなかった。


ただ、『妻の趣味』に相槌を打っていた。


それが、妻の言動が少しずつ変になってきた。


やがて、付き合いのある商人の奥さんが亡くなったり、妻付きの使用人まで塞ぎ込んでしまったことから、「いよいよこれはおかしい。」と、危機感を持つようになった。


こっそりと聖職者の方に来てもらうなど、いろいろ対策を試みた。

その頃には、妻の様子は目に見えておかしくなっていたし、屋敷の使用人からも ちらほらと、妻の異常の報告が聞かれるようになっていた。


商人の男には見えなかったが、近づいて来る悪霊に怯え、夜も寝られない妻。

怖いものが好きなのと、自分がお化けに憑かれ命を脅かされるのでは違う。


それに、一番 妻の心をまいらせたのが、仲良くしていた友人の自殺だ。

「私があんな所に行こうと言わなければ・・・、」と、何度も呟くようになった。


商売に差し支える為、大っぴらにすることも出来ない。

悪霊に憑かれた者が居るという噂のある家で、商品を買っていくお客さんなんていない。


「あれが来る!、あれが来るのよ~~。」と、金切り声で叫ぶ妻の尋常じんじょうではない様子に、さすがに金に糸目をつけずに高名な魔法使いや占い師・聖職者に頼んだが無駄だった。


それから何日も過ぎ、事態は悪くなることはあっても良くはならなかった。

商人の男はもう疲れていた・・・心労ですっかり参っていた。

それでも、一家の大黒柱として「俺が何とかしなければ、」と、心を奮い立たせていると、昔からの使用人の1人が商品の届け先で聞いたという噂を持ってきた。

その話しにわらにもすがる想いで飛びついて、話しにあった場所に足を運んだ。


看板かんばんを見上げ、どうせ駄目だと思う。


そう思いながらも足を止めることが出来ず、その扉をくぐった。






 魔素深き森。


首が3つある魔物が大蛇に丸のみにされていく。


魔物がひしめくその場所には、魔境から押し出されるように次々魔物がやって来るが、大蛇の魔物は一蹴する。


せっかく手に入れた縄張りを奪われてはたまらない。


また次が・・・今度は、森からではなく上から落ちて来た。


不自然ではあったが、魔物である大蛇にとって、そんなことは気にならない。


何か分からないが、違和感がある形。


L字型の岩柱の上から落ちてきたその縄張りを荒らす敵は、今度はずいぶん毛色が違う奴だった。


大きさはそれほどではないが、雰囲気が違う。


おいしくなさそうな身体からだは、魔素が感じられない。

魔力で動いているのだが、そんなことは蛇の魔物には分からなかった。

ただ、違うということは感じていた。


まあ、魔力はおいしそうなので、気にしない。


そいつが地面に着くなり、すかさず体を巻き付けた。


白くスカスカで死んだ後の姿をしたものは、大蛇の魔物の攻撃に抵抗することなく身体からだに巻き付かれている。


ミシミシと体を締め付けても、動じる様子がない。


そいつが突然、首を回した。

食べるところからいきなり光りを吐く。


突然、目の前が明るくなり、大蛇の意識は消えた。


一方、しゃれこうべの巨人の方も無事ではなかった。


髑髏どくろの歯は無くなり、口から煙りを上げて動かなくなっていた。


( 試作品とはいえ素材を酷使し過ぎましたか・・・。)


オリハルコン製でもなく、錬金術で強化したわけでもない骨の素材で、よくった方か・・・。


まあ、一発撃てることが確認出来ただけでも良しとしましょう。


あとは、あの残骸を回収し、鎧の材料に再利用するだけです。


【クリエイト ゴーレム】


呪文で、再び動き出した壊れた骨の巨人を見送る。


「次の作品は、うまくいくといいのですが・・・。」


魔法使いの呟きは深い森の奥に消えていき、誰にも届かなかった。


例えば、異世界から来た魔術師の卵とかにも・・・・・・。






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