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異世界怖い  作者: 名まず
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#エルフの里(2)


 エルフの里が、この広い森の中の どの辺りにあるのか。


その場所は、此処に来たのが初めてのアヤトにも見当がついた。


森の外からでも、冗談のように大きい木が見えたからだ。


この前 切り倒した豆の木も巨大だったが、・・・それとも比べ物にならないくらい大きい。

10倍くらい大きく見える・・・単位にキロを使ってもいいくらいのでかさ。


見上げながら森を進む。


人の通った跡のある森の中の道を歩き、テントで休む。

境目は分からないが、この先は鬱蒼うっそうとした森だ。

1人 遠くに視線をやる。

焚き火越しに見る夜の森は不気味だが、「アンデッドより不気味なものも無いので慣れてください。」と、仲間は寝てしまった。

何でも、「アンデッドであるアヤトさんに睡眠は必要がないようなので、お願いしますね。」とのことで、やんわりと見張りを押し付けられた。


『適材適所』そんな魔法の呪文ことばより・・・、

( 話し相手になってくれる優しい仲間が欲しい。)

と、さみしく 朝を待った。


次の日、朝から森の深い所に入り、日も落ちた頃、ようやくエルフに出会えた。

2人組のエルフで、残念ながら2人とも男、1人はすぐ森の中に消えて行った。


その残った1人の案内で最初に着いたのが、文明を大事にしているという黒い肌のエルフの村。


普通に、セメントのような素材で出来た四角い箱のような家が並んでいる。


こっちの世界ではあまり見ない建築様式なので、奇妙と言えば奇妙だが、アヤト的には違和感はない。

コンクリートうちっぱなしのオシャレな建物、むしろ馴染みが湧いた。


カノヴァの街ほどではないが、大きな建物もある。


住み心地もさそうだ。


ただし、この村で人間が暮らすのは、暮らし心地が良いと言えるかどうか・・・人付き合いを考えると難しい。


日本の地方移住でも、都会の人が田舎で暮らすと色々トラブルがあるというから、異世界の異種族ならなおさらだろう。


里のエルフ達からは遠巻きに見られた。

排他的というか、あまり歓迎されていない雰囲気だ。


長老は、セネカを歓迎していたし、アヤト達にも歓迎の言葉を掛けてくれたが、本当の所はどうか分からない。


次に、白い肌のエルフの村に案内されたが、質素なツリーハウスの家や空中に蔦の縄でつくられた橋が、枝と枝・木と木を繋いで中空の道のようになっている。

造りはしっかりしているようだが、こんな所で暮らしていけるのだろうか?。


そんな疑問に、セネカが説明をしてくれた。

エルフは身体能力が高く、体が頑丈で病気になりにくい。

そのうえ暑さや寒さにも強い、魔法も使えるので、こんな建物でも十分快適に生活できるそうだ。


こちらの長老も歓迎の言葉を掛けてくれた。

里の住民の反応を見る限り、リップサービスだろうが・・・。


こちらの長老は女性で、20代にしか見えないすごい美人だが、笑顔がすごく整っていた。

顔に、『社交辞令』との文字が書いてあった。

どうせなら素敵な笑顔が見たいのだが・・・、ここで、『スマイル0円』の文化はやってないらしい。


里を出る時も、アヤトが住人に目を向けると顔を引っ込められた。


最後は、人間種には見えないエルフの里だが、ここが森の入り口からは一番奥地にある。

住居は移動式のテントのような物で、恐ろしく原始的な暮らしをしているようだ。

住む場所も、一か所以外、此処ここと決まっているわけではなく、季節や気候によって移動しているらしい。

人数は50人いるか いないかといった程度。

こちらも、セネカに対応したのは長老だけだった。

他のエルフは口を開かない。

そもそも近づいても来ない。


せっかくエルフの里に来たのだから、もうちょっとサービスしてくれてもいいのに・・・。

アヤトは心中愚痴しんちゅうぐちった。

憧れが強かった分 残念である。



 元々エルフは、住む森を管理する習性のようなものを持っているらしい。

森の見回りを欠かすことはなく、森や環境の変化を肌で感じているそうだ。


その森の巡回、3つの里で協力した方が効率は良いはずだが、そうはしていない。

それぞれの里が別々に、互いに干渉しないよう、ルールや日付けを定めて行っている。


この3つの里は世界樹を囲んで、離れて点在しているのだが、露骨に・・・なんと言うか、お互いが事務的に関わっている印象を受けた。


それでも、人間からこの森を守るという一点だけは共通認識で、協力出来ているようだ。



 人間種には見えないダークエルフの一族の里を『ロンゴウルイ』と言う。

人間に見た目が近い方のエルフは、

文明を尊ぶ黒い肌のエルフの里を『エリンツァイ』、

自然を尊ぶ白い肌のエルフの里を『ルババィ』と言うらしい。


ロンゴウルイの一族は、特に俺達パーティーの人間にもよそよそしかったが、それは俺達だからというわけではなさそうだ。

何と言うか、他の2里のエルフに対しても淡白に見えた。・・・何でだろう?。


その時は、エルフの人も居たので聞くわけにもいかず、アヤトはその疑問を胸にしまっておいた。




 取り敢えず、それぞれの里の長老から詳しい依頼の内容や森の様子、最近の変化などの情報を聞けたので、目的地の森に向かっていく。


案内はない。


そもそも、禁足地きんそくちであるその場所に行くエルフがいないので、場所は知っていても詳しいエルフがいない。

それに、セネカはこの森に来たことがあるらしく、森の地理も知っているそうだ。


しかし、エリンツァイ と ルババィ の2つのエルフの一族は、見た目が人間に近い。

耳が長くなければ、人間と言われても違和感がない。

ただし、ただの人間ではなく『とんでもなく美男美女の』という枕詞が付いた。

「さすがエルフ」と、思わず口から出そうなくらい、全員の顔が整っている。

整い過ぎていて、気後れするくらいだ。

美人と話すと緊張する・・・のは俺だけ。

ただ俺が、話し慣れてないだけ?。


「なあ、セネカ。 何でエルフの顔はあんなに整ってるんだ?。」


種族単位で顔が整っているなんて卑怯ひきょう過ぎる。


「あなたの世界でも、千年前と今では、平均すると今の人の顔の方が整っている人が多いはずです。

ホモサピエンスも、種が分かれ誕生した当初は、チンパンジーとあまり変わらない姿だったそうじゃないですか。

時間を掛けて、今の人間の姿になっていったんですよ。

こちらの世界の人間でも、アヤトさんのいた世界の人より、顔のつくりの良い人が多いでしょう。

4億年近く人間の時代が続くと、わざと顔の整っていない人間を残さない限り、顔の造形は整っていく傾向にあります。」


うむ、確かにこっちの世界の人の顔の造形は、化粧やファッションが発展した地球より、顔のい人が多い。


「エルフに胸が大きい人がいないのは何故なんだ。」


その質問をすると、セネカの視線が痛いような気がした。

女性陣の周囲の気温も下がったような気がしたが、気のせいだろう。


下心なんてないぞ・・・骨だし。

ただ、ちょっと、気になっただけだ。


「まったく・・・エルフは長命種で数百年生きます。

その生涯で数人の子を産むとして、人間のように年中発情すると思いますか?。

それに、長命ゆえ、子孫を残すという欲求は薄いです。

結婚したエルフに家族計画を聞いてみると、「子供は300年以内に1人ほしいな。次の子はその200年くらい後かな。」みたいな人もいます。

性欲も薄いですし、発情もあまりしません。

エルフは、コミュニケーションを大事にし、スキンシップをよく行います。

そうすることで感情が高まり発情しますが、肉欲で発情することはあまりないようです。

なので、胸が大きくある必要がないのです。

進化の過程で、いらないものはうしなわれていったんでしょう。」


「いらないことなんてないと思うぞ。」


「そういう議論はいいですから、今はエルフの話しです。

魔法にけ、頭もい。

長い時間は、知識を・・技術を深めます。

個人としては、完全に人間を超越してます。

ただし、長命ゆえの必然、少子高齢化、出生のサイクルの長さという弱点があります。

弱点と言っても人間に比べてですが、・・・発情期が合わなかったり、子供自体生まれにくいので、なかなか人口は増えません。

まあ、先ほども言いましたが、数百年に1人生まれればいいのですから、本来なら問題になりません。

問題になるのは、戦争が起こった時です。

普通に、人間とエルフが戦えば、エルフが勝ちます。

同数なら絶対、数が10倍でも人間が勝つのは難しい。

よく『10年に1人の天才』という言葉が使われますが、全員が天才の軍団を相手にするようなものです。

ですが、

・今年、人間1000 対 エルフ100で戦い、人間500・エルフ5人死にます。

・翌年、人間1000 対 エルフ99で戦い、人間500・エルフ5人死にます。

・翌々年、人間1000 対 エルフ98で戦い、人間500・エルフ5人死にます。

さて、エルフの出生率を考慮して考えてみてください。

このまま戦って、エルフに勝ち目はあると思いますか?。

答えは、種族の存亡の危機です。

戦争に勝利するどころではありません。

短期的には勝てるのですが、長期的には消耗するので、結果的に勝てません。

なので、エルフは戦争をけ、『人間とは関わり合いにならない』ことに重点を置いています。

だから、森に人間を入れないことで、余計な争いが起きないようにしているのです。

それでも、この世界で生きている以上、人間と関わらないわけにはいきません。

なので、国と友好関係を結び、数年に一度贈り物をしたり、こうして魔術集会のような組織と関係をきずいたりしています。

数十年前エルフの村を、集会の魔術士が助けた事をきっかけに、交流は今も続いています。

魔術集会は少数種族の保護にも力を入れています。

アヤトさんなら理解できると思いますが、人間が一方的に力を持つと、エルフや他の種族は絶滅してしまいかねず、貴重な文化と多様な遺伝子が失われてしまいます。」


「へ~え、そんな活動こともしてるのか。」


保護活動は大事だ。

地球に居た時、環境にいことは特に何もしていなかったが、環境保護とか大事だと思うし、文化財の保全・希少動物の保護とかも必要なことだ。


「はい、まったく。

世の中、何が貴重か、くしてから気付くものです。

魂のそこなわれていないアンデッドとかとても貴重なものでも問答無用で殺そうとするような世の中ですからね。」


「へ~え?、それは怖い。

それにしても、・・・そんな貴重ながあるのか。」


「ええ。」


「はは。」

アヤトの乾いた笑い、2人は笑う。


「・・・・・・・・・ところで、」

アヤトは不毛な会話を切り替える。

「、ハーフエルフって、こっちの世界にいるのか?。」

学園でハーフエルフの噂を聞いたことがある。

本当のところはどうなのだろう?。


「それについてはハーフエルフの定義にもよりますが、その説明の前に、この前の冒険でワーウルフの集落に行きましたよね。

獣人・ワーウルフ・コボルト、呼び名はそれぞれですが、あの種族と人間の間に子供が出来ると思いますか?。」


「そりゃ、無理だろう。」


あきらかに人間と種族的特徴が違った。

あれで子供が出来るとは思えない。


あなたの世界の知識にあったもですが、人間とチンパンジーの遺伝子は98・8パーセント遺伝子が同じそうですね。

人間とチンパンジーに子供が出来ますか?。

まあ、螺旋構造の設計図が一つ違うだけで出来上がりに大きな差が出ますので、この議論はかなりの暴論になりますが・・・。

たかだか1.2パーセント遺伝子が違うだけで、その種との間に子供が出来ないのに、まったく違う種族との間に子供が出来るわけがありません。

一方、先ほどの答えですが、ハーフエルフと呼ばれる存在はいます。」


「やっぱりか。」


「やっぱりって、本当にそんなことがると思っているのですか?。

そんなことが起きるということは、【エルフ】は【人間】ということになります。

子供が出来るということは、同じ【種】であるということです。

少なくてもずいぶん近い種ということになります。

あなたの世界で大昔、ホモサピエンスと呼ばれる人間と、原人の間に遺伝子の混血が起き、その血は今に受け継がれているというのが、あなたから得た知識ですが、それはホモサピエンスとネアンデルタール人が比較的近い種であったから起こったことです。

少なくとも何万年も前は、2つの種族はそれほど遺伝子が離れていなかったということになります。

犬と狼の間でも子供が出来ます。

でも、犬と猿の間に子供が出来ますか?。

いくら遺伝子が近くても、人間とチンパンジーの間に子が出来るとは思えないでしょう。

なので、エルフは人間です。

ホモサピエンスではないかもしれませんが、他種族から見たら同じ人間です。

人と原人、犬と狼くらいの違いなど、他種族から見れば些細ささいなものです。

あなたは牛の顔の区別がつきますか?。

羊の鼻の形の、それぞれの違いを説明できますか?。

遺伝子が大分離れてしまっているので、ハーフエルフが生まれる確率は極めてまれですが、無いことではありません。

もう一度言いますが、ハーフエルフはいます。

アヤトさんも気になっていたようですが、何故、ロンゴウルイのエルフの一族が他の2里のエルフを嫌っているのか。

それは、彼らが自分達とは違うからです。

彼らが人間だからです。

エルフにとっての人間がどんなものか、この前 伝えたでしょう。」


「ああ、・・・確か、ゴブリンより厄介な存在とか 散々なものだったな。」


「その通りです。

あの2里のエルフも、顔が良いゴブリン扱いされては、嬉しいはずがありません。」


「それはきついな。

で、顔が良いと言えば、結局、エルフの顔が良いのは何でなんだ。」


「ロンゴウルイのエルフの方は時間です。

数十億年という悠久の時間が、進化の果てに、長命の寿命と洗練された造形を生み出しました。

エリンツァイ と ルババィ の2里の方は・・・・・・。

そうですね・・・では、アヤトさん、あなたには子供がいます。

ある日、その子供が病気にかかりました。

あなたならどうしますか?。」


「どうするって、突然どうしたんだ?。」


「いいから答えてください。

病院に行きますか。それとも自然治癒に任せて放っておきますか。」


「そりゃ病院に行くだろ。」


アヤトの返答は、当たり前のものだ。


「では、生まれてくる子供に病気があるとわかったら、どうします?。

治すには遺伝子治療しか方法がないと言われたら・・・。

そのまま自然に生まれるのに任せますか、それとも、遺伝子治療を受けさせますか。」


「子供がいないのでどうするか分からんが、・・・多分、治療すると思う。」


異世界ここの人達はどうか知らんが、現代地球の科学技術を知る身としては、遺伝子治療に理解はあるつもりだ。

少なくとも無暗むやみに怪しい民間療法と混同して、断ったりはしないだろう。


「文明が発展し、生命魔術による遺伝子操作技術が向上する。

病気を治し、子供により良い選択肢を、・・・そういうことを繰り返す。

子供の目の色、顔、頭の良さ、病気にかかりにくい身体からだに・・・、それらは親からの贈り物と言えます。

子供には、より良いものを与えたいと思うのが、親というものです。

あなたなら、子供をわざわざ不細工にしますか?。

頭を悪く、運動を音痴に、歌を下手に、・・・そんな風にしますか?。

出来るなら・・・・イケメン?に、頭が良く、スポーツ万能に、耳心地のい声の人間にするはずです。

そういうことを何世代も重ねていった結果、彼らの一族は【エルフ】になりました。

彼らのご先祖様は、文明を発展させ、戦争ではエルフや多種族から勝利をおさめ、全大陸を支配し、やがてそらにさえ手を伸ばしました。

そのすえに、同族同士で争い、殺し合い、文明の全てを無にしました。

空を失くし、大地を毒に、湖を干潟ひがたに、海を塩に変えました。

その時の生き残りが彼らです。

その行いを反省し、文明を捨て、自然とともに生きることを選んだ一族の末裔が彼らです。

エルフから土地を奪い、土地を汚し、自分達だけ逃げて行ったくせに、ある日何食なにくわぬ顔で戻って来て、同胞どうほうのような顔をする【人間】、それが彼らです。

ロンゴウルイの里の一族からすると、彼らは自分達を迫害した唾棄だきすべき人間なのです。」


「・・・・・・・・・・・・」


エルフは皆、顔の造形が整っている。

なので、見慣れていないと、顔の区別がつきにくい。

人間に比べると、みな 同じに見える。

それは綺麗な顔の人形の区別がつけにくいのと、似ているのかもしれない。

顔が整っているというのは、顔に特徴が無いということでもある。

人間にしてみれば、『綺麗であること自体』が特徴であるが、みんな綺麗なら、それは特徴になりえない。

・・・それにしても、同じ人間だと言われても、否定してしまいたいくらい綺麗だ。

その方が諦めもつく。

人間、同じと言われれば、「自分も」と、悪足搔わるあがきをしてしまう生き物だ。

そして、人間とは違う【エルフという種族】だから、と言われた方が、納得しやすいし、不思議と安心感が得られる。


俺だって、美形を見ると、つい色眼鏡いろめがねで見てしまうが、エルフだと納得できる。


それにしても、あのエルフが人間ねぇ、・・・・・話しが大きすぎて ついていけない。


アヤトは思考を放棄して結論付けた。


エルフは【エルフ】・・・・・・ファンタジー万歳!。


これで万事ばんじ解決だ。






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