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異世界怖い  作者: 名まず
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#スライム討伐(3)


 森を進むと、早速スライムと出くわした。


スライムといっても、洗面器一杯くらいの小さいやつで、見た目もアメーバのようだ。


それを初めて見た時、( こんなのスライムではない。)と、がっかりしたものだ。


潰れたゼリー状の体の中に、丸いものが見えていて、それを槍で貫くと形が崩れて簡単に倒せた。


あの丸いものがスライムの核らしい。


核が消え、現れた魔石を回収する。


腰に下げた巾着きんちゃくに魔石をしまいつつ、再び杖の方に意識を戻す。


アヤトの杖は骸骨の手のような穂先ほさきだが、魔力を込めて意識すると黒い魔力が刃になって槍として使える。


切れ味も抜群で、スライムの核もスパッと切れる。


セネカの説明によると、核自体はそんなに固くないが、小さくて丸いうえ、スライムの体の中はぬるぬるして滑りやすいので、慣れてないと中々潰せない・・・らしいが、一発で切れた。


「はっはっはっ、見た目悪者だな。」

と、グレガテは暢気のんきに笑っているが、デリカシーが足りないと思う。


アヤトの方は、自分ごとなので笑っていられない。

仮面の男・・顔を隠すフード付き・・・骸骨の腕の形の杖持ちの魔法使い・・・・黒い魔力、この見た目、何とかならないだろうか。

これで、素顔をさらした日には、スライム以上の騒ぎが起きてもおかしくない。

骸骨姿がいこつすがたで獣人の村に戻る。挨拶やあこんにちわ。想像してみる。うん、アニマル・パニックだ。


笑っていられないと言えば、最初のスライムとの遭遇からしばらく歩くと、一面にスライムがいっぱい出て来て、気持ち悪くて、ぞわっ、と、した。


これには、さすがにセネカ達も退治を手伝ってくれたが、半分はアヤトにやらされた。


もちろん、スライムだけしか出ないなんて事はなく、猪や狼など他の魔物とも出くわした。


狼は腕を噛まれながらも槍で払って倒したし、猪には突き飛ばされてもすぐに起き上がって刺した。


アヤトは全身が鎧なので、相手の攻撃が致命傷にはなりずらい。


衝撃は受けるし怖いが、それでも、死ぬことはないだろうと分かっていれば、まだ、冷静に対処出来る。


かっこいい倒し方ではなかったが、余裕をもって対応できた・・・と、思う。


グレガテからも、「これなら何とかなるかな?。」 とのお墨付すみつきをもらえた。





 

 最初にそれを見た時、それが何か理解出来なかった。


泉が浮き上がっている?。 

この泉自体がスライムなのか?。


アヤトが疑問で思考停止している間にも、レースのドレスを上に広げるように、立体的に姿を現したスライム。


浮き上がった姿をまじまじ見ると、海の中 優雅に泳ぐクラゲのようなアメーバだ。


( 何か・・・これも俺の思ってたスライムと違う。)


そんな感想を頭に浮かべていたら、浮遊感が・・・。


スライムが体の一部を伸ばし、クラゲのような触手の1本がアヤトの左足首を掴んでいた。


ただ、見えただけで、頭も、体の方も動けていない。


意識が加速する。

いや、景色が速く動いているだけだ。

クラゲに向かってすごい速さで引っ張られていた。


もうスライムの目の前。


話しには聞いていたが、まさか、スライムの体があんなになるとは思ってなかったので、油断していた。


何も出来ない。


アヤトは、掴まれた触手ごと、そのまま、ポッ、と、スライムの体の中に飲み込まれた。


うおっぅぅ・・。


押し寄せる濁流だくりゅう・・・と言うか粘液。


かと思ったら、押し出され、次に浮遊感。


飲み込まれたと思ったが、すぐ、ポイッ、と、吐き出されていた。


吹き飛ばされた体が宙を舞った後、地面を何度も転がる。


思考がついていかない。

気持ち悪い。

ヌルヌルするし、この液体 体の中に入ってる。


「スライムに、食べるのを嫌がられたのか。 さすが【アンデッド】だな。」


「それめてないよ!。」


にかっ、て、笑うグレガテさんの暴言に、たまらず文句を言うアヤト。


Sランク冒険者に、初めて褒められたのに全然嬉しくない。


アヤトは、体の隙間から入ってくる違和感に咳き込みながら、地面に叩きつけられた体を起こし、目の前の敵に相対する。


この野郎!。

アヤトは、このスライムに敵愾心てきがいしんいだく。

こいつさえ現れなければこんな目には・・・・・・。


スライムの方も、アヤトを餌から、嫌な外敵と認識を変えたようで、アヤトに対して触手を増やして警戒している。


その矛先ほこさきは、アヤト以外のメンバーにも・・・。


一番前に出ているのがアヤトだが、そのほかでスライムの傍に近づいていたメンバーは2人・・・グレガテとアルセンテだ。


巨大スライムは、触手を四方八方に伸ばして攻撃してくる。


( 危ない。)

グレガテは、目の端にアヤトの姿を確認しながら右に飛ぶ。


アヤトの転がっていた地面が一部煙を上げている。

あのスライム、毒は無いようだが、溶解液の威力はきつそうだ。


全てかわしつつ、さっきまで左隣りにいたアルセンテを確認するグレガテ。


彼女の方も、余裕をもってよけている。

それどころか、引き戻される前の触手にこんで魔法を叩き込み、相手の触手を凍らせている。


( なかなかやる。)


グレガテも炎の魔法を数発放っていたが、それほどダメージは与えられていない。


( 氷の魔法の方が時間稼ぎにはなるか。)


もう氷が溶けてしまっている触手を見ながら思案する。


いや、今はこいつの気を引くことが目的だ。


得意魔法で派手にやる方が効率がいい。


セネカを含め残りのメンバーの方にも長い触手が伸びていたが、デュークが皆の前に立ち、剣とその身体で触手を受けている。


( あっちもなかなかやる。)


あの触手を前に、躊躇なく身体からだを張ったデュークに、グレガテは感心する。


自分の危機の際、仲間の危機の際、誰かの危機の際、一瞬の判断で動けるのも才能だ。


ましてや、自分の安全を確保しつつ、仲間を守る的確な判断が出来るのは・・・そうそう出来ることではない。


デュークが攻撃を完璧に防ぎ、イシュカの攻撃で焼き切れる触手を目にする。

( デュークは両手で抱えきれないサイズの触手に押されても一歩も退がっていないし、イシュカの方もあの物量の溶解液を含む体液を燃やす炎ってどんなだよ。)


あっちは放っておいても問題なさそうだ。

と、結論付けてグレガテはスライムに接近する。


パーティー単位での戦闘において、組み慣れていないメンバーと戦うのはやりにくいものだ。

様子を探り、調整しながら動かなくてはならない。


それでも、一緒に戦えば大体は分かってくる。

グレガテとアルセンテの2人は攪乱かくらんを続ける。


「アヤトさん。アンデッドは命を見ます。

スライムの命の中心、魔力の集まる場所、核を見つけて槍で貫いてください。」

セネカの指示。


アヤトが目に魔力を集中させ、見ることに神経を研ぎ澄ます。

同時に杖に魔力を注ぎ込み、槍の威力を上げていく。


その気配を察したのか、スライムがさらに激しく触手を振るって、アヤトが気を集中するのを邪魔してくる。


「グレガテさん、もっとスライムの気を引きつけられますか。

アルセンテさん、あれの使用を許可します。

本気でいってください。」


当たり前だ。Sランク冒険者を舐めるな。

今回の件は、本来は俺の仕事だ。

許可が出れば、当然、本気でいく。


グレガテは突進する。


体の中のギアを上げる。

普段本気の力が出ると、普通の生活を送るうえで支障が出てしまう。

その為戦闘の際は、意識的にスイッチを切り替えられるようにしている。


スライムが脈動する。

刹那動きを止め、次の瞬間高速で伸びてくる触手を、それ以上のスピードでかわす。


触手を上回るスピードで動き、触手を縮める僅かな瞬間に剣を差し込んで、スライムの体の中に炎の魔法を叩き込む。


「クッ・・。」


スライムの中に入った腕の皮膚が焼ける。


皮膚もだが、今回の為に用意した特別製の長手袋がボロボロだ。


痛みはあるが無視する。


音のない悲鳴で体を震わせたスライムが暴れるが、致死の体当たりを余裕を持ってける。


一方、アルセンテの魔力も目に見えて高まっている。


左腕の袖の中から、蛇のような生き物がアルセンテの体を離れ、地面を這って行く。


相棒が離れたことを確認すると、アルセンテのスピードが増し、ハンマーで殴られたスライムの形が歪む。


目の瞳孔が縦長になり、肌のところどころに薄っすらと光る鱗のようなものが浮き出ている。


俺の動きに付いて来れている。

あいつも何か訳ありの体のようだ。


時間さえ掛ければ2人でも倒せそうな勢いだが、核の場所が分からない。

決め手に欠ける。


「離れてください!。」


アヤトの声、準備が出来たようだ。

気味の悪い杖に、嫌な力が集まっている。


闇のような黒い魔力が槍の切っ先となり、スライムの体の中に入っていく。


触手がアヤトに集まり、その全身を包もうとするが、黒い槍に当たった部分が煙を上げている。


槍が、スっ、と、入る。


アヤトの手に、何かを切った確かな手応てごたえ。

ガラスのような透明の色の核が2つに割れている。


( こんな色をしていたのか。)

さっきまでは、薄い光の中、あそこだけが、明らかに違う光りを発していた。


それが今、消えていく。


スライムの声無こえな声鳴こえな断末魔だんまつま、伸ばした触手が力なく地面に溶け落ちた。







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