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異世界怖い  作者: 名まず
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#スライム討伐(1)


 お祝いされることは嬉しい事と言えよう。


単純に祝われるのは嬉しいし、人生において、そういう場面や思い出は必要なものだ。


それにしてもこれは・・・・・・。






 ジタの泉。


大きな泉ではないが、湧き出る水が枯れたことはなく、集落に恵みをもたらしてくれる。


水をむのは女や子供の仕事だが、・・・ある時、5人の女・子供の行方が分からなくなった。


家族や男衆おとこしゅうは探したし、集落しゅうらくみなも手分けして探した。


森の奥や山の方、人里まで足を伸ばした者、はては山狩りの話しまで出たが、泉に探しに向かった大人達だけは、1人の子供に止められた。


大人の男達の前に立ち塞がったのは、集落の子供ボウラだった。


泉と集落をつなぐ一本のせまい獣道を立ちふさいで、青くした顔と小さな手でしがみつく。


大人は怒って怒鳴どなりつけるが、ボウラは退かない。


苛立いらだつ男衆の声が増々ヒートアップする。


男が、集落の者に呼ばれて行った先で出くわしたのが、そんな場面だった。


めている村人をなだめ、声を出せなくなっていた子供から、根気よく話しを聞き出すと、泣いた子供は、「みんな泉に呑み込こまれた。」と、声を絞り出す。


ボウラは、友達や大人の女の人が、目の前で泉に飲み込まれるのを見て呆然ぼうぜんとなっていたようだ。


それでも、泉に通じる道を塞ぎ、怖いものに近づく大人を必死に止めていたのだ。


子供と周囲を落ち着かせる。

不安や心配も分かるが、これではらちかない。

ボウラを母親に任せる。


村長むらおさであるブランコと冒険者をやっていた俺の2人で泉に向かう。


泉は静かで、近づこうと寄った瞬間、泉から伸びてきた『それ』をよける。


それの動きは刹那せつなの速さだったが、優れた動体視力を備えるワーウルフの目には、それがはっきり見えていた。


水のようなものが伸びたもの、・・・あれは冒険者時代に見たことがあるものだ。

スライムの触手。・・・正確には本体が形を変え、その身を伸ばしたもの。

スライムに手足はなく、移動や捕食の手段として体を自由に動かす。

すぐに、村長むらおさにそのことを伝え、この場を離れる。


村長むらおさは、初め戸惑っていた・・・本当にあれがスライムなのか、と。


集落のある森にはスライムが多く生息するが、泉そのものにしか見えないサイズのスライムなど見たことがなかったのだ。


あれは、かなり大きい。


スライムは基本的に小さいモンスターだ。

小さければなんてことはない存在で、冒険者の間でも雑魚ザコに分類されている。

だが、サイズが大きくなってくると話しは違ってくる。

自分の半分のサイズくらいまでなら、こちら側の物量の方が圧倒的に大きいので、力押しで何とでもなる。

しかし、自重の半分を超えた辺りで、スライムの特性が問題になる。

核以外、すぐにくっ付いて物理攻撃の効かない流動性の体、溶解液や毒などの状態異常、威力の高い魔法でないと大した効果が見込めないなど、非常に厄介なモンスターとなる。


その脅威度は当然、大きくなればなるほど上がっていく。


弱点の核は堅くなり、触手は複雑な動きが出来るようになる。

知能が上がり、狡猾な戦いかたを身につけ、特殊な魔法攻撃まで使ってくる個体もある。


俺も過去に一度だけだが、あれほどの巨大スライムと戦ったことがあった。


あの時は毒持ちのやつで、緑っぽい泥水のような色をしていたが、あの独特の質感は強く印象に残っており、間違えようがない。


討伐ランクはS、【毒沼】の二つ名を持つ手強てごわい魔物だった。


あと・・場所が問題だ。


討伐対象が厄介なうえ、場所も、冒険者が来るのを嫌がるワーウルフの村となると、あれほどの魔物ものの討伐依頼、はたして受けてくれる冒険者ハンターが現れるだろうか。


取り敢えず 今 出来ることを、・・・ブランコに、一時的に村をうつすことを提案する。


泉は、集落からそう遠くない場所にある。

万が一のことを考えれば、もっと離れた方がい。


一方的に自分の意見を言いはなって、旅支度たびじたくに入る。


「お前はどうするんだ。」


「かつての仲間に会いに行く。」


簡潔に、村長むらおさの問いに答える。


あれを討伐するのは、この村の者にもブレタークの町の冒険者ギルドの者にも無理だ。


速く討伐しなくては・・・。


いなくなった集落の女・子供の中には、子の友達もいたし、妻の友人もいた。

そうでなくても、狭い村の中での関係、・・・全員が家族のようなものだ。


あんな魔物ものそばに、村の皆を置いてはおけない。


俺には、あいつを頼ることしか思いつかない。


「俺が返って来るまで村を頼むぞ。」


元冒険者らしく手早く準備を終えると、それだけ言い残し、集落しゅうらくを後にした。






 ( しくった。)


思ったその瞬間に影が差した。


衝撃が走る。


真っ白になる頭、それでも、自動的に体が前に出てた。


目の前に飛び散る血、それを顔面で受けに行くように前へ進む。


魔物の尻尾の動きが、わずか一瞬固定され、一か所でも止められた動きは連動する。


つられて僅かに動きをにぶらせた魔物の首を、一撃の剣で刎ねる。


そのまま、手を休めることなく、胴体をザクザク切っていく。


速く治療に行かなくては、心がはやる。


それを必死に抑え、腕に渾身の力を籠める。


再生能力の高いこの魔物、ここで殺し切らなくては全滅してしまう。


感情より、行動を優先しなければならない。


それでも思う。

( どうして俺をかばった。)


俺の体ならすぐに治ったのに・・・。


現実的ではないのは分かっている。

あの時、あの攻撃を受け、俺が貫かれていたら、そのあと一方的にやられて、体勢を立て直せなかったかもしれない。


だから、あいつの対処は正しかったのだ。


魔物を切り刻みながら、考えを振り払うように、力いっぱい剣をふるった。




 Sランク依頼の達成。


それは、冒険者なら誰でも憧れるものだ。


冒険者ギルドから、是非にと言われて受けた依頼だったが、達成感など無い。


あの依頼の後、仲間の一人が抜けると言い出したことも、別に良かったと思っている。


前から雰囲気は良かったし、ここ最近は休みのたびに村に行っていた。

そう遠くないうちに、いつかい仲になるとは思っていた。


パーティーは解散の雰囲気だし、俺もなんだか億劫おっくうだ。

むなしい気持ちが胸に去来きょらいする。


子供の頃、親や兄弟が病気になった時もこんなだった。


兄弟姉妹、親までもがバタバタと倒れ、半分近く亡くなったのに、俺だけは看病していた。

あの時に似た疎外感。


あの時も、何故俺だけ違うのだろうか、と、思ったものだ。


今は何故かその理由わけを知りたいと、想いが棘の如く心に刺さっていた。






 カノヴァの学園には、貴族の子供や留学生、裕福な商人の子、奨学金や有力者の援助を受けた人、推薦を受けた人、召喚された人、など様々な人が入学して来る。


普通、他の国では、身分や年齢によって入れる教育機関が棲み分けられている。


貴族が通う学校、裕福な人間が通う学校、商人が多い学校、軍人になる為の学校、貧乏人が通う学校、執事やメイド・鍛冶など特定の技術・技能をもつ職人を養成する学校、・・・このように職業や商売、身分で分けられている。


そうでないと意味がない。

領地経営や貴族のマナー・騎士の心得や剣技・軍略を、ただの一般市民に教えても、その知識に使い道は無い。


偉い学者は、無駄な勉強など無い、と、言うが、・・・これに関しては、はっきり言って無駄である。


また、国籍も大事である。

勉学や教育とはお金が掛かるものであり、貴重な国庫の資金を、他国の者の教育に使うことは、通常有り得ない。


カノヴァの学園は、そういう身分や国籍で門戸もんこが閉ざされていない。

そういうのが無くとも入学することが出来る珍しい学校である。


必然、学びたい理由がある様々な人々が入学を希望する。


もちろんお金は必要だし、学力や人格を試され、試験もある。

ただ、逆に言えば、それさえクリアーすれば入学が認められる。


君は貴族じゃないから・・・・・・とか、

我が国の市民権を取ってからまだ3年しか経ってないから・・・・・・とか、

有力者の紹介状が無いから・・・・・・とか、

言われることもも無い。


カノヴァの学園には他国の者や貴族でない者もたくさん通っている。(寮生活なので正確には住んでいる)

なので、貴族の生徒の中に、平民は俺だけなんてことも無い。

学生の間は、身分を持ち出してはならないことになっているので、俺のような庶民にも居心地いごこちい。


世の中、コネや地位はればったでい。

だが、世の中にはそれが無い人の方が多いので、無くても入れるのは、それだけで魅力的なことだ。

しかもそれが、カノヴァの学園ほど有名な学校ともなると、なおさらである。

特に、自分の力で這い上がろうとしている者にとっては魅力的な環境だろう。


冒険者になってお金を稼ぎ、成功する・・・よくあるサクセスストーリーだ。


金や名誉を得たものが、今度は地位や学歴を求めることは、よくある話しである。


成功してから学校に入る者は、実は俺以外にも結構いる。


商人が商売で成功し、この学園に勉強しに来る、なんてパターンも多い。


庶民もそうだが、貴族の中にも、そうやって通う奴は多い。


貧乏貴族の3男・4男以降(雑)とかは、親の教育は受けても学校の教育は受けていない なんてことも多く、自分で稼いだりパトロンを見つけて通うのだ。


男・・・グレガテは、冒険者ギルドのランクはS、パーティーでのランクではない。

パーティーのランクもSだったが、個人でのランクがSなのだ。


自慢じゃないが、これは中々すごいことだ。


冒険者は身分的に市民より低いが、ランクSともなると扱いが違う。

何処どこに行っても、貴族並みの扱いを受ける。


冒険者としては成功してると言える。

ランクもだが、・・・金も充分稼いでる。


グレガテが学園に来たのは、子だくさんの庶民の生まれで、禄に教育を受けれてなかったのもあるが、此処ここに来れば、長年の疑問に対する何らかの答えを見つけられる気がしたからだ。


それから時が過ぎ、カノヴァの学園を大学まで進んで1年が過ぎた頃、以前パーティーを組んでいた仲間、今は冒険者を引退して家族と暮らしているはずのワーウルフが、学園を訪ねて来た。


ワーウルフの集落の近くに巨大スライムが棲みついた。

とのことで、かつての仲間である自分を頼って学園まで来たのだ。


冒険者は休業中だが、仲間からの依頼・・・頼みで断れなかった。


まあ、元々、昔の仲間の頼みを断るようなことはするつもりはないが・・・。


ただ、引き受けたはいいが、相手が少し悪かった。


スライム退治だが、あれの大きいのとなると厄介なのだ。


物理攻撃がほとんど通じないタイプの魔物で、俺とは相性が悪い。


かつて、毒のタイプのやつと戦ったことがあったが、あの時は難儀なんぎした。


かつてのパーティーメンバーが揃えば、あるいは何とかなったが・・・・・、

あの魔術師は、今ではとある国に仕えているので、こっちには来れないだろうと思われる。

もう1人が揃うことは、もうない。


しかも、今回の件は急ぎだ。

連絡を取り合う余裕はない。


かつての仲間であり、今も友人であるゾランは、村が心配と、俺が頼みを引き受けると、すぐ帰って行った。


あいつの為にも早く何とかしたい。


( しょうがない。)と、グレガテは覚悟を決めた。


この学園にくう とある人物に会う覚悟を・・・。







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