#鏡の前の(後)
突然だが、サンタをいつまで信じていたか。
俺は覚えてはいないが、割と低学年の時には信じていなかったと思う。
それでもクリスマスは好きだった。
プレゼントが貰えたからだが・・・まあ、皆そんなものだろう?。
だが、これは・・・貰って喜んで良いのだろうか。
バラバラの状態の全身マネキン・・・のプラモデルの部品、何と完成形は等身大だ。
俺の生身の時をモデルにしている。・・・認めたくない。
1/1サイズ、骸骨の頭のマネキンの鎧。
なぜ帰って来て早々に用意されているのか、どうして顔が骸骨なのか、疑問は尽きない。
「急いでつくったんですが、あらかじめ素材の準備をしておいて良かったです。」
セネカの言い訳を聞き流す。
分厚いローブから決して手を離さず、隠れるように自分の部屋に潜り込むと、早速、鎧を着込む。
今度は、片腕や胸の一部だけではなく鎧の全身、はじめてなのもあって全部着るのにちょっと手間取った。
全身なので、今度は兜もある。
マネキンの顔の兜・・・ではなく、髑髏の形の兜なので、髑髏の兜を外すと、下から髑髏の本体が・・・・って、どんなだよ!。
何故か生前?・・・以前のアヤトの顔を模った仮面も置いてあって、つけると、どういう理屈か顔に張り付いて落ちない。
なのに、アヤトが外そうと思うと外れた。
セネカが言うには、これは『デスマスク』ではないらしい。
うっせえ、知ってるわ!。
仮面になった自分の顔・・・・・・自分の顔も、こうも白いと、マネキンのように見えてくるから不思議だ。
髑髏首の上から、髑髏の形の兜を装着して、表に元の顔を模った仮面を被る。
身体も、全身にマネキンの鎧、その上から更に服型の革鎧を着る。
灰色のフード付きローブも身に着ける。
一見すると軽装の魔術士、しかしその実は、超防御系のアンデッド魔術士、しかも、持っているのは気味の悪い骸骨の手の杖だ。
もう俺のキャラが分からん。
あっ、モンスターではないよ。・・・念の為!、分かってくれているとは思うが。
ただ・・・前を見る。
怪しい魔法使いが立っていることだけは、アヤトにも理解できた。
鏡の前に・・・・。
異世界怖い・・・鏡を見て、つくづくそう思った。
今日は、いつもパーティーのメンバーが集まる教室に、アルセンテとフィオーラがいた。
2人は魔術集会で働きながらカノヴァの学園に通っているらしい。
俺は、この2人のこと知らなかったんだが・・・、
「何で今までアルセンテさんとフィオーラさんが学園に居なかったか・・・ですか?。
そんなの、フェムストファナ帝国内の【輝天の夜明け】の組織を潰す為ですよ。
アヤトさんを助け出した後、彼女らや魔術集会の職員が、組織の拠点を潰して回っていたんです。
この前襲ってきた魔術師の人達は、それで追い詰められて行動に出たようですが・・・。」
なるほど・・・あれの原因はやっぱりこいつか。
「じゃあ、何でそんなことを?。
放って置いても良かったんじゃ?。」 そうすれば、俺が攫われそうになることもなかった。
「潰しとかないと、アヤトさんが狙われてましたよ。
自分の所の実験体に逃げられたわけですから。」
「そうだな。そんなところは潰しておくべきだ。」
アヤトは前言を翻す。
掌を反すとはこういうことを言うんだろう。でも仕方ない。
それに対して、セネカはくすっと笑い、
「冗談ですよ。
多分ですが、アヤトさんがあの研究所に居たことを知っている人はいないと思います。・・・・・・・・全員消したはずなので。」
なんか最後、小さく物騒なことを言ったぞ。
聞こえなかったことにした。
取り敢えず気を取り直し、改めて、お互いの自己紹介をした。
あのダンジョンから学園に戻る旅の間、一緒だったわけで今更だが、そこはそれ、こういった『形』は大事だ。
アヤトは人間として、そういう努力を放棄したくなかった。
特に、この場にいる中でアヤトの人間の姿を知っているデューク・イシュカ・シャロはともかく、アルセンテとフィオーラ、出会った時がすでにアンデッドだったこの2人は、俺に不審感を抱いている。
自己紹介された1人目がアンデッド。
2人の目には、挨拶をする骸骨にしか映っていないだろう・・・。
何とかイメージのアップを図らねば。
まず、アルセンテと挨拶する。
緑の髪と強い緑の瞳の色、服は、生地は薄いが冬服のような服装。
アヤトと同じように肌を見せないものだが、時々隙間からちらっと見える肌の鱗が関係しているのだろうか。
背はアヤトより低い。
ただ、圧迫感はすごい・・・同じくらいの背のイシュカより存在感がある。
アヤトが握手の手を出すと、・・・アルセンテは一瞬躊躇したが、セネカが促すと握手を返してくれた。
その際、薄緑の淡いエメラルドグリーンの毛を持つマフラーが動いた時は、アヤトもつい、びくっ、と、出した手を引っ込めてしまった。
マフラーかと思っていたのに、威嚇するように鎌首をもたげているのは、フサフサの毛を持つ 細長い蛇のような生き物だ。
こんななりでも、【竜種】らしい。
竜といってもマフラーに見えるくらいだから、大きくない。
アヤトの知る蛇くらいの胴回りで、長さは蛇に比べてかなり長めだが、そういう生き物だと思えば違和感はない。
魔法の言葉『ファンタジー生物』で解決だ。
今は、アルセンテの首に、オシャレに巻きついている。
ぱっと見は毛皮のマフラーのつぶらな瞳の生き物。
俺もこんなペット兼マフラーな相棒が欲しい。
そう思って頭を撫でようとしたら、口を開けて威嚇された。
名前はピフィーと言うらしく、アルセンテの相棒だそうだ。
次に、フィオーラと挨拶する。
こっちは躊躇なく握手してきてくれたが、若干 握る手の力が強い。
ウェーブのかかった銀髪に薄いオレンジ色の瞳、どこかのお嬢様のような顔だが、にこやかな顔に剣呑な雰囲気を感じる。
背はアヤトより高く、顔もきれいなのだが、目つきを鋭くすると軍人のような雰囲気になる。
旅の最中でも、「取り敢えず殴って叩き潰せば解決します。」
が、口癖で、考えるより手を出すことをモットーにしているらしい。
誰か、そのモットーを変えさせろ。
ちなみに、俺には無理である。
イメージのアップさえ出来なかったのに、他人の信念を変えられるわけがない。
そのフィオーラの方にも相棒がいる。
犬だ?。
犬かどうかは疑問だが、多分犬だ・・・犬としか言い表せない。
マフマフ、鳴く。そこは犬らしくない。
60~70センチほどの白い、丸いボールのような生き物だ。
丸い綿のような見た目、・・・最初は毛玉のボールか雲の玉かと思った。
足は毛に隠れてすごく短く見えるが、見た目より長いそうだ。
本当に霞か雲で出来ているのか、よく分からない生き物であったが、犬と思ってよく見てみると、丸くてすごく可愛いい。
ただ、こっちもアヤトには懐かなかった。
手を出したら、すぐにでも噛みつきそうな様子だった。
そこは犬のように、ガルルルルゥ、と唸り声を上げた。
名前はシューベルと言うらしい。
「俺も癒しのペットが欲しい。」
「自分のことをおいしそうに見るアンデッドに、動物が懐くわけないでしょう。」
アヤトが嘆いていると、セネカにひどいことを言われた。
セネカは、改めてアヤトのことを『パーティーの仲間だと』2人に説明し、2人のこともアヤトに説明した。
どちらも、氷系の魔法が得意で攻撃特化型の前衛。
アルセンテの持つ武器は棍で、謂わば鉄の棒、氷の魔法でハンマーにも斧にもなる魔道具だ。・・・アヤトの杖と似ている。
無手に見えるフィオーラの武器は両手のメリケンサック、これも魔道具で防御にも使えるらしい。
基本、このパーティーの盾役はデュークだけだったらしい。
これからは、アヤトもタンクとしての役割を期待されているらしく、
「その際は、きちんとパーティーの皆を守ってくださいね。」と、言われた。
俺ってタンクだったんだ。
そう思って聞いたが、攻撃魔術士 兼 軽戦士 兼 盾役だそうだ。
他にも、雑用・薬士・剣闘士などもやってもらうとのこと。
なんか変なのが混ざっている気がするが・・・。
前にも聞いてその時も思ったのだが、何てバランスの悪いパーティーだ。
そのせいで、一人一人の役割がかえって多くなっている。
こんなんでパーティーとして機能するのか疑問はあったが、そもそもアヤトがメンバーに加わる前からこのパーティーはうまく機能していたそうなので、気にしてもしょうがないことは、気にしないことにした。
ともかくその日、アルセンテとフィオーラという2人が戻り、木漏れ日の樹のパーティーは、メンバー7人が揃った。
この日、木漏れ日の樹は更に攻撃に傾いたパーティーになった。
何故か、背筋がぞわっとした。




