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異世界怖い  作者: 名まず
22/60

**貴族は子供も怖い

 「通っていいぞ。」


門番の短い声に、腰の低そうな男が頭を下げて門を抜けて行く。


検問所を通って行くのは、男を先頭に複数台の竜車の荷台、全身鎧の巨大な物。


「先輩、それにしてもすごいですね。」


声を掛けらえた先輩門番は、それと商隊から目を離さずに頷く。


目の前を通ったのは、金属で出来た2メートルほどの歩く鎧、申請によるとオリハルコンゴーレム、背負っている箱に例の商品が入っているそうだ。


「いいですね。俺も着てみたいです。」


中身を知っていて、そう言った部下を、先輩門番は呆れた目で見る。


「いや、お前、まじで言ってるのか?。

俺らの給料じゃ、一生掛かっても買えないぞ。」


「それはそうですけど、夢ぐらい見たっていいじゃないですか。」


「なら、せめてオリハルコンの剣にしとけ。

剣ならもしかすると、中古の良いのが手に入るかもしれないぞ。」


そんな可能性は万に一つしかないが、無いことはない。

運が良ければ・・・中古の武器屋で並んでいる剣の中にまぎれているかもしれない。


鎧は基本、剣より値段が高い。


まず使用する素材の量が、剣より何倍も多い。


鎧は部品も多く、個人の体に合わせてつくられる。


曲線部も多く、可動部の工夫や彫刻、つくるには様々な技術と多くの職人が必要だ。


その分、手間も掛かるのでお金も掛かる。


中古の物では、サイズが合う可能性が低い。

例えサイズが合っても、職人に調整をお願いしたりと、結局値段が高くなる。


剣や槍と違って、鎧は中古でも安くなりにくい。


使い手は剣を選ぶが、鎧は使い手に合わせてつくられる。


鎧はほぼオーダーメイドになるので、安くなる要素がないのだ。


「剣もいいですね。」

と、のんきに呟いている部下に視線も送らず、商隊を見送る。


オルトブラウン伯爵も奮発したものだ。


いくら息子が将軍職にいたのが嬉しいからって、まさかオリハルコンの鎧を用意するなんて。


「あの鎧、どんなに安くても金貨の千枚や2千枚はするはずだ。

お前にそんな金があるのか?。」


男は部下の夢想むそうを叩き潰す。


そんな夢のようなことを言っている暇があったら、ちゃんと仕事しろと思う。


男の3男も、最近冒険者になるとか言い出して困っているのだ。

堅実に働いてほしい。

ただ、長男・次男くらいまでなら、自分のコネで何とかなるが、3男ともなると、働き口は紹介出来ない。


男の深刻な悩みを余所よそに、部下は変わらずのんきだ。


「金貨千枚か・・・・俺達の税金って、そんなところに消えてるんですね。

だから隊長、あの箱の中身に触らしてくれなかったんですね。」


「そうだ。

仕事だから確認はしなきゃならんが、あの鎧に汚れの一つも付けてみろ、即、首だからな。」


その場合、上司の俺も一緒に首である。

精神の安定の為にも、自分の手で確認した。

門番の命など、あの鎧の汚れを拭う布切れより軽い。


「首か・・・世知辛いですね。」

のんきな部下の青年は、のんきになげいている。


「仕方ない。

オルトブラウン伯爵家から将軍が出るのは100年ぶりぐらいらしいからな。

あの伯爵様も張り切っているらしい。」


「そうなんですか?。

まあ、新しい将軍様は有能な人らしいですけど、あの伯爵様は親バカで有名だから。」


「そんなことを大きな声で口にするな。」


どこの誰に聞かれているとも分からない。


ドスン、ドスン。と、力強い足取りで遠ざかっていく鎧姿を眺めながら、後輩門番はあまり反省した様子がないセリフを吐く。


「それにしてもすごいですね。

俺、オリハルコンゴーレムなんて初めて見ました。」


もちろん門番生活20年以上の俺も見たことがない。


「護衛も兼ねているんだろう。

護衛の傭兵や冒険者もいるが、運んでいる物が物だからな。

馬が全部竜なのも盗賊対策だろうな。

お前が盗賊なら、あれに襲い掛かろうとは思わないだろう。」


「まったく思わないです。

まだ死にたくないです。」


部下の青年は、両腕をさすって怖がっている。


そりゃそうだろう。

自分にも潰される未来しか思い浮かばない。


武器や衣料品・食料などを満載した荷馬車を見えなくなると、男は無事に終わった検問に、ほっとした気持ちで次の仕事に取り掛かった。






 このカノヴァの学園に通う学生は寮生活になる。


カノヴァ公国の土地は、大きく学生が住む学園側と、貴族・商人・市民が住む公国側、湖に分かれる。

公国側の街は、学園から遠いうえ、土地の値段や家賃が高いので、公国側から通う人はほとんどいない。


学生は寮で共同生活することになる。

ほぼ全寮制と言ってもいいくらいだ。


寮で一番多い部屋が、基本の4人部屋であるが、もっと大人数の部屋もある。


学園としては、共同生活することで多様性や協調性をはぐくむという側面と、学生でお金が無くても学ぶことが出来るようにとのことで、学生が集団生活することを推奨している。


それは貴族の子弟であるフレドも同じで、フレドは4人部屋で生活している。


本人はそれなりに楽しくやっているらしい。


一つの部屋を複数人で使い、メイドや執事もいない生活は斬新らしい。


( クソッ、このブルジョワめ。)


テルセルは8人部屋らしい。


アヤトの部屋は一人部屋であるが、セネカが気を利かせたというより、異世界召喚され、こっちの世界の常識を知らないアヤトが、ボロを出さないようにとの思惑があるように思える。


レイチェルも同じく一人部屋らしい。


レイチェルに聞くと、初めは4人部屋で皆と仲良くやっていたそうだが、何故か突然、同室者から苦情が出たそうだ。


部屋に飾っていたものが、カタカタ動き出すとか、衣装室から獣の声が聞こえたとか、イチャモンをつけられた。

それで仕方なく、親に頼んで一人部屋にしてもらったんだとか。


そうか、それはかわいそうに・・・・・・相手が。


アヤトはそっと同情する。


それは苦情ではなく、同室者の涙の訴えだったのだろう。


絶対、仲良くなんてやってなかったよな?。




 談話室に居るのは、テルセルとレイチェルの2人。


アヤトとフレドが扉をくぐると、2人の視線がこちらを向く。


カノヴァの学園に入学して1年を超えたが、パーティーメンバー以外で部屋を借りて集まるのは初めてだ。


この学園に来る学生の目的の一つは人脈づくりであるが、アヤトは出来ているとはがたい。


それは、セネカが他の学生に怖がられているのでアヤトも敬遠されていたり、アヤトが人付き合いが苦手というのもある。


もう一つ理由(言い訳)を上げるとすれば、このフレドとレイチェルだ。


この2人は貴族である。

そのうえ取り巻きがいるレベルの死霊魔術界の名門貴族の子女しじょだ。


いつもこの2人が寄って来るので、アヤトは余計に敬遠されている。


今日は談話室で、この3人とカノヴァ公国の街に行く話し合いの為に集まった。


きっかけはフレドで、「一度アヤトさんの部屋に行って話したい。」 「今度一緒に街に行こう。」と、押しきられたのだ。


そこに、レイチェルとテルセルが、なら「自分も」と、乗っ掛かってきた。


遠回しに全部断っていたが、一緒に学園で暮らしていて、誘いを断り続ける理由も、そう思い浮かばない。

自慢ではないが、この4人の中で一番コミュ力が低い。

結局、なしくずし的にOKを出してしまった。


ただ、場所は俺の部屋ではなく談話室になった。


俺の勝利・・・・・・ではなく、レイチェルがメンバーに入ったことで、学園の許可が下りないからだ。


まあ、俺の部屋なんて見たって面白いことはないと思うが・・・。


フレド達は、町に行くことが決まった前提で話しを進めている。


レイチェルは会話している間じっとアヤトを見ている。


下の骨を見透みすかされそうで、色々居心地が悪い。


そして、フレドはレイチェルから目を離さない。


滅茶苦茶めちゃくちゃ居心地が悪い。


今度行くカノヴァ公国の街の店や市場いちば、どこを見に行くかの話しだけでなく、それぞれの部屋の事情や別の授業の内容。

アヤト達パーティーがカマキリ退治をしていた時期が、ちょうど学園祭だったので、その時の話しをしている横で・・・・・・・・。

・・・・・レイチェルが黙々と、アヤトの右の手首辺りの鎧を磨いている。


腕を引っ込めようとしているが、がしっと摑まれている。


見た目より力が強い。


はじめアヤトの腕の鎧の部分を外そうと悪戦苦闘していたが、外せず諦めたようだ。

磨くのも諦めて欲しい。


話しをするには、何ともカオスな空間だ。


「そろそろ終わりにしようか。」


そろそろ話題も尽きた。

アヤトは提案する。


もう会話も途切れているのに、何故かレイチェルが帰ろうとしない。


奇妙な緊張感が談話室を漂う。


夕食の時間が近づいて、ようやく解散してくれた。






 次の日の授業が終わってパーティーメンバーが集まる教室に行き、セネカにそのことを話すと、


「フレドさんにお礼を言っておいた方がいいですよ。」

と、言われた。


まったく何を言っているか分からなかったので、アヤトがたずねると、


「気付かなかったんですか?。

レイチェルさんは、あなたと二人きりになりたかったんですよ。

二人きりになれる機会をうかがっていたんです。」


「そんなことしてどうするんだ?。」


「決まっているでしょう。

服を脱ぐか、誘うかしたでしょうね。」


「はっ!?、んなわけないだろう。」

と、気色けしきばんだが、アヤトの声は黙殺された。


「その後は叫びます。

女性の叫び声がして、男女二人きりだと、けっこうな騒ぎになるでしょうね。」


「はっ!?、だから何でだよ。」

訳が分からない。


「責任を取ってもらう為に決まっているでしょう?。」


「責任?、何の?。」


「未婚の女性を襲っておいて、何の?は無いでしょう。

結婚に決まっているじゃないですか。」


「結婚!?。」

さらに意味が分からない


「二人きりになったところで、後日、関係を持ったことを盾に結婚を迫る。

断ったら、襲われたと、責任を取れと、アークラ家から圧力が掛かるわけです。

貴族は体面を重んじますから、娘が傷物にされたとあっては、絶対に退きません。

どんな手段を使っても結婚にけるでしょう。

結婚さえしてしまえば、後はこっちのもの、晴れてアヤトさんは、アークラ家の呪物として、末永くアークラ家の所有物となるわけです。

良かったですね。

永久就職ですよ。

一生大事にされますよ?。

・・・それにしても、そういう手できますか。

アヤトさんは魔術集会に所属しているので、普通の手段では、手を出せませんからね。

おそらくフレドさんは、レイチェルさんを見張っていたのでしょう。

アークラ家は、欲しいものの為なら、強引な手段もさないと有名ですから。

アークラ家には後で、少し圧力を掛けておいた方が良さそうですね。」


セネカは一人で納得している。

・・・が、こっちは、まだ頭が追い付いていない。


その間もセネカが、

「こっちの世界では結婚は15歳からなので、おそらく婚約と言う形で決着がつくでしょうね。」

とか、

「婚約は7歳から出来るので・・・貴族の世界では、あのくらいの歳で婚約者がいるのは普通のことです。」

とか言ってたが・・・そんなのどうでもいい。


日本の芸人の裸と同じくらいどうでもいい。


何それ、超怖い。


異世界の女の子怖い。





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