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異世界怖い  作者: 名まず
14/60

**白い鎧

 夢を見ていた。


これは夢だ。と、夢の中で立っていることに気付いた瞬間に理解出来た。


赤黒い空間に渦巻く白い何か、自分の元にうずくまって必死に手を伸ばしている。


払いのけると、掴まれた腕に手の形の痣、痕の箇所が痛い。


離せ。と、声を出そうとしたが、声が出てこない。


数多あまたの手に捕まれ、手は口々に言う。


「返せ。」「痛い。」「殺せ。」「恨みを。」「呪え。」・・・・・・。

国を・家族を・兄弟を・妻を・娘を・全て・・・・・・・・・・・・を。

と、そいつらの声は続く。


延々と同じことを言ってくる。


始めは真面目に聞いていたが、次第に気が狂いになる。


「うるさい!。」

大声で叫ぶと、今度は声が出た。


が、そいつらは一斉にこちらを見た。


「忘れるな。」

と、暗い目でこっちを見てくる。


はっ、と、気付いたら、いつもの部屋の天井だった。


今のは何だったんだ?。


急速に忘れていく何かを捕らえようとするが、捕らえられない。


今の?・・・そう、夢、夢のことだ。

夢を見ていたんだ。


何の夢を見たかは・・・・・・覚えていないが、嫌な夢を見たことは・・・・・刻まれている。


胸に手を当てて呼吸を整えたが、不安感は消えなかった。


額の脂汗にまとわりつく髪の毛が、妙にうっとおしかった。






 ドォン。


すさまじい音の後に、細かい音がまかれる。


歪んだ閂だった物体と、散らばった残骸。


少し開いた門の隙間から緑の目が覗く。


「ヒッ・・・・。」

後ろから部下の悲鳴が聞こえる。


( クソッ、どうなっているんだ。

魔法で強化した鉄の扉が、何で歪むんだよ。)


5センチはあったはずの厚い金属を曲げた衝撃を想像し、ゾッ、とする。


敵は少数、さっき門の前に立っていたのは女・・・だったよな。

いや・・・今はどうでもいい。


「あれって。」


「ああ、多分、噂の懲罰部隊だ。」


部下の好き勝手なざわめきも聞こえる。


普段なら怒るところだが、喋ってないと平静を保てないのだろう。


「上はどうなってる。」


「知らねえよ。」

悲鳴のように裏返った声が返ってくる。


さっきから上司の魔術師達とは連絡が取れない。


ドォン・・・・ドガン。


また大きな音。

今度は続いてもう一度、大きな音がして地面には扉の片側が落ちる。


退避しながらも後ろを確認すると、もう近くまで来ている。


怖気おじけづく部下を叱咤し、扉を閉める。


「ここはもう駄目だ。退がるぞ。」

さっきの扉が破られるようなら、この扉も長くはたないだろう。

・・・だが、少しくらいはつはずだ。


ドォン。


再度の音に振り向くもなく、後ろからきた衝撃の記憶を最後に、男の意識は途絶えた。






 アヤトが異世界に来て、まだ1年が過ぎた程度だが、右腕と左腕・左肩・左胸が【骸骨】になった。


ちょっと何を言っているか分からないと思うが、俺も分からない。


何でも【部分的なアンデッド化】だそうで、治療法はない・・・ということらしい。


そう言ったのは、今、笑顔で鎧(?)を持ってきた、セネカという人物だ。


異世界に召喚され、そのまま牢屋に囚われていたアヤトを助けてくれた魔法使いなのだが、アヤトの手が骨になっても、1ミリも笑顔を動かさなかった。


恩人ではあるが、素直に感謝できない要注意人物として認識している。


学園内でもローブを脱がず、顔をフードで隠しているが・・・・・残念ながら顔は良い。


顔が不細工で、それでフードで隠しているなら、少しは可愛げがあるのにと思う。


うん、他意はない。

決してひがんでいるわけではない。


セネカの胸には名札というか、学生証がぶら下がっている。


これはアヤトも一緒である。


この年になって名札なんか着けたくないが、このカノヴァの学園、服装が自由で、全身ローブ姿や全身鎧姿でも学園内OKなクレイジーな所なので、名札は必ず身に着けてけていないと駄目な代物だ。


そうでないと怪しい人が入り放題だ。


初等部・中等部には学生服があり、他の高等部・専門科・大学・院の学生が学園指定の学生服を着ることは問題ないが、服装が自由なのに、そんな物を着る奴は少ない。


アヤトは目の前の男、セネカの名前を確認する。


セネカがいつも着ているローブには認識阻害の魔法が掛かっているので、顔が認識しづらいのだ。


名前を見ないとたまに間違えたりすることがある。


学園内でも素顔をさらさないことも、この男の怪しいところだ。


「はい。アヤトさん、ようやく出来ました。」


セネカから渡されたのは、箱に入った複数の白い塊。


「何これ?。」


「鎧です。」


「鎧?。」


アヤトは手元の箱を覗き見る。


鎧と言うには、軽い何か。

形はどう見ても鎧には見えない。


「教室の方に行きましょう。」


セネカに促され、パーティーのメンバーが集まる教室に行くと、まだ誰も来ていなかった。


「とりあえず右腕の包帯を外してください。」


言われた通り包帯を外すと、セネカは二つの半円注状の物体で、アヤトの前腕を左右から挟み込む。


カチッ。


軽い音がする。


その後もカチッ・・カチッ、と音が続き、肘には丸い物が、指には複数の小さな指輪のような物がはめられていく。


やがてアヤトの右腕は白いマネキンになる。


気分はマネキンのプラモデルだ。

「・・・・・・・・・・・・。」


「似合っていますよ。」


「・・・・・何だこれ?。」

アヤトは分かってても聞く。


「鎧です。」


こいつはバカだ。

頭は良い奴だからわざとだろうが、時々殴り倒したくなる。


「いちいち包帯を巻くのは面倒だと思いまして、アヤトさん専用の鎧をつくってみました。

この上から着る革鎧もあるんですよ。」


確かに箱には灰色の布のような物が見える。


マネキン型の鎧と、その上に着る革鎧をもらったようだが、鎧の上に鎧を着る意味あるのか?。


灰色の布のような物を手に取ると、厚い生地で出来た、魔法使いが着るような服の装備だということが分かった。


革でつくった服型の鎧らしい。

色はグレーを中心に、黒や茶色と目立たない配色だ。


「白い方の鎧は、骨の姿を見られないようにする為にもある鎧なので、革の鎧の方はカモフラージュの意味もあります。

防御は厚い方がいいですよ。

戦士としてみると、この革鎧は薄い鎧ですが、下に本命の鎧がありますし、アヤトさんは魔法使いタイプなので、このくらいの鎧でいいでしょう。」


確かに包帯を巻くのは面倒だ。


時間は掛かるし、水が掛かると巻き直さなければならない。

水を掛けてくる奴もいる。


包帯は長いし、洗濯も干すのも大変だ。


( これだと楽でいいのか?。)


箱の中に残っている右腕部分以外の白い物を1つ手に取る。


丸みを帯びた半円状に平らな面、平らな面には溝が彫ってあり、ちょうどアヤトの骨がはまる形になっている。


そういえば以前、体の骨の部分に、ゲル状の水の魔法を充てられたのを思い出した。


風呂の時も同じだが、体の中に何かが入るのは、良い気分じゃない。


風呂の方は、まあ・・入らないことを考えれば、仕方がないと諦めがつくが・・ゲルは嫌だった。


アヤトの戸惑いをよそに、セネカは次々と鎧を左手、左胸にはめていく。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


鏡には白い腕の貧相な男が立っている。


顔は見覚えがあるが、身体がそんなだと、自分の姿に見えない。


アヤトは何とも言えない気分のまま、マネキンの鎧の上から革服を着てみる。


鎧の上から服を着るのは変な気分だ。


体を動かすが軽い。

ガチャガチャと音がするかと思ったが、そんもなこともなく、なめらかに動く。


「白い鎧の方は普段から身に着けて、革鎧の方は自分の部屋で管理してください。」


「この白いの、何の素材で出来ているんだ?。」


なめらかな質感、何かプラスチック的なイメージがするが、もっとしっとりした感触だ。


「つくるの大変だったんですから、大事にしてくださいね。」


答えは返ってこなかった。


「いや、だから何の素材で・・・・・・。」


「大事にしてくださいね。」

アヤトの言葉にかぶせるように、2度同じことを言う。


話す気はないらしい。


嫌な予感しかしなかった。






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